7.
令嬢たちはさらに滑稽だった。
扇も宝石も侍女も失い、与えられた服を着るしかない彼女たちは、鏡の前で泣き喚いた。
髪型が気に入らない、布地が粗末だ、部屋が狭い。
そう訴えるたびに、職員は困ったように、けれどまったく特別扱いせずに告げた。
「この世界では、順番を守ってください」
「この世界では、他の人も同じ条件です」
彼女たちが吐いた嘲笑は、誰にも届かなかった。
礼儀作法を知らないと笑っていた相手の国で、今度は自分たちが言葉も制度も知らない者として扱われる。
その屈辱に耐えきれず、泣き崩れても、差し伸べられるのは同情ではなく手続きの説明だけだった。
令嬢たちも同じだった。
彼女たちは最初、互いに寄り添って被害者を演じていた。
けれど、やがて互いの本性を知ることになる。
誰が凪沙の歩き方を笑ったか。
誰が凪沙の服装を侮ったか。
誰が聞こえるように「異界人は下品」と囁いたか。
思い出すたびに、彼女たちは互いを責め合った。
だが、責め合ったところで状況は変わらない。
髪が乱れても侍女は来ない。
爪が割れても専属の薬師はいない。
涙を流しても、誰かが機嫌を取ってくれるわけではない。
彼女たちは自分で洗い、自分で整え、自分の失敗の責任を自分で負うしかなかった。
「この世界では、自分のことは自分でしてください」
その皮肉に、令嬢たちは顔を歪めた。
かつて凪沙に「淑女の作法」を説いた口で、今度は自分たちがこの世界の作法を知らないと笑われる。
しかも笑う者に悪意はない。
ただ知らないなら覚えてください、と当然のように言われるだけだった。
令嬢たちへの断罪は、派手な処刑台ではなく、鏡の前から始まった。
ある朝、彼女たちは支給された服を見て、一斉に悲鳴を上げた。
絹でもなければ刺繍もない、同じ形の簡素な服。
色も飾りも選べないそれを前にして、もっとも凪沙を笑っていた令嬢が唇を震わせた。
「こんな格好、恥ずかしくて人前に出られませんわ」
職員は困ったように首を傾げ、しかし慰めはしなかった。
「この世界では、服装で人を見下す方が恥ずかしいですよ」
その瞬間、令嬢たちは凪沙を囲んだ庭園の茶会を思い出した。
異界の服を笑い、歩き方を笑い、知らない作法を笑ったあの日。
凪沙が紅茶の器を握りしめていた手の白さまで、嫌になるほど鮮明に蘇った。




