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シャンプーのための植物探し。庭師の人とティリアは浅くない関係らしい

次はシャンプーを作りたいなー




 端的に言うと、ヒーターの作成は失敗した。クーラーの錬金陣を改良すれば行けると思ったのだが、水の模様を火の模様に変えたせいか、素材である白木が発火(ファイアー)したのだ。すぐに水魔法をぶっかけたので事なきを得たが、ヒーター作りは暗礁に乗り上がってしまった。


 「素材との相性が悪いのかなあ。お姉様は時間がかかるって伝えても、気にしないでって言ってくれたけど」


 机に突っ伏していると、昨日お父様たちに貰ったお金が入った小袋が目に入る。この世界のレートはよく分からないが、かなりの額が入っているようだ。金貨も入っており、しっかり重みを感じられる。

 ……期待してもらっている以上、頑張ってみたいよね。錬金術は楽しいし、皆の役に立てると嬉しいんだけど。


 「お姉様への謝礼の意味も込めて、早くシャンプー作ろうかな。お姉様もお母様も、それから私もお湯で体を流しているだけなんだよね。お父様たちに至っては、洗濯用の石鹸で髪を洗おうとしてたし」


 そういえば、お母様が前にマリーアントワネットの髪形が流行りって言ってたよね。髪をケアする方法ってないのかな。



 「無いわね」

 「聞いたことがありませんねえ」

 「そんな……」


 お母様とティリアから帰ってきた返答は無情な物だった。薄々気づいてはいたが、この世界では髪の美しさはあまり求められていないらしい。

 なんてこと!こんなんじゃあっという間にボロボロになっちゃうじゃん。


 「今までなかった物こそ高い価値が生まれるのよ。むしろラッキーだと思えばいいんじゃないかしら」

 「それもそうですけど。何かヒントを得られるかと思ったんです」

 「そうねえ。効果があるかは分からないけれど、10年くらい前に薬草を髪に編み込むなんてことが流行っていたわ」


 なんだそりゃ。髪が草臭くなるだけじゃない?


 「でも、薬草を使うというのはいいかもしれませんね。髪の質を修復とかできるかもしれません」

 「薬草が欲しかったら庭の端に薬草を育てている花壇があるわよ。あまり使っていなくて倉庫の肥やしになっているだけだから、好きに使っていいわ」

 「ありがとうございます。見に行ってみます」


 お母様と話したその足で庭へ向かう。いつのまにか夏の厳しい暑さは和らいでしまったようだ。吹き抜ける風はもう秋と言えるかもしれない。

 クーラー作ったばっかりなのに、もうオフシーズンかぁ。無念。


 「こちらですよ」


 ティリアが迷うことなくスタスタと歩いていく。美しく整えられた広い庭のすみ、日当たりのいい場所に目当ての花壇はあった。1m程度まで伸びている植物や、白い小花をつけてモサッとしている草など、いろんな種類の薬草が植えられている。

 あれ?誰かいるみたい。庭を管理している人かな。


 「少々お待ちくださいませ」


 そう言ってティリアが小走りに花壇へ向かっていった。花壇にいた人と一言二言交わし、再びこちらへ戻ってくる。


 「お待たせいたしました。庭師の者が薬草についてお教えできるとのことです」

 「助かるわ。えっと、お仕事の邪魔じゃないといいんだけど」

 「大丈夫ですよ。これも仕事の1つです」


 花壇で私たちを待っていたのは、長袖長ズボンを着た濃い緑の髪の男性だ。普段から帽子でも被っているのか、それとも天然パーマなのか、毛先が少しくるくるしている。屋外での長時間の作業のせいか、肌が見える部分は日焼けをしているようだ。年齢はよくわからない。


 「初めまして、ですよね。フレージアと申します。今回はいきなり来てしまってごめんなさい。薬草のことについて教えていただけるとティリアに聞きました。よろしくお願いします」


 私がカーテシーと共に挨拶をすると、男性はしゃがんで私と目線を近づけてくれた。背が高いので、かがんだとしても私よりずっと目の位置は高い。

 身長が高くて圧があるっていうのもあるけど、無表情というか無機質というか……。ちょっと怖いね。

 

