幕間: 劉備クンは惚れこんだ
おっす、おいらは劉備 玄徳。
幽州生まれの無頼者だ。
恐れ多くも劉姓を名乗っちゃいるが、その素性はけっこうあいまいだ。
なにしろ俺んちなんて、ワラジとかムシロを編んで生活してるんだぜ。
まあ、祖父さんや叔父さんとか、一族として見れば、けっこう裕福なんだけどな。
おかげで盧植さまのところへ、勉強に出してもらったことがある。
その時に公孫瓚の兄貴とは、親しくなったんだ。
その縁を頼って、兄貴の下で世話になってたら、なんと洛陽に行くというじゃないか。
俺は恥も外聞もなく、連れていってくれと泣きついたね。
”連れてってくんなきゃ、盗賊になるう” って脅したら、ようやく折れてくれたよ。
ケヘヘ、だって仕方ないじゃん。
洛陽に行きたかったんだもん。
この機会を逃したら、もう行けねえかもしんねえからな。
そうして洛陽に着いたんだが、いきなり凄いお人に出会った。
「おっと、そちらはどなたさんで?」
「ああ、彼が荊州牧の孫堅どのだ。”白馬義従”を見にきたのだよ」
「ほえ~、あんたが孫堅さまか~。俺は劉備 玄徳ってもんです」
「孫堅 文台だ。よろしく頼む」
おいおい、孫堅さまといえば、今をときめく有名人じゃねえか。
その出自こそ高貴ならざるも、腕一本で荊州牧にまで成り上がったという、すげえお方だ。
く~~、いいね、男はそうでなくちゃ。
その後も孫堅さまは、ちょくちょく兄貴に会いにきて、俺たちともよく顔を合わせていた。
なんか俺や関さん、張飛のことを気に入ってくれたらしくて、わりと親しくさせてもらう。
そんなある日、呂布と王允が董卓さまを襲って、政権を奪取しやがった。
俺たちも武装解除されて不安に思ってたら、そこへ孫堅さまが駆けつけてくれたんだよな。
そしてあれよあれよという間に、洛陽を奪還しちまったんだ。
なんかいざという時のために、いろいろ仕込みをしてたらしいぜ。
すげえすげえとは思ってたけど、そこまでとはな。
腕っぷしだけじゃなくて、頭もいいとは大したもんだ。
しかし洛陽は奪還したものの、事態はそれだけで収まらなかった。
なんと洛陽から逃げだした名士たちが結託して、中原の大半を乗っ取っちまったんだ。
そして俺たちのことを、皇帝を傀儡にして操る、奸臣だって言うんだぜ。
まったく、どの口が言うんだって話だ。
こちとら必死に漢朝を支えようとしてんのに、てめえらがメチャクチャにしてんじゃねえか。
とはいえ、中原の大部分を乗っ取られ、益州も独立を宣言している状況じゃ、文句を言ってもはじまらねえ。
そこで反乱軍の討伐に動いたんだが、その中心になったのはやはり孫堅さまだ。
最初は荊州で反乱が起きただけじゃなく、配下に殺されそうにもなったらしいが、短期間でそれを収めちまった。
そして董卓閥の連中も従えて、討伐の先頭に立ったんだな。
まあ、総大将は皇甫将軍だったけど。
もちろん俺らも公孫瓚さまの軍に入って、活躍したぜ。
バッタバッタと敵をなぎ倒して、兄貴の戦功に貢献したんだ。
しかしここで、皇甫将軍の軍が敗退してしまう。
なんか、味方から裏切りが出たんだって。
名士って、こええな。
おかげで俺たちも撤退して、守りに入らなきゃいけなくなった。
だけど、やっぱりここで粘りを見せたのが、孫堅さまだ。
皇甫将軍に代わって官軍の動揺を抑え、しかも反乱軍の攻勢をしのいで見せた。
か~っ、かっこいいな。
俺もいつか、あんなふうになれっかな~?
その後は態勢を整えた官軍が、再び攻勢に出た。
俺たちも兄貴と一緒に、バリバリ戦ったぜ~。
主に并州を平定してまわって、大きな戦果を上げてやった。
やがて鄴の周辺で決戦という段になって、俺たちにお誘いが掛かったんだ。
「劉備。孫堅どのが、お前たちに働いてほしいと言ってきているぞ」
「ええっ、マジっすか?」
孫堅さまから届いた書状に、鄴の攻略を支援してほしいとあったんだ。
しかもその隊長には、俺を指名してあった。
どうやら俺たちは、思った以上に買われていたらしい。
こうなったら、やるっきゃねえ。
「それならやってやりますよ。ここで尻込みしたら、男がすたるってもんだ」
「そうか。あまり気負いすぎて、無茶をするなよ」
「大丈夫だって、公孫瓚さま。おい、関さん、張飛。さっそく準備だ」
「おう、腕がなるのう」
「へへへッ、楽しくなってきたぜ」
その後は大急ぎで準備を整えると、俺たちは鄴へ向けて出発した。
それは騎兵だけで編成された、俊足の部隊だ。
できるだけ反乱軍に察知されないよう、事前に指示された進路を駆け抜ける。
そうして俺たちは、反乱軍の背後を臨む位置にたどり着いたんだ。
「うひょ~、見ろよ、関さん、張飛。孫堅さまの予想どおりだぜ」
「うむ、見事な読みであるな」
「ああ、暴れがいがありそうだぜ」
「よ~し、敵に気づかれないうちに、一発かましてやろうぜ」
「「おうっ」」
それから俺たちは一丸となって、敵の右翼後方にカチコミをかけた。
といっても、ダーッと押しかけて、矢を浴びせるだけだけどな。
しかしそれだけでも、敵は大騒ぎよ。
後方が混乱したことによって、反乱軍全体が浮足立った。
当然、孫堅さまも黙って見てないだろう。
ほ~ら来た、主力が動きだしたぞ。
こうなったら、俺もやってやるぜ。
「野郎ども、突撃だ~っ!」
「「「おお~~~っ!」」」
俺たちは一丸となって、今度は突撃を敢行した。
しかし敵はすでに逃げ腰だから、おもしろいぐらいに戦果が挙がる。
ヒャッハー、ご機嫌だぜ~!
結局、敵は壊走をはじめ、城にこもるか、逃げだすかしちまった。
そして俺たちは鄴の城を囲んだんだが……
「放てっ!」
なにやら見慣れない機械から、とんでもない大きさの石が飛んでいく。
それが敵城に落下して、盛大に轟音と土煙を巻き上げていた。
うへぇ、マジかよ。
きっと城内は、大混乱だろうな。
あれが噂の新兵器ってやつか。
「うひゃ~、凄いですね、孫堅さま。噂以上ですよ。あんな兵器、どうやって作ったんすか?」
「ん? まあ、俺の部下には優秀なヤツが多いからな」
「なるほど~……やっぱり孫堅さまには、逆らわない方がよさそうだ。これからもよろしくお願いしやすぜ」
「ああ、劉備の功績も大きかったからな。こちらこそ、よろしく頼むよ」
「そいつは嬉しいですね」
いや、マジでこの人には、逆らわない方がよさそうだ。
孫堅さまは気さくに接してくれるし、手柄もちゃんと認めてくれるからな。
たぶん今回の戦勝後も、褒美を期待できるだろう。
ひょっとして、俺も将軍になれちゃう?
いっちょお願いしやすよ、孫堅さま。




