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それゆけ、孫堅クン! 改 ~ちょい悪オヤジの三国志改変譚~  作者: 青雲あゆむ
第3章 中華分裂編

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39.曹操の降伏

初平4年(193年)5月中旬 兗州 陳留郡 酸棗


 新兵器である平衡錘投石機の投入によって、酸棗さんそうの城はあっさり陥落した。

 その過程で大勢の敵兵を討ち取り、また多くの兵が投降してきたのだが、その中に凄いのがいた。


「曹操が降伏してきただと?」

「はい、他にも劉岱りゅうたい張邈ちょうばく張超ちょうちょう袁遺えんい鮑信ほうしんも投降しています」

「ふむ、あれだけの大軍だから、それぐらいの人物がいても、おかしくないか」

「ええ、知名度の高い連中が、固まっていたみたいですね」


 巨石の攻撃がよほど効いたのか、5万近く立てこもっていた敵兵の多くが投降していた。

 そしてそれを率いる名士も多くいた。

 その中には曹操もおり、彼らの処遇をどうするかという話になる。


「とりあえず1人ずつ話を聞いてみて、考えるとしよう。中には使えるヤツも、いるかもしれない」

「いや~、それはどうですかねえ?」

「ええ、妙に居丈高な者が多くて、理解に苦しみますよ……」


 なぜか周瑜と賈詡かくは悲観的だったが、俺も少し後にそれを実感することとなる。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「儂は漢の宗室 劉岱である。このような扱いは到底、容認できん。ただちに縄をほどき、貴人の待遇を要求する」

「……」


「俺を”漢の8ちゅう” 張邈ちょうばくと知っての待遇か。まずはこの縄をほどけ、下郎」

「……」

(注.”厨”とは他人の危機を見殺しにしない、遊侠的な富豪のこと。つまりお金持ちのええかっこしい?)


「おのれ、孫堅。なにやら面妖な術を使いおって。この張超がその首、もぎ取ってくれるわ!」

「……」


「吾輩は汝南袁家の袁遺であるぞ。我が一族を敵に回したくなければ、すぐに解放しろ!」

「……」


「騎都尉や国相を務めたこの鮑信を、罪人扱いとは言語道断。ただちに解放せよ!」

「……」


 どいつもこいつも、好き勝手なことをほざきやがって、まともに話なんかできなかった。

 説得するのも馬鹿らしかったので、そんな奴らは早々に放置する。

 そしていよいよ曹操と対面したのだが、こいつだけはちょっと違った。


「……久しぶりだな、孫堅」

「ああ、まともに話すのは、黄巾討伐以来か」

「そうだな。あの時、俺は騎都尉だった。しかし今では、無様な敗軍の将だ」


 そう言って自嘲する曹操に、俺も軽く応じる。


「フッ、懐かしいな。あの時の俺はただの佐軍司馬で、ちっぽけな存在だった」

「フッ、そのわりにはいろいろ、活躍していたじゃないか」

「まあ、必死だったからな」

「……必死だった、か。ならば今の俺には、必死さが足りないということか?」

「さあな。時の運もあるだろう」


 すると曹操は、ギロリと俺をにらみつけて吼えた。


「時の運だと?! あんなでかい石を飛ばす兵器を使っておいて、時の運はないだろう! あんな兵器があるなどとは、聞いたこともないぞ!」

「そりゃあ、初めて使ったんだ。当然だろうよ」


 そう言ってやると、ヤツは何かを確信したように言う。


「……やはりそうか。孫堅! 貴様、いつからあれを準備していた? いくら荊州牧といえど、あんなものを簡単に作れるはずがない。よほど以前から、準備していたんじゃないか? それこそ反乱でも起こすために」

