↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
24/43

小さな真実と実験の進捗

 屋敷の南棟中央にある、2階に続く大きな階段を駆け上がる。息は切れたが、以前ほど疲れてはいない。こんなところで筋トレの成果を感じられるとは思わなかった。お兄様の部屋の扉をノックし、出てきた執事にお兄様に話があると告げる。


「おはようフレージア。急に来て驚いたよ。ティリアは?」

「おはようございます。ティリアはお父様のお手伝いです。それより!昨日クラーヴ……花壇にいた少年に会いましたか?」

「グレーの瞳の子だよね。フレージアと同い年くらいの。うん。確かに会ったよ。何かあった?」


 本当にお兄様だったの!別に疑ってたとかじゃないけど。


「さっきクラーヴに昨日の話を伝えようとしていたんです。けど、お兄様から執事になれる可能性があると言われたと聞いて……。本当なんですか?!無理だろうって思ってたのに……」

「まあまあ、落ち着いて。廊下じゃなんだし、部屋の中で話そう」


 ヒートアップする前になだめられ、部屋に入るよう促される。話を聞いていたのだろう。机についたら、すぐにお兄様の執事が紅茶を用意してくれた。それを一口飲み、目の前に座って同じくお茶を飲んでいるお兄様に尋ねる。


 「わたくし、お兄様が不可能なことをさもできる事のように人に言うとは思えないんです。クラーヴの件、本当なんですか?もし違うなら、クラーヴのことをさらに傷つけることに」

 「彼にも伝えたけど、絶対になれると約束できるわけじゃない。父上がおっしゃっていた通り、教育するための人手も足りないし、彼自身の能力を私たちに示せている訳ではないからね」

 「能力だったら、わたくしの手伝いをしてくれました。クラーヴのおかげで錬金術も成功しましたし、クリモフも高く評価しています」

 「確かにそれはすごいことだけど、執事として役に立つことではないだろう。領主に認められるだけの功績を上げるか、何かに秀でている必要がある。フレージアはうちの家しか知らないだろうけど、今後いろんな人と関わっていったら自ずと分かるとおもう。何より、クラーヴ自身を苦しめることになるだろうね」

 「そんな……」


 それって、やっぱり難しいってことじゃないの?

 そんな私の気持ちを汲み取ったのだろう。慌てるようにお兄様が再び口を開いた。


 「といっても、これは大して難しい事じゃない。一番難しいのは、自身の立場を保障すること、それから雇用するか決める父上と面会することだから。いわば、信用が最も重要なんだ」

 「信用ですか」


 それはまあ納得できる。お父様たちも話していたし、前世でも就職にある程度の信用や身辺調査が必要なものもあった。


 「うん。私が協力したのは信用の件。クラーヴの名前、どこかで聞いたことがあった気がしたんだけど、友人に訪ねて思い出したよ。うちの料理人、ピタセリーの息子だ」

 「えっ、ピタセリーの?」


 フレージアも知っているだろう?と、お兄様が言うが、知ってるも何も料理人の中でも仲のいいほうだ。クーラーに魔力を補充しに行ったら、忙しい中でもいつも話かけてくれる。


 「うちと何の繋がりもない子供と、ここで働いている料理人の息子では信用も、受ける印象も全く違う。ただ、これで万全の信用が得られたわけではないよ。ピタセリーによるものだけではなく、クラーヴ自身の信用も得る必要があると、父上もおっしゃっていた。だから、ほとんど不可能に近かったことから、彼自身が頑張れば手が届くかもしれない、というところまで事情が変わったんだ」

 「お兄様……」


 お兄様の記憶力と手腕に感動すると共に、これも私がクラーヴのことをよく知っていたら、もっと早く話が進んでいたのだろうかと、卑屈ではないが、つい考えてしまう。


 「それから父上に、どうにか一度クラーヴに会ってくれないか頼んでおいたよ。かわいい娘が、唯一といっていい友人を失ってもいいんですかーってね。イチコロだった」

 「……お兄様!ありがとうございます!」


 神か?神だ。妹のためにここまでやってくれるなんて……。


 「それでも厳しい道であることには変わりないから、友人兼推薦者として、しっかり協力するんだよ」

 「はい。もちろんです!」


 その後、お茶を飲みつつクーラーや新しい宝具の話をしているうちに、お兄様の勉強の時間になったので私はお暇することになった。逸る心を落ち着けながらなるべく優雅に挨拶し、扉が完全に閉まったことを確認した瞬間、淑女とは思えない勢いで走り出す。メイドたちやお母様に見つかったら怒られそうだが、今は一瞬でも早く行きたかった。向かうは外庭、庭の隅の大きな花壇だ。



 ◇



 あれから数日後、お父様に頼んでおいた実験用の毛が届いた。白くて細く、パサパサとした感触だ。ソルノーシュという動物の毛らしい。当たり前だが前世含めても聞いたことが無い。届くのを待っている間に量産しておいた数十個ものシャンプーたちと紙も用意して、実験の準備も万端だ。


 「ティリアには釘をがっつり刺されたけど、もう自分の髪ではやらないよ。数もこなせないからね」


 薬草の組み合わせや量、匂い付けに使っている花の種類、それから作ってからの経過日数ごとに、ツヤと香り、汚れの落ち具合を点数化していく。

 これはいい感じ。やっぱりヨモギが入ってるとツヤが出るのかな。……げっ、こっちは毛がボロボロにちぎれちゃった。ドクダミとアーリエは混ぜるな危険と。自分の髪でやらなくて本当に良かったよ。……理科の実験みたいで楽しいね。


 朝から作業を始めて、昼食や休憩を取りながら作業を続けること半日。ようやく全てのテストが終わった。

 やーっと終わった~。くんくん。手からヨモギの匂いがする。


 「えっと、汚れが落ちやすかったのはヨモギが入ってるやつ。けど、日持ちしないから、長期保存には向いていないね。ドクダミを入れると長持ちしやすくなるみたいだから、バランスを見ながら混ぜるといいかも。」


 ヨモギの匂いが強いからなー。匂いを取ることができたらいいんだけど。そうしたら、花の匂いもつけられるし。


 「アーリエとアロエはリンスっぽくツヤ出しとダメージ修復が得意みたい。その分汚れは落ちにくいと。前も思ったけど、やっぱりアロエのほうが効果は強いみたい。でも香りをつけにくいんだよね。アーリエのほうがいい香りになるし、なんかリンスっぽい。あと、アロエは他の薬草との相性が最悪に悪い」


 香りで言うと、バラが今のところ良さそうだね。あとは……ミントとか、オレンジでもやってみようか。サンダルウッドやバニラでも面白そう!


 「よし!それじゃあ、いい感じだった組み合わせで量産してみよう。あと、ティリアに自分の髪で検証する許可をもらわないと」



ご覧いただきありがとうございました!

投稿が激遅になってしまいました(汗)


まさか彼が彼のあれだったとはね。

気が付いていた方はいらっしゃいましたでしょうか。よかったら教えてください

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。