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いざ、シャンプー目指して試行錯誤!

フレージアは薬草を手に入れた!

さっそくお風呂セット作りに取り掛かるようです




 部屋に戻ったら早速実験だ。クリモフにもらった籠を置き、ペンや素材の準備を始める。

 最近寝る前にベッドの中でいろいろと考えてみたんだよね。やっぱりあの瞬間が1番いいアイディアが出る気がするよ。


 シャンプー、リンス、ボディーソープ……略してお風呂セットを作るうえで鬼門になるのが錬金の仕方だ。当たり前だが、液体にペンで陣は描けない。そこで私が思いついたのが、シャンプーを作るための錬金陣ではなく、シャンプーを錬金するための陣を描く、ということだ。

 つまるところ、錬金陣を全自動調理器具にするってこと。これなら何回も陣を描かなくていいから楽だし、私天才では?


「小瓶に水と薬草を入れて……いれっ、いれて……あ゙ー!入らない!」

「何をなさっているのですか、お嬢様。ああ、瓶の口が小さいから上手く入らないのでしょう。刻むのはいかがです」

「採用」


 ティリアにハサミとナイフで薬草を刻んでもらい、私が小瓶にせっせと詰めていく。とりあえず、それぞれの薬草ごとに分けることにした。アーリエはとろみのある水も出てきたので、一緒に入れる。全部詰め終わったら、次は錬金陣だ。

 ……先に陣を考えたほうが良かったんじゃない?


「中級者用の本に、水で清める模様と癒しの模様が載っていたから、それをうまく使えたらシャンプーとリンスになりそうなんだよね」

「良い感じにできそうですか?」

「実験あるのみ、って感じだね」


 なんせ家にあった本には、この方法について何も触れられていなかったのだ。上級者向けなのか、はたまた今まで考えられたことがなかった方法なのか。

 魔法の属性付与(エンチャント)があるから、不可能ってわけではないと思うんだけど……。こればっかりは試してみないと分からないね。


 清めの模様と、薬草の効果を引き出せそうな模様。繰り返さなくてもいいから線は繋げずにと。あと、上に乗っているのが正しい材料か確かめないとだよね。間違って人間に使ったら大変なことになりそうだし。それから……。

 下書きとして、本の模様を見ながら普通のペン陣を描いてみると、意外と必要な要素が多いことに気がついた。円の中にぎゅうぎゅうと模様が描かれていて、少しゴチャついている。

 これちゃんと動く?大丈夫かな。


「とりあえず、錬金陣でやってみるよ」


 この原案を元に、専用のペンで紙に描き直す。錬金するのは小瓶の中身なので、描くのは普通の紙でもいいはずだ。完成したら、さっきの小瓶をその上に置き、陣に魔力を流してみる。今までよりかなり多めに魔力を持っていかれたが、小瓶の中身が変化したりする様子は見られない。

 陣が複雑なせいかな。まだ必要な感じ?おりゃー!

 力を込めて魔力を流し込んだ瞬間、紙がバサッと波打ち、上に乗っていた小瓶が倒れてしまった。


「うわっ!……って、え?なんだか紙のインク汚れが消えてピカピカになってる気が。もしかして紙に清めの模様が発動しちゃった感じ?」


 ちょっと面白いね。


「書き損じた書類を綺麗にする陣ができたみたい。結構需要あるんじゃない?」

「あとで旦那様にお伝えしてみましょうか」


 紙は綺麗になったが、肝心のシャンプーはできておらず、小瓶の中身は水と薬草の混合液のままだった。

 シャンプーとしての効果を定められてないのか、錬金の効果を上に乗っている小瓶に与えることができていないのか。どっちかなぁ、どっちもかなぁ。


「別の陣も考えてみないと」


 その後、夕方になるまで実験を繰り返してみたが、1度も成功することはなく、机の上には動かない錬金陣が描かれた紙と、薬草が入った水入りの瓶、そして知恵熱が出そうな私の上半身が虚しく転がるだけだった。