「反乱を起こしたのは、そっちだろうが。馬鹿いってんじゃねえよ。お前らみたいなのがいて、物騒だから準備していただけだ」

「いいや、孫堅。お前は異常なんだ。何もかも異常すぎて、得体がしれない。一体、何者だ? お前」

「今度は異常よばわりか。まったく、これだからおぼっちゃんは。てめえの無能を棚に上げて、人を批判するだなんて、恥ずかしくないのか?」

「くっ……そんな目で見るな」


 呆れと哀れみの目を向けると、さすがに恥ずかしくなったのか、ヤツはひどく悔しそうな顔をした。

 そんな曹操に、俺は淡々と問いかける。


「なあ、曹操。お前は一体、何がしたいんだ? 漢朝をひっくり返して、皇帝にでもなりたいのか?」

「ッ! そんなことは考えていない! 俺はただ、この中華を正当な姿に――」

「正当な姿って、なんだよ?」

「董卓に乱される前の状態だ!」


 まじめな顔で叫ぶ曹操を、俺はじっくりと観察する。

 一見、正直に言っているように見えるが、俺の中のソンケンは、そこに嘘の臭いを感じ取っていた。


「ふ~ん……董卓に乱される前っていうと、劉弁さまが皇帝だった時か。だけどあの時が今より良かったなんて、少しも思えないけどな」

「そんなことはない! ちゃんと長子に帝位が引き継がれ、正しい政治が行われるはずだったのだ」

「嘘つけ。亡き陛下は劉協さまを指名したのに、何皇后の派閥の力によって、劉弁さまが即位したって話だぞ」

「なっ、それこそ嘘だ!」


 曹操は否定するが、実際に霊帝は劉協を指名したらしいのだ。

 そしてそれを受けた宦官の蹇碩けんせきが、劉協を天子にするため、何皇后の義兄である何進の暗殺を企んだ。

 しかしその計画は失敗し、派閥争いにも負けた結果、劉弁が即位したのだ。


 もっともその後、蹇碩の謀略を知った何進や袁紹が、宦官誅滅を企図して董卓を呼び寄せたら、逆に政権を乗っ取られたんだから、皮肉な話である。

 いずれにしても、劉弁の即位も派閥争いの結果であり、絶対的な正当性なんてないのだ。

 そんなことを指摘すれば、悔しそうな顔をするんだから、曹操も知っていたのだろう。


「お前だって分かってんだろうが? 今の反乱軍は、董卓みたいな非主流派による政治に、ただ反発してるだけだって。そうして兵まで挙げて、さらなる利権と権力を握ろうとしてるんだ。まさに寄生虫だな」

「なんだとっ! 我らを愚弄ぐろうするかっ!」

「愚弄じゃねえ。事実を言ってるだけだ。お前らは正真正銘、クズでゴミで、害悪だ!」

「おのれっ! この縄をほどいて、俺と勝負しろっ! 孫堅っ!」


 曹操がものすごい形相で、暴れようとする。

 しかし後ろ手に縛られ、兵に押さえつけられているヤツに、何もできはしない。

 そのうえで俺は、少し口調を改めた。


「まあ、そんなに暴れるな。俺もちょっと言いすぎた。しばらくは牢の中で、頭を冷やすんだな。そしてよく考えてみるといい。自分が何をするべきだったかってな」

「くっ……俺は寝返らんぞ」

「それはそれで構わん。連れていけ」

「「はっ」」


 こうしてひととおり、捕虜との面談を終えると、周瑜が話しかけてきた。


「孫堅さまは、曹操にだけは異なった接し方をするのですね?」

「ん? ああ、そうだな。あいつとは一緒に戦ったこともあるし、わりと見どころがあると思ってるからな」

「ふむ……しかし上手く飼いならせるでしょうか?」

「別に飼いならす必要はないさ。ただあいつなりにやるべきことを見い出せば、勝手に働いてくれるだろう。たしかヤツは、”治世の能臣”とか言われてるんだろう?」

「”乱世の奸雄”、とも言われてるそうですよ」

「そうらしいな。だったら乱世を正してやればいい。そうだろ?」

「フフフ、さすがは孫堅さま。すでに反乱の鎮圧後を見すえていますか」

「まあ、そんなとこだ」


 そんなやり取りをしていると、賈詡に問われる。


「曹操はそれでいいとして、他の有力者はどうしますか?」

「ああ、あいつらは使えそうにないからな。身代金と引き換えに、解放してやってもいいんじゃないか」

「ええっ、せっかく捕まえたのにですか。そんなことをして、何の意味が?」

「ハハッ、賈詡だって分かるだろう。あんな奴ら、大して怖くないって」

「それはまあ、そうですね。逆に敵を揺さぶるのにも、使えそうではあります」

「ああ、そっちの方がよほど有効に使えるだろう。交渉と仕込みをお願いできるか?」


 すると賈詡は苦笑いしながら、別のことを訊ねた。


「孫堅さまは、ずいぶんと私のことを信頼してくださるのですね?」

「そりゃあ全部、自分でやろうとしたら、体がいくつあっても足りないからな。できるヤツには任せる方針なんだ」

「裏切られるとは思わないので?」


 まるで挑発するように、賈詡が訊ねる。

 なので俺は自分の鼻を指差して、自信ありげに答えてやった。


「そういうことには、鼻が利くつもりなんだ」

「しかし襄陽では、裏切られたではありませんか」

「おっと、これは一本取られたな。しかしまあ、その経験も踏まえての話だ。そのうえで裏切られたなら、そこまでの男だったということさ」


 すると賈詡はため息をつくと、諦めたように応える。


「ふう……それなりに考えたうえでのことですか。しかし敵は海千山千の妖怪どもです。くれぐれも身辺にはご用心を」

「ああ、注意するよ。さっきのことは頼んだぞ」

「承りました」


 そう言って賈詡は、去っていった。

 どうやら彼なりに、俺のことを心配してくれているらしい。

 しかしそれと同時に、俺の真意を探ろうともしている。


 なにしろ賈詡は史実で、あまりに有能すぎて上司に疑われたぐらいだ。

 この世界でも台頭しつつあるので、裏では恨みや妬みを買っているのかもしれない。

 そのため普段は目立つ行動を控えているのが、今回は一歩ふみこんできた感じである。

 おそらく俺が、全力をもって仕えるに値する人物かどうか、値踏みしているといったところか。


 そんな彼らの期待を裏切らないよう、頑張らないとな。

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― 新着の感想 ―
まあ、曹操は見切りつけたら 知世の能臣で我慢する可能性あるから 説得しておいて損ないもんね
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