↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
27/43

兄VS叔父

 「よし。それじゃあ始めようか。レギュレーションとして、今回俺は複合魔法を使わない。それから、この場から動かない。これくらいか。決着は? 」

 「抵抗できなくなるまででお願いします。」

 「分かった」


 あの後すぐに中庭に来たお姉様と一緒に、お兄様と叔父様の模擬戦を少し離れたところで観戦する。だいぶ前に作った埴輪がまだ崩れていなかったので、2人で埴輪の横に座って応援するつもりだ。叔父様に埴輪君を見せたときは、何とも言えない顔をされてしまったものだ。

 解せぬ。こんなにかわいいのに。


 「お姉様、叔父様が魔法を使ったり戦ったりするところを見たことありますか?どれくらい強いんでしょうか」

 「分からないわ。お父様も仰っていたけど、わたくしが最後に叔父様に会ったのは、まだ小さいときだったもの」

 「そういえばそうでしたね」


 15mほど先ではお兄様と叔父様が距離を開き、向き合って立っている。すると、叔父様がおもむろに地面に落ちていた小さめの石を拾い上げた。


 「この小石が地面についたらスタートだ。準備はいいか」

 「っ、はい! 」


 片手で真上に投げ上げられた石は空高く飛び、速度を上げて地面に落ちる。その瞬間、空気が揺れたのを離れた場所からでも感じた。

 

 先に動いたのはアスターだった。右手に炎の剣を生み出し、一瞬で距離を詰める。

 しかし、自分に剣が迫っているというのにヘリアスは一歩も動こうとしなかった。そして、いよいよ金の火先(ほさき)が喉元に届くかという瞬間、猛スピードで2人の間に伸びてきた太い木の枝が、アスターの炎を受け止めた。ゴォンという響く音と共にキラキラと剣の火の粉が散る。


 「速いな」


 アスターが歯を食いしばって受け止められた剣にグッと力を籠めると、両者の間の炎がさらに火力を上げて燃え上がる。それを全く慌てる様子もなく、まるで何もないかのように枝で受け止め続けていた。


 「だが、軽い」


 次の瞬間、ヘリアスが払った腕の動きに合わせて木の枝が振り払われる。枝に全体重を預けていたアスターは簡単に吹き飛ばされてしまった。数mほど宙を飛んで地面を転がる。

 しかしすぐに起き上がって体勢を整え、剣を持っていない左手を強く地面に叩きつけた。アスターを中心に、小さな小花が咲く草地がブワッと広がる。そして、そのまま左手を地面につけたまま回り込み、再び距離を詰める。軌跡に合わせて、土むき出しの中庭に草が生えていった。


 「同じ手は通らないぞ」

 「そんなことも、ないかも‼ 」


 軽い気合の声と共に高く跳躍し、アスターが剣を振り上げてヘリアスに飛び掛かる。ヘリアスが再び枝で受け止めようと、手元の枝を頭上に掲げる。

 しかし、飛び上がったアスターはまるでそこに見えない階段があるかのように、重力に逆らって宙を数段駆けあがった。だが、そこでバランスを崩してしまう。後ろ向きに倒れ込んでしまったが、その勢いを使って体をひねり、地面に向かって何かを勢いよく投げつけた。


 「おっりゃああぁ‼」


 キィンという高い音と共に地面に突き刺さったのは、アスターが持っていた炎の剣だ。場にいる全員が驚きに目を見張る中、剣が一際強い光を放ち、さらに激しく燃え上がる。


 「っは、まじか」


 金の炎は魔法で作り出された草を焼き、よりその火力を増させた。熱気が肌を焼き、草が燃える匂いが鼻を刺す。一気に広がった炎から逃れようとヘリアスが枝を構えるが、それより先にアスターの少年らしい高い声が響いた。


 「渦よ! 」


 アスターの言葉に応じるように、剣を中心に燃え盛っていた炎が、ヘリアスを閉じ込めるように渦を巻きだした。風が吹き込んで一気に質量を増した炎は留まることを知らず、あらゆる物を飲み込むかのように広がっていった。



 ◇



 「降参でいいか」

 「はい……」


 気が付いた時には、何重にも重なる蔓が空中で僕の体を捕えていた。痛みはないが、ピクリとも動けない。全力を出しすぎたせいで、魔力ももう空だ。魔法は使えない。降参を宣言すると、ゆっくり地面に下ろされて蔓の拘束を解かれる。立とうとするも力が抜けて、そのまま地面にへたり込んでしまった。


 「強いなアスター。技量も、戦術的なセンスも高い」

 「前回は魔法を習ってすぐの頃でしたから。少しは成長していないと困ります」

 「いや、昔のお前だけじゃなくて、同年代の他の子供と比べてもだ。各地を旅してきた俺の言うことだぞ。ほら、少しは信憑性が上がるだろう」


 話しながら叔父上を取り囲むように生えていた木を消し、叔父上も座り込む僕の隣にしゃがんだ。


 「草を魔法で作り出し、それを炎で燃やした方が魔力の温存にもなる。よくできているよ。俺も枝1本でやり切るつもりだったが……甘く見ていてしまっていたみたいだな。ただ、周囲の状況に気を配れないのは良くないな。最悪の場合、事故に繋がることもある」


