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——『今回は、ご縁がなかったということで不採用とさせていただきます』
短い文章が書かれた紙を、リズ=アーネルはぐしゃぐしゃに握りつぶした。
その行為だけで、向かいの席から様子を見ていた親友のティナは内容がわかったらしい。どんな言葉をかければいいのか迷っている表情をしている。
「あー……」
リズは紙をくしゃくしゃになった紙を丁寧な手つきで広げ、やはりその文面に変化がないことを確認してから、机に力なく突っ伏す。
最終学年になってから就職活動を始めて半年以上、この文章を見たのは何度目か。途中で数えるのをやめてしまったので正確にはわからないが、たぶん両手両足では数えきれないだろう。いい加減、不採用以外の言葉を見たい。
「うー……」
こう何度も同じ文章を見続けていると、自分が今までしてきた努力はなんだったのかと疑問を覚えてしまう。
こんなはずじゃなかった……。
もっとスムーズに内定をもらえると思っていたのに、こんなに苦戦するとは思わなかった。なぜにこんなにも『内定』の二文字が遠いのか。
ぽんぽんと頭が優しく叩かれ、赤みがかった金色の髪を梳くように撫でられる。
「どんまい」
顔を上げて、あごを机につける。こんな時、友達の優しさが身に染みる。
「なんかもう、疲れちゃったよ……」
就職活動が始まって、すでに半年以上が経過している。就職組のほとんどは内定をもらって、残りの学校生活をのんびりと過ごして楽しく満喫しているのに、まだ内定を一つももらっていないリズは頭を抱えた。
「落ちる理由がわかんない……っ!」
成績は絶対に悪くはない。一年生のときには学年首席をキープしていたが、二年生から今までは常に次席に甘んじてきた。首席を取り戻そうと今まで以上に努力したが、今のところ一度も取り戻せてはいない。それでも、この学校での学年次席なのだから、どちらかと言えばかなり優秀な方だと自負している。
素行も問題はない。模範的な優等生で、進路指導の先生たちはリズに大学進学を勧めてきたが、金銭的な事情を説明して就職の道を選び、ほかの生徒と一緒に最終学年になった途端に就職活動を始めた。
始めたばかりの頃は、すぐに内定がもらえると思っていた。
なので、最初はのんびりと就職活動していたのだが、そのうち同級生が次々と内定をもらい始め、それを見ているとあせりを感じるようになった。
この前、素行は問題ないが成績が悪かったクラスメイトすらも内定をもらった。このクラスの中で一番優秀であるはずのリズだけが内定をもらえず、さらにあせりが募る。
クラスメイトのみんなが、なぜ学年次席がまだ内定を一つももらえていないのかと首を傾げるが、一番そのことを不思議に思っているのはリズ本人で、不採用になった会社に理由を問い合わせても言葉を濁すばかりで教えてはくれなかった。
目の前の席に座るティナは進学組で、あと二週間ほどで入試が始まる時期だ。しかし、彼女は推薦入試をすでに受けており、合格をもらっている。国でも一、二を争うほどの名門大学への進学が決まっているため、リズは友達として鼻が高かった。
だが、そんな優秀な友達とは違い、リズは未だ内定なし。ほとんどは書類選考で落とされ、運良く面接にこぎつけることができたとしても、そこで落とされて先に進めない。
自分のなにが悪いのかと、先生たちと面接の練習を何度も繰り返して、絶対に大丈夫とのお墨付きをもらったにもかかわらず、お祈りばかりされてしまう。先生たちもお手上げのようで、最初は慰めの声をかけてくれたのだが、今となってはどうすればいいのかわからない様子で、就職活動を頑張るリズを静観している状態だ。
周囲を見ると、内定をもらっている就職組と、これから入試を受ける進学組の温度差が激しく、騒いでいる就職組に勉強している進学組がイライラしている雰囲気が伝わってくる。
窓側の隅の席で、リズは大きくため息をついた。
ぐしゃぐしゃにした紙に書いてある文章にもう一度目を通すが、内容は変わらず不採用を告げるものだった。
「就職できなかったら、お母さんとお姉ちゃんに顔向けできない……」
思わず、泣きそうな声で呟いてしまった。よしよし、とティナが頭を撫で続けてくれる。
せっかく、こんな名門校に無理言って通わせてもらってるのに、「就職できなかった」と田舎に帰るのだけは絶対に避けたい。二人は優しいから笑って許してくれるだろうが、二人が許しても自分が自分自身を許すことができない。
「この際、どこでもいいから就職したいけど、自分の夢は捨てられないし……」
職種を絞っているからいけないのだろうかと思い、もっといろんな職種に応募した方がいいのだろうかと考えていると、ティナはリズの頭を撫でるのをやめて訊ねてきた。
「リズは研究者志望だっけ?」