 「……庭師のクリモフと申します。貴方はまるでデイジーのような方ですね。それに、美しく強い花は咲く時期など選びません。どうかお気になさらず」

 「えっと……?」

 「そんな言い方ではお嬢様が分からないでしょう。もっと植物から離れて話しなさい!」


 ティリアがクリモフの頭を後ろからスパーンと叩いた。いたっ、とクリモフがつんのめる。


 「まだ幼いのにしっかりされた方だ、学びに時期を選ぶ必要はないから、いつでもここに来ていい、と言っておりますわ」


 ティリアが翻訳をしてくれた。クリモフは何も言わず、うんうんと首を振っている。ティリアに叩かれても大して表情が変わっていない。かなりクールなタイプのようだ。


 「2人は、どういう関係なのかしら。古くからの友人とか?」

 「夫婦でございます」

 「ふうふ!?」


 びっくりした、夫婦かと思ったよ。まさかね。


 「結婚してからかれこれ20年くらいですかね。昔からこのような感じなのです。天職というべきか何というか」

 「ほ、本当に夫婦なのね……。ティリアが結婚していたなんて、知らなかったわ」

 「そういえばお話したことがありませんでしたね。クリモフに会う機会が無かったのもあるかもしれませんが」


 確かに、私の記憶を掘り返しても部屋の中で遊んでいることがほとんどで、屋敷の外へ出るようになったのは記憶を取り戻してからだ。


 「それで、どのような薬草をお探しですか」

 「そうでした。えっと、錬金術という技術を用いて、髪や体を綺麗にできる液体を作りたいと考えています。美容品になるのかしら。特に、痛んだ髪を癒して美しくできたらと思っていて……。なので、浄化作用があるもの、傷を癒すことができる薬草が欲しいです」

 「浄化と回復を促すものですか……」

 「回復に関しては、油分を用いることでも実現できそうだなと思っています」


 ちょうどいい物がないか考えてくれているようだ。立ち上がって腕を組み、うーん、と唸っている。


 「浄化作用ならドクダミやヨモギ、回復ならばアロエなどはいかがでしょう。ちょうどここでも育てておりますし、比較的育てるのも容易です」

 「なるほど、アロエは結構相性がいいかもしれません。ただ、妊婦の方には使えませんね……」

 「でしたら、アロエほどの効果はありませんが、似たような植物にアーリエというものがございます。これであれば、特に使用上の注意はありませんし、大怪我の治療などに使うのではないのなら効果も十分かと」

 「では、どちらも少しずつ頂いてもいいですか?ためしに作って、比べてみます」

 「かしこまりました。少々お待ちください」


 クリモフはハサミと籠を持つと花壇へ入っていった。その歩みには迷いが無い。

 どこに何が植えてあるとか、全部分かっているんだろうな。花壇と言っても私の部屋くらいの広さがあるのに、すごい記憶力。

 そんなに時間を置かず、籠にいろんな植物を入れたクリモフが戻ってきた。


 「これくらいでどうでしょうか。この丸いものがアーリエです。切ると美容にいいとされる液体が出てきます」

 「わあ、ありがとうございます。うん?このピンクの花は何でしょう」


 籠の中には、見覚えのあるドクダミやアロエ、初めて見るアーリエの他にも、ピンクや赤、青など色とりどりの花や細長い葉っぱが入っている。


 「美容品を作るとおっしゃっていたので、香りのいい草花もあればいいかと思いまして。……あ、すみません。苦手な香りもありますよね。取り除きます」


 え!いい人!最初は変な人かと思ったけど、めっちゃいい人じゃん!


 「いえ!最高です。綺麗な髪や肌からお花の香りがしたら、すごく素敵ですもの。ありがたく使わせていただきます!」


 籠に鼻を近づけると、甘い香りや清涼感のある香りを感じられる。どれもあまりクセが無く、万人受けするタイプの香りだ。気を使って選んでくれたのだろう。私が楽しそうにしている様子を見て安心したかようで、クリモフが力を抜く。

 あ、ちょっと笑った?怖いかもって思ってたけど、表情が硬いだけで優しいし、いい人だね。


 その後、少し話をした後に籠を借りて部屋に帰ることになった。

 また来てもいいよと言ってくれたし、どんどん行ってみよう。他の植物でも試してみたいからね。


 決意とシャンプーへ1歩近づいた喜びを胸に花壇を後にしようとしたとき、どこからか視線を感じた気がした。



ご覧頂き、ありがとうございました!

ティリア既婚者だったとは⋯⋯

そして新しい人とも繋がりを持てましたね。

クセ強ですが、クリモフも一緒にどうぞよろしくお願いします

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