 そう言って立ち上がり、屋敷の建物の方へ歩いていく。壁の前には、いつのまにか大きな木の壁ができていた。

 周囲?なんの……


 「はっ!リリアナ!フレージア!」

 「怪我はないさ」


 転がるように壁へ近づく。叔父上が片手を振って消した壁の向こう側には、2人で寄り添うように座る妹たちがいた。リリアナにいたっては震えている。ぱっと見る限り、特に怪我や火傷はなさそうだったのが不幸中の幸いだ。


 「ごめん、2人とも。大丈夫だったかい?驚かせたよね。本当にごめん」

 「だ、大丈夫です。少しだけ驚いただけで……」

 「わたくしも大丈夫です。お姉様が盾を張ってくれましたし、この木の壁も……。これは叔父様ですか」

 「ああそうだ」


 僕の相手をしながら、2人のことも守っていたなんて。それに対して僕は……。


 「周囲だけじゃなく、自分自身のこともだぞ。宙で滞空するアイデアも、それを実現できる技術も素晴らしいものだが、その後のことを考えていないだろう。火の中に落ちたらどうするんだ」

 「はい……」


 かなりひどい表情をしていたのだろうか。叔父上が少し悩んでいるような表情で、僕の頭をわしわしと撫でた。


 「あー。その、なんだ。言い方が悪かったか。こういった周囲の状況に合わせた魔法の行使や連携を本格的に習うのは、もっと学校の中でもまだ上の学年だからな。できているほうがやることなくて困るぞ。それに、実力があるのは本当だ。これからももっと伸びていくだろうな」

 「はい。ありがとうございます」


 「えーっと、じゃあついでにでもないけど、リリアナとフレージアの魔法も見せてくれないか。あ、模擬戦はやらないよ。さすがに疲れたんだ。休ませてくれ……こら、フレージア。年なのかなあ、みたいな顔をするな」


 先にリリアナが見てもらうようだ。動く余力の無い僕と順番待ちのフレージアは、離れたところでリリアナの練習を応援することになった。


 「お兄様、さっきの魔法すごかったです!ぶわって、ぼわって!あと、途中空中を駆けあがっていませんでしたか? 」

 「ははっ。ありがとう、フレージア。あれは風魔法の応用だね。風で空中に足場を作るんだ。父上に教えてもらった魔法なんだけど、結構難しいからまだ失敗のほうが多いんだ」


 おおー!と、キラキラした目でフレージアが見つめてくれる。恥ずかしいところを見せてしまった手前、少々居心地が悪い。


 「でも、できていましたよね!それに、どんどんいろんな魔法をどんどん使えて……わたくし、お兄様のように魔法が上手になりたいです! 」

 「……いや、私もまだまだだよ。フレージアの目標になれるほどではない」


 フレージアが驚いたようで、「えっ」と言って固まってしまう。


 「叔父上、草魔法しか使っていなかったんだ」


 向こうの方では、叔父上がリリアナの手本として、風魔法を使って宙に浮いていた。難易度の高い魔法をたやすく、しかも安定して使っているところを見ると、得意な属性だと言っていた草以外の属性の適正もかなり高いのだろう。

 慢心していたわけではないけれど、成長はできていると思っていたんだ。ハンデがある状態ならもしかしたらって。でも、全く歯が立たなかった。全然ダメだった。動けない相手にも勝てないなんて、花の地の嫡男失格だ。


 「私が得意な火と草魔法の相性が最悪なのは分かるよね。基本、火を受けるのに草系魔法は使わない。燃えちゃうから。でも、圧倒的な魔力量と練度の差があったら、相性が悪くても対処できるんだ。現に、炎の剣を受けても燃えなかった木がその証拠だね」

 「なるほど、そういうものなんですね」


 フレージアは何かを考えているようで、2人の間に沈黙が落ちる。

 フレージアに気を使わせてしまったかな。


 「でも! 」

 「うん? 」

 「でも、わたくしはお兄様の魔法の方がかっこよかったと思います。特に最後らへんの、剣を投げて炎がブワァって広がったときとか!金色だった火に赤みが差していく様子も、なんというか、すごく綺麗でかっこよかったです。お母様も魔法はかっこいいほうがいいって言ってましたし」


 ……驚いた。怖い思いをしたはずなのに、フレージアがこんな風に考えて、思ってくれる強い子だったなんて。少し前までは、病気のお母様とお話をしたいと、遊びたいと駄々をこねて泣く幼い子供だったはずなのに。魔法のまの字も知らないような小さな子供だったのに。

 父上が子供の成長は早いと嘆いていたけれど、まさか僕も同じように思う日がくるなんてね。


 「わたくし、お兄様の魔法すごく好きですよ。ほら、川遊びのときの水の花とかも。わたくしも早くあんな風に使えるようになりたいんです! 」

 「……そっか。ありがとう、フレージア」


 声は震えていないだろうか。兄としての威厳は保てているだろうか。こみあげてくるものを耐えるのに精一杯で、その後の会話はあまり覚えていない。

 ごめんフレージア。後でさりげなく何の話だったか聞いておかないと。



ご覧いただきありがとうございました!


くら錬初の本格的な戦闘描写ではないでしょうか。

楽しんで頂ければ幸いです。

フレージアは普段から好き勝手に錬金術をエンジョイしているようですが、アスターはいろいろと悩みもあるようです。

この辺の認識も、転生したことによる影響なのかもしれません。

アスター12歳だよ。もっと子供っぽくていいんだよ~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。