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歴史

挿絵(By みてみん)

 翌朝、高天原高校の一行が宿舎の玄関を出た瞬間、待ち構えていた報道陣が一斉に押し寄せた。

「疾風主将! 質問があります!」

「高天原村について一言!」

「戦勝二百年とはどういう意味ですか!」

 無数のマイクと撮影ドローンに取り囲まれ、乱たちは身動きが取れなくなった。

「なんだ、なんだ?」

 雄一が目を丸くする。

「昨日より増えてないか?」

「増えていますね」

 静馬は妙に楽しそうだった。


 原因は前夜に放送された高天原村の特集番組だった。高野連代表団が村を訪問した際に撮影された映像の中に、『大東亜戦争戦勝二百周年記念』と大書された横断幕が映り込んでいたのである。

 報道各社がこの一点に飛びついた。


「疾風主将、高天原村では日本が戦争に勝ったと教えているというのは本当ですか?」

「本当です」

 乱はあっさり答えた。

「しかし、歴史上、日本は敗戦しています」

「そうなんですか?」

 乱は逆に不思議そうな顔をした。

 記者たちがざわめいた。


「降伏文書も存在します!」

「学校ではどのような歴史教育を受けているんです?」

「アメリカに負けたという歴史的事実を否定するんですか?」


 乱は少し考えてから口を開いた。

「でも、おかしくありませんか?」

「何がです?」

「戦争に負けた国が、勝った国の領土をもらうんですか?」

 記者たちは黙った。

「それに、勝った国が負けた国から経済援助を受けるんですか?」

 さらに沈黙が広がった。


 経済危機に陥ったアメリカへ日本が巨額の援助を行い、その代償としてハワイ群島が日本へ割譲されたことは、誰もが知っている。

「だったら、どちらが勝ったのかなんて簡単じゃないですか」


 乱は屈託なく笑った。

「少なくとも、私たちの村ではそう教わっています」

 記者の一人が何か言おうとして口を開いたが、適当な言葉が見つからなかった。

「乱、そろそろ行かないと遅れるよ」

 静馬が助け舟を出した。

「あ、そうだった!」

 乱は慌てて走り出した。

挿絵(By みてみん)

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