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魔法使いの資格試験を受けることができる条件の一つは、学内試験で優秀な成績を修め、学校から推薦されること。
そして、もう一つは高い魔力を持つことだ。
シドは高い魔力を持って生まれ、条件の一つは生まれたときからクリアしている。二年生の時からは学年首席をキープしており、もう一つの条件もクリアしている。
シドに首席を奪われてから次席に甘んじてきたリズには、腹立たしいことこの上ない。
魔力に関してはどうしようもないことは理解している。シドに比べれば少しではあるものの、魔力を持って生まれたことは喜ばしいと思う。じゃないと、この学校に入学することはできなかったのだから。
魔力を持つ者だけが入学を許されるこのクロウリー魔力保持者育成学校は、主に魔学者と呼ばれる人間を育成することに重きを置いている。
魔力を消費して動く魔道具があふれるこの世界で、魔道具の研究開発を行う魔学者の社会的地位は高い。基本的に魔力を持つ研究者、あるいは開発者を総称して魔学者と呼ぶ。
魔道具の誕生によって魔力を持つ人間の地位は向上し、魔力を動力とする道具の開発が世界中で始まり、今では魔道具なしでは生活が成り立たないほどに人々の生活に浸透した。
なので、よりいっそう魔学者の社会的地位は確固たるものになり、日々、いろんなところで魔力を動力源とした研究と開発が行われている。
だが、研究機材も魔力がなければ動かない。魔力バッテリーと呼ばれる魔力を溜め込んだ魔道具も存在し、魔力を持たない一般人もそれを使えば研究開発を行うことは可能だが、その場合はいちいち魔力バッテリーを手配しなければならないという手間とコストがかかる。
なので、それを使わずに己の魔力で機材を動かすことができる魔力持ちの魔学者をどこの企業も欲しがる。なので、魔学者はかなりの需要があり売り手市場だ。
魔道具が世間に浸透し、消費者のニーズが増えた今では、魔道具を開発する魔学者は給与の面でも労働の面でも一般の労働者より優遇される。
その魔学者の頂点と言われるのが、魔法使いの資格を持った魔学者だ。
魔力を必要とする研究や開発において、高い魔力と深い教養を持つ証である魔法使いの資格を持つ者は、どんな企業でも喉から手が出るほど欲しい人材なのだ。それさえ持っていたら、将来は安泰と言われるほどの資格で、毎年、多くの受験生が挑み、合格できるのはその中の一握りだけ。しかも、同じ人が受験できるのは三回までと決められている。三回落ちたら受験資格は失われ、二度と受験することは叶わない。
それだけ、魔法使いの資格には箔がつく。だからこそ、それに一発で合格したシドは魔学者を目指す者として最高の栄誉を手にしたということになる。先生たちも鼻が高いだろう。来年の学校のパンフレットには、こいつの写真が堂々と載せられることは間違いない。
シドの場合、父親が経営している会社への入社が決まっている。この歳で試験に受かったのなら、もう大学に行く必要もないだろう。シドが通う魔法科の大学進学は、魔法使いの試験に合格するために通うものだからだ。
合格通知をひらひらとさせて、シドがにやにやと笑う。
「残念だったな。まぁ、受けられたとしてもお前が合格するかどうかはわからんが」
「……あんたが受かるんだから、私も合格できるわよ」
にらみつけて断言すると、シドが肩を竦めた。
一つ一つの言動にイライラする。こちらを小馬鹿にしているのがよくわかるからだ。
「大した自信だな。未だに内定すらもらえないお前が合格できるとは思えないが」
リズの片眉がぴくりと動く。イライラが怒りに変わり、爆発する。机の上に置いた拳を強く握りしめた。
「内定内定内定って……っ! 私が内定をもらえてないのは事実だけど、縁故入社のあんたには言われたくないわ! あんたも一度入社試験を受けてみればいいのよ! 面接の緊張感を知らないやつが、とやかく言うんじゃないわよ!」
「だから、そんなお前を哀れんで俺の会社で雇ってやる、って言ってるんだろうが!」
「うっさい! あんたに哀れんでほしくないわ! 大体、あんたの会社じゃなくてお父さんの会社でしょうが! あたかも自分の会社のように言うんじゃないわよ!」
「いずれは俺が継ぐんだから俺の会社も同然だ!」
バチバチバチとにらみ合う二人の剣呑な雰囲気にもクラスメイトたちは慣れた様子だ。はらはらと見守っている者はなく、「また始まった」とつぶやいているのが聞こえる。
二人が言い争って火花を散らすのはいつものことで、誰よりも間近で見てきたティナは心配するどころかなぜか面白いものを見ているかのように、にこにこと笑みを浮かべている。
示し合わせたかのように同時に二人で、ふんっとそっぽを向き、リズは笑って見守っているティナを見て眉を寄せ、ふてくされた様子で声をかける。
「なに笑ってるのよ」