 クーラーの陣はシンプルだったもんね。むしろ1回で成功できたのが奇跡みたいなものだよ。


「もうすぐ夕食の準備が始まる頃ですし、一度休憩されたらいかがですか。お昼からずっと机についているではありませんか」

「ええ。そうする……」


 正直今すぐベッドへダイブしたいところだが、私には重大な役目がある。ここで寝ているわけにはいかない。気合で起き上がり、部屋を出る。向かうは厨房だ。


 「ごきげんよう。皆さんお疲れ様です」

 「フレージアお嬢様」


 クーラーを厨房に置いてから食事の準備が本格的に始まる前に魔力を流しに来るのだ。魔力を持たないシェフたちは、自分ではクーラーを動かすことはできない。クーラーを提供したものとして、いつもおいしいご飯を作ってくれる感謝も込めて3時間分くらいの魔力を入れておくのだ。

 アフターサービスってやつだね。これくらいなら負担にもならないし、少しでも快適になるなら安いもんだよ。


 「いつもありがとうございます」

 「いいえ、これもわたくしの責務ですもの。むしろ、朝食の準備のときに来られなくて申し訳ないわ」

 「いえいえ。そんな滅相もありません。昼のときに来てくださるだけでも十分なほどなのです。それに、朝はまだ涼しいので、あまり気にされないでください」


 入口近くのクーラーに手を伸ばして魔力を込めていると、うちの料理人であるピタセリーがわざわざ声をかけに来てくれた。いつもこうやって誰かと少し言葉を交わす日課になっている。


「ここで働いている人たちも含めた大人数の料理を作るので、冬でも汗だくになってしまうのですが、お嬢様がクーラーを作ってくださってから本当に楽になったのです。感謝してもしきれません。お嬢様がお作りになったのだと聞いたときは驚きましたよ」

「ふふっ。役に立てているのなら嬉しいです。あ、そうだ。まだ勉強中で、かなり先のことになるかもしれないのですが、新しい料理器具の開発も考えています。完成したら、使用感を知るために厨房で使ってもらうかもしれません」

「そうなのですか!では、完成を楽しみにしております。うちの息子も、お嬢様のように勉強熱心だったらいいんだが……」

「お子さんがいらっしゃるのね」


 声に出したつもりではなかったのか、ピタセリーが分かりやすく動揺するが、すぐに諦めたように口を開いた。


「し、失礼しました。えっと、今年の夏に6歳になった息子が1人おります。料理の腕に光るものがありまして、私の後を継ぐ形で料理人になってほしいと思っているのです。ですが料理は感覚でやっていて、どうも勉強が嫌いなようで……。なかなか息子と話す時間を取れていないのもあると思いますが」


 6歳って小1じゃん。それなのに料理の才能があるってすごいね。それに、勉強したくない気持ちも分からなくもないよ。遊びたい盛りだよね。


「ピタセリーの家系は、代々料理人としてうちに仕えてくれているのよね。遺伝かしら。素晴らしい才能だと思うわ。一度本人と面と向かって話したほうがいいかもしれないわね。本人の希望と、ピタセリーの思いを伝え合う形で。家庭の事情に介入するのは良くないかもしれないけど、何か手伝えることがあったら相談してちょうだい」


 子供が説教たれるみたいな感じになっちゃったけど、大丈夫かな?気を悪くしてないといいけど。


「ありがとうございます。そうですよね、今度の休みにでも話し合ってみます」


 明るく笑って言うピタセリーの表情には、不快感や憤りといった感情は感じられない。前向きに受け止めてくれたようだ。

 

「ええ。うまくいくことを祈っているわ。……ところで、今日の夕食はなにかしら?」

「今日はキノコと芋のグラタンです。デザートに蜜芋のタルトもございますよ。今年1発目の収穫が届いたのです」

「まあ!お芋づくしね。楽しみにしているわ」


 その後、厨房の方に軽く労いの声をかけて部屋に戻る。夕食は1時間後くらいだろう。

 ふふふんっ♪タルト楽しみだな〜。うちのパティシエが作るスイーツも絶品なんだよね。そうだ、今度シュークリームとかも作ってもらおうかな。

 

 鼻歌交じりに部屋へ戻り、散らかしたままだった机の上を片付ける。しばらくは試行錯誤と挑戦の日々が続きそうだ。



ご覧いただきありがとうございました!

何事も簡単にはいかないようですね。

厨房にクーラーを贈ってからどうなったか詳しく書いていなかったので、その様子も描写してみました。

ピタセリーの息子とフレージアは同い年みたいですね。

フレージアは春~夏生まれなので、フレージアのほうが少しお姉さんです。

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