表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名門貴族の変嬢  作者: 双葉小鳥
【true end】のその先 2
104/104

【終話】 

【冬の102日】→【冬の90日】に変更しています。

日付を間違えていました。

すみません。

 さて。

 私は今。

 煉瓦のしかれた広間に正座しています。

 正面には、おどろおどろしい渦のようなものをまき散らしている鬼の足が――


「―――何も言わずに飛び出すなんて子供ですか、貴女は。今どきは子供でも――って。お嬢様……? 俺の話、聞いてます?」 


 ……………まぁ……。

 とても低音ですこと……。

 

「…………お嬢様。俺の言葉を聞いていたら、右手を上げてください」


 いやだわ。

 なにやら刺々しい言葉がした気がするの。

 そんなこと。

 ないわよね!

 だって、テノールだもの!!

 とーっても優しいんだから! 


「お嬢様。顔を上げてください」


 あら?

 声が急に平坦になった?

 抑揚がないような気がするの。

 でも。

 気のせいよね!

 あ。

 蟻だ……。

 へぇ……。

 煉瓦と煉瓦の間を通ってるんだ。

 これなら踏まれるって危険がなくなるのね。

 良く考えてる……。 


「コホン! 今すぐ顔を上げなさい。そうすれば、貴女が話を聞いていなかったことは見逃します」


 あ。

 良く見たら隊列を組んで歩いているのね!

 ……?

 運ばれている、白い小さなものは何だったのかしら?

 食べ物だったということは間違いないのよね?


「…………お手……」


 ん?

 テノールがしゃがんだ……?

 そして、白いグローブのついた指先?

 ついでにおどろおどろしいモノの範囲が広がった……?

 まぁ。

 気のせいね!

 ……でも。

 いったいどこから……?

 すいっと、蟻たちが来ている方を向いてみた。

 すると。

 右手にはクリームパン。

 左手には薄い蒼の一升瓶(ラベルが【魔王殺し~どんな奴でもイチコロさ!~】)を持ち。

 酷く幸せそうな赤い顔で涎を垂らし、煉瓦の床にうつぶせで転がる……ひどく見慣れた濃い茶色の短髪のお年を召されたような男性が―――って、お爺様っ?!

 どうしてお爺様が!!

 って!

 え?

 どうしてお爺様がこのようなところに転がっているのっ?!

 


「おい。テメェ、聞いてねぇだろ……」


 不意に上がった目線。

 みしみしと嫌な音と酷い痛みが……。

 

「話、聞けって言ったよな」


 ひぃ!

 て、テノールが貼りつけたみたいな笑顔浮かべてる!! 


「テメェの耳は飾りか」

『ひぃ! ごごごごめんなさい! 謝るから、謝るから手に持ってる果物ナイフを仕舞って!!』

「そうか。飾りか……飾りなら、いらねぇな」

『いるっ! いるいるいるっ!! 必要ですぅっっっ!! ごめんなさいごめんなさいっ! 私が悪かったから!! もう二度と誰にも言わずに出て行ったりなんてしないからっ!!』

 

 白いグローブに握られ、きらりと輝いたナイフ。 

 それを見て。

 私は手で両耳を押さえて暴れた。

 と言っても。

 足を振るだけしか出来ないけどねっ!

 

『わぁああああんっ! ごめんなさいぃぃ!! 反省してます、すっごくすっごく反省してますぅううう!!』

「…………はぁ……。本当ですか?」

(訳)『チッ……。テメェの言葉は聞き飽きてんだよ』

 

 張り付けた笑みで、目が笑ってないよ……。

 ついでに、聞き飽きてるって……。

 まぁ。

 さんざん変なことしてるけど…………。

 そんなに怒んなくてっも良いじゃん……。


「お嬢様……?」

(訳)『落とすぞ』


 何を。

 とは聞かない。

 いいえ。

 聞かなくても分かるよ。

 『耳』よね。

 

『ごめんなさいぃぃ! 今度は、今度はちゃんと相談しますぅぅうううう!!』

「約束ですよ」

(訳)『胆に銘じておけ』


 にっこりと。

 張り付けたような笑顔が消え。

 テノール本来の笑みが戻った――と、見せかけて目が笑っていなかった……。 

 だから私は――。

 

『はい! 胆に銘じます!!』

「ならばよし。さぁ、帰りましょう」


 穏やかな笑みのテノール。

 私はそんな彼に頷き――



「皆が、待っています」


(訳)『覚悟しとけ』



 ……やっぱり逃げようかな…………? 

 


 なんて。 

 考えたけど頭をテノールに押さえられてるから、脱走できませんでした!!

 結果。

 私は屋敷に連れ帰られ。

 使用人をしてくれている皆に叱られるわ、もみくちゃにされました……。

 お菓子をお預けにされました。

 双子が口をきいてくれません……。

 テノールがおどろおどろしいのを消してくれないの……。


 そして。

 私が無断外出した日は、冬の日の最終日だった。




 ―――――――――――――


 ―――――――――


「ねぇ、テノール。私が悪かったから、もうたくさん反省したから、草料理はやめない?」

「そうですね。反省が足りないようなので、秋の日まで俺がお嬢様の食事を担当しますよ」

「え?! もう春の日が終るのにっ?!」

「嗚呼。では、冬の日まで続けましょうか」

「え……? うそ、嘘でしょ? 嘘よねっ?!」


 

 私の問いに、テノールは目が笑っていない笑みを向けるだけで何も言わなかった……。

 



一応。

これで完結します。 

お付き合い下さってありがとうございました。

本当は、故郷まで行かせたかったんですけど無理でした!(笑)

まぁ。

まったく関係ない話ですけど、今度は。

今度こそは、一年近く放置してる物語を完結させて見せるっ!!

と、思っています。

……まぁ、何とかしてみます。

ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