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ヒカリとキオク  作者: 有沢 諒
ひかりときおく
20/45

いとこの関係

「ヒカリ、セイ君が来てくれたわよ」


 逃げずに学校に行くことを決めたら、タイミングよくお母さんの声。


「上がってもらって!」


 ちょっと、親に聞かれたくない話もあって、部屋に来てもらう。


「ヒカリ? 記憶が戻ったって・・・」

「うん、本当に今回はいろいろありがとう。セイ君」


 言うと、ちょっと目を丸くしてからふっと頬を緩めて。


「本当に記憶が戻ったんだな」


 良かった・・・って、しみじみ言われた。

 ちょっと恥ずかしくなって目を逸らす。


 そう、私はもともとセイ君のことを呼び捨てになんてしていなかった。

 記憶がないときは、なんか雰囲気でセイって呼んでしまっていたけれど。

 戻ったら、違和感があって、どうにも呼び捨てに出来そうにない。


「うん。本当に心配かけちゃって、ごめんね」

「いや、まあ乗りかかった船だしね・・・で、リュウ君とはどうなったの?」


 いきなり核心を突く質問に、どきっとして。

 だけど、嘘をつく理由もないし、それにセイ君にはお世話になったし。


「無事、お付き合いすることになりました」


 でも、照れもあって、赤くなってる自覚がある頬を片手で押さえて答える。


「なに、その言い方・・・まあ、あれだけわかりやすけりゃ時間の問題だと思ったけどね」


 くすくす笑いながら言ったセイ君の言葉に看過できないものがあって。


「・・・わかりやすいって」


 目を瞬くと、セイ君は苦笑して。


「・・・全く、本人たち以外にはバレバレなんだよ。ほんと、まどろっこしいったら・・・」


 ちょっと呆れの入った声に、愕然とする。


「え? ええ??」

「まあまあ、とにかくおめでとう。これで、俺もお役御免かな」


 おどけて言うのは、きっと私に気を遣わせないようにしてるからで。

 やっぱり優しいな・・・。

 思って微笑む。


「うん・・・本当にありがとう」


 実はセイ君には以前からいろいろ相談をしていて。

 もともと、人見知りが激しい私はあまり心を許して話せる人がいなくて。


 その・・・実は恋愛相談をしていたのだ。


 告白を全部断っている自分に、リュウが前に一度だけ聞いてきたことがあった。

 なんで、誰とも付き合わないのかって。

 急なことでびっくりして、興味がないとか適当にごまかしちゃって。


 そんなことを言ったくせに、本当はリュウが好きとか・・・言いづらくなって。

 なかなかリュウに気持ちを伝えることが出来なかった。

 なにより、幼馴染の今の関係も壊したくなくて。


 だけど、不安で。


 だって、リュウは私がいろんな人に告白されても顔色ひとつ変えてなくて。

 気にしないってことは、私のことを恋愛対象に見てないって事じゃないかと思っていて。

 私なんて、リュウが友達と仲良くしているのを見るだけで、もやもやしていたのに。


 気持ちの重さの違いに気づいて落ち込んでいた。


 それを久しぶりに遊びに来たセイ君に見抜かれて。

 大学生になってからなかなか遊びに来なくなっていたのに、ちょっとのことでも気づくのは、セイ君がいろいろ気遣いの出来る人だからなんだろう。

 でも、その後はちょっと面白がっている節もあったけど。


 車で学校に迎えに行くと言い出したのはセイ君で。

 きっと、「そうすればリュウ君の気持ちがわかるんじゃない?」って。

 もし、本当に恋愛感情があればなにかしら態度が変わるだろうと。


 あとはセイ君が来ることで、告白してくる男子を牽制できるだろうということもあって。

 実際、告白してくる人は減って、それはそれでほっとしたのだけど。


 実はリュウに関してはあまり変化がなかった。

 それって、やっぱり私には恋愛感情がないのかなって落ち込んでいたとき。


 階段から落ちて記憶喪失になったのだ。


 ・・・あれ? でも。


「セイ君が迎えに来ても、リュウの態度って変わってなかったと思うけど・・・?」


 それのどこがわかりやすいの?

 なにも変わらないから、絶対にリュウは自分にそういう感情がないんだって・・・少なくとも記憶がなくなる前は本気で思っていたのに。


「ヒカリにはうまく隠してたんじゃないかな? ・・・ま、記憶がなかった時は遠慮がなくなったのか、すごくわかりやすかったよ?」


 記憶のないとき・・・?


 そういえば、セイ君が迎えに来たとき、リュウは誘いを断ってひとりで帰っていったっけ。


 え? じゃあ、あれって・・・?

 妬いてくれたってことなのかな・・・?


 思いついたら、ぼっと顔が熱くなる。

 そう言われてみれば、記憶がなかったときのリュウの言動を思い返してみると。


 ・・・けっこうあからさま・・・だったんじゃ。


 嬉しいと思うのと同時に、あれをみんなに見られていたんだと思うと・・・。

 恥ずかしくなって、顔の熱がなかなか引かなかった。


 うう・・・余計に学校に行きたくなくなったよ。


「はは、学校行きたくないって顔してる」

「え」

「わかりやすいな、ヒカリは」


 びっくりして顔を抑えると、ぽんぽんと頭を撫でられて。


 わかりやすいの? 私?

 そんなこと、言われたことないんだけど・・・。


 納得いかなくて、口を尖らせていると。


 急にダダダダッと階段を上がってくる足音が響いてきた。


 あれ? この足音って。


「ヒカリ、開けるぞ」


 声とともに返事も聞かずに部屋の戸が開けられる。

 そこには予想通り、リュウがいて。


 こっちを見て、一瞬固まった。


 赤くなった頬を押さえている私の頭をセイ君が撫でていて。

 リュウの唇が、ムッとしたように引き結ばれて。

 目がセイ君をギッと睨みつけた。


「なに、してるんですか」


 声が低くて、どうみても怒ってる様子にハッとなる。


 なんか、誤解してる?


 慌てて離れようとしたら。


「なにしてるって? うーんと、そうだな。可愛がってるとこかな?」


 セイ君は笑って、逆に私の肩を抱いて、頭をぐりぐりと撫で回してきた。


「ちょっ、セイ君!?」


 リュウの眦がさっきよりも吊り上って。

 それを見ているセイ君は笑いをこらえていて。


 絶対に面白がってる!


「離してっ」


 本気で言うと、ようやく離してくれて。

 慌ててリュウに向き直る。


 だけど、怒った顔でこっちを見ている顔と向き合ったら、なにを言っていいのかわからなくなって。

 だって、誤解だとかって言ってもなんか言い訳がましいし。


 っていうか、どうしてリュウがここに?

 いつもなら来るとしてもベランダからなのに。


「えっと・・・リュウはなんでうちに来たの?」


 つい、疑問が先に口に出て。

 言ったとたん、リュウがムッとした表情になる。


「俺が来たらなんかまずいワケ?」

「え? そんな意味じゃ」


 慌てて言い訳しても、リュウは今度はすねたみたいにそっぽを向いて。


 あああ、失敗した。


 思っても、どうしたらいいのかわからない。

 おろおろしていると、セイ君が。


「ごめんごめん、からかいすぎたね。・・・俺はもう下に戻るからさ」


 くすくす笑いながら部屋を出て行った。


あんまりセイ君はひねりがなく、本当にお兄ちゃん的ポジションですね(^^)

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