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就職したい学年次席は嫌味御曹司に恋なんてしたくない(旧題:学年次席が嫌味御曹司と恋に落ちるまで)  作者: 雪杜 凛
就職活動は前途多難

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「仲いいなーと思って」

 にっこにっこと楽しそうに微笑んでいるティナに、リズはげんなりとした表情になる。

「これのどこを見て仲がいいって思えるのが不思議でたまんないんだけど」

「ほら、喧嘩するほど仲がいいって言うじゃない」

 両手をぽんと合わせて笑うティナに対して、とんでもないとリズは声を荒げた。

「こいつと仲がいいと思われるなんて、考えただけでゾッとするわ」

 その言葉に、今度はシドの眉がぴくりと動く。両手を組んで見下ろしてくる。

 リズは椅子に座っているため自然と見上げる形になるのだが、見下ろされているのがなんだか屈辱的な気がしてくる。

「こっちこそ、こんなに可愛げのない女なんて願い下げだ」

 今度はリズの眉がぴくりと動く。

 少し小馬鹿にするような仕草で何度も頷いた。

「そうでしょうとも。マクファーレングループの次期総帥には、それはもう可愛い女の子がたくさん群がるでしょうからね。そのうち、私なんかを相手にする暇なんてなくなりますよ。その日が待ち遠しいです」

 にっこりと笑って嫌味を言うと、シドは「チッ」と舌打ちした。

「ホントに可愛げのない女だな。泣いてすがれば、俺の会社で雇ってやるものを。うちの会社に就職すれば、将来は安泰だと世間で言われているのを知らないのか?」

 それくらい知っとるわ! と叫びたくなるのをなんとか堪える。

 この世界で知らない者はいないと言われるほどの大企業に就職したいと言う人が、この世界でどれだけいると思っているのか。毎年、どれだけの人間が就職試験を受け、どれだけの人間が涙を流しているのかを、このボンボンは知らないのか。

 それでも、リズにはマクファーレングループを志望しないのには、れっきとした理由があるのだ。それは、このいけすかない御曹司の会社だからとか、そういう馬鹿げた理由ではない。

 自分が希望する職種の企業ではないという、ちゃんとした理由があるのだ。

「こっちにだって選ぶ権利があるんですー。今までどんな人間と付き合ってきたのかは知らないけど、少なくとも私はあんたの立場にすり寄るなんて絶対にごめんだから。あんなに就職させてくださいって頭を下げるくらいだったら、実家に戻って地元で就職するわよ」

 ずっとリズを見下ろしていたシドは少しだけ目を見開いたが、すぐに表情が戻った。一瞬のことだったので、見間違いかもしれない。シドはなにかを言いかけて口を開けるが、すぐに閉ざされた。どうせ、嫌味でも言おうとしたのだろう。

 再びバチバチににらみ合っていると、教室のドアをがらりと開けて先生が入って来た。教室内にいた生徒の視線が向けられる。

 その視線を受けて、先生は拍手をしながら教卓に向かって歩く。

「はいはーい。午後の授業が始まりまーす。ほかのクラスの子は自分の教室に戻りなさーい」

 先生に視線を向けていたシドがくるりとリズを振り返り、不敵な笑みを浮かべる。

「お前がどこまで不採用通知の記録を更新するか楽しみだ。もしかしたら、この学校の最多記録を作るかもしれないな。その時は、ある意味この学校の歴史に名前を残すことができるぞ。あー、楽しみ楽しみ」

「なっ……! 次こそ内定とってやるわよ!」

 シドはリズの言葉を鼻で笑って教室を出て行った。

 シドが籍を置いている魔法科は、魔力が高い者だけが在籍を許されている、この学校の中でもエリート中のエリートが集まる場所だ。

 魔法科に在籍する生徒の目的はただ一つ。魔法使いの資格を取るための大学進学だ。ほとんどの生徒は大学の魔法科に進んでさらに勉強して、大学在学中に魔法使いの資格試験を受けるのが一般的なのだが、進学せずにその資格を得てしまったシドは大学に進学する理由はなくなった。このままこの学校を卒業して、父親の会社へ就職するだろう。

 大学に行かずに魔法使いの資格を取るのだから、かなり優秀であることは間違いない。

 ——あんな嫌味ったらしいやつじゃなかったら、普通に尊敬できるのに……!

 苛立ちを隠すこともせずに、奥歯をぎりぎりと噛み締める。

 ものすごく優秀なのは悔しいけど認めざるを得ない。あの歳で魔法使いの資格を取ったのは、本来ならものすごく栄誉なことだ。素直に「おめでとう」と言えないのは、口を開けば嫌味を言い、言動の一つ一つが自分をイライラさせるからだとリズは確信している。

 二年生の時から、クラスどころか学科すら違うのに、ちょくちょく現れては嫌味を言って去っていく。そんなやつをどう尊敬しろというのか。

「リズはなぁんにも気づいてないんだろうなぁ」

 ティナのそんな呟きに、リズはじろりと視線を向ける。

「あいつが私のことを嫌ってるってことは、とっくの昔から気づいてるから」

 そう答えると、ティナは呆れたようにため息をつきながら「リズ、それは合格点がもらえない答えだよ」と言って肩を竦め、直後に始業のチャイムが鳴ったので前を向いた。

 なんなのだ。

 ティナはあいつのなにを知っているというのか。

 イライラが募り、それを逃がすようにリズは大きく息を吐いてから、引き出しから教科書とノート、筆記用具を取り出した。

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