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技術者としての立場と報酬

ついにクーラーができた!

なにやら両親から話があるらしく……




 そして、昼食の後にクーラー第一号くんのお披露目をした。広い場所で使っても力を存分に発揮できていて、広い食堂も時間をかければ十分涼しくなるほどだ。1回魔力を流したら体感で30分は持つようで、コスパならぬ魔力パも非常にもいい。

 知識0からここまで作れたのは我ながら凄いと思うけど、やっぱり前世にあったメーカーさんの努力の結晶には遠く及ばないね。温度設定とかできるようになったらいいんだけど。……それにしても、角材から冷風が出ているのは結構シュールだね。


「これが前に父上が馬車でされてたクーラーの魔法具なのか?すごいな、あっという間に冷えていくぞ」

「魔法具ではなく、錬金術で作ったので宝具になりますね。材料はまだあるので、もう1つ出来たらお兄様に差し上げましょうか?」


 剣だけでなく馬術の訓練もしていて運動量が多いお兄様は、代謝が良いせいか体温が高く、暑くてなかなか寝付けないような日も多いらしい。この提案にも思った以上に喜んでくれた。


「お姉様もいかがですか?」


 白い木面に描かれた錬金陣を興味深そうに眺めているお姉様にも声をかける。


 「そうね。このクーラーは本当にすごいのだけれど、わたくしが使うと体が冷えすぎてしまうかもしれないわ。冬に使えるような、暖かい風を出すことができるものはないかしら」

 「確かに、もう夏は終わりますからね。多分、水の模様を火の模様に変えたら作れると思います。あとでやってみます。できたらお姉様にも贈らせてもらいますね」

 「ありがとうフレージア」


 お姉様は冷え性なのかも。この領地の冬は結構冷える記憶もあるし、暖房はあった方がよさそうだね。


 「ふむ。想像以上に出来がいいね」

 「魔力もほとんど使わないようね。体内魔力を持つ者しか使えないけれど、それでも十分なほど実用性が高いわ」


 お父様とお母様から見ても、よくできているらしい。自分よりもすごい大人たちに褒めてもらえるのは素直に嬉しいものだ。


 「……フレージア、余裕があるなら私にも2つ作ってもらってもいいかい?執務室と食堂にも置きたいんだ」

 「なるべく早い方がいいですか?材料になる素材が、今手元に2つしかなくて」

 「まだ用意がございますよ、お嬢様」

 「なら、この後すぐに作れます。今日中には完成できますが、いつ頃持っていけばいいですか」

 「時間は空けておくから、いつでもいいよ。執務室にいるから、届けに来てくれるかい」

 「分かりました」


 陣が簡単なのもあって、今日中どころか30分くらいで全部作れそうだ。

 ちゃちゃちゃって作って、他の物の開発も進めよう。仕組みをよく知らないクーラーを作れたことだし、錬金術はかなり融通がきくみたいなんだよね。そうそう、あれ作りたい、シャンプーとリンス!あとボディーソープも!


 食堂でのおしゃべりが終わり、部屋へ戻る前に残りの素材を取りに行く。この屋敷には素材部屋という保管場所があり、簡単な保護魔法が部屋全体にかかっているらしい。木製の棚にはよく分からない草や鉱石のようなものも置いてあった。


 「ありましたよ。では部屋に戻りましょうか」

 「素材はあとどれくらい残っているのかしら?」

 「先ほどと同じくらいの大きさのものが3つ、少し小さいものが2つですね。足りますか?」

 「十分ね。ありがとうティリア」


 ティリアにお願いして小さい2つを自分で持ち、大きい3つを持ってもらう。白い布に包まれた白い木は、さっきの物より若い部分なのか木の香りがする。部屋に着いたら早速作業だ。


 「えっと、お兄様に1つ、お父様に2つ、お姉様には温風版。あ、お母様に聞いていなかったわ。後で聞いておかないと。だから、とりあえず3つ作ればいいね」


 あと厨房とかにも持っていこうかな。ほら暑そうだし。魔力はとりあえず私がどうにかするとして。

 もう何回描いたか分からない錬金陣をペンで素材に描く。慣れたものだ。ものの10分ほどで全て完成した。


 もうできちゃったよ。先に厨房用の分も描いておこうかな。結構広いから1番大きい素材を使っておこう。陣も大きめに描いてと。


 「これで全部ね。早速持って行ってもいいかしら」

 「ええ。先ほど確認を取りに行ってもらいました。いつでも問題ないとのことですよ」


 さっすがティリア。しごでき~。

 お父様に渡す分とお兄様の分をティリアに持ってもらい、先に部屋が近いお兄様のところへ向かう。南棟の2階にあるので、階段を上るのが大変だ。段差も6歳の体には大きく、すぐに息が切れてしまったが、這うようにしてなんとか登り切った。


 「大丈夫ですかお嬢様。お抱えすればよかったですね」

 「いや、ティリアには、それを持ってもらってるから」


 エスカレーター、エスカレーターが欲しいよ。エレベーターでもいいけど。

 幸いなことにお兄様の部屋は階段のすぐ近くだ。ノックをして出てきた執事にお兄様を呼んでもらう。すぐに驚いた様子のお兄様が出てきた。


 「お届け物ですよ、お兄様」

 「もうできたのか!早いな。早速試してみるよ。ありがとうフレージア」


 その後軽く雑談をした後、お父様のところへ向かうことを告げてお兄様と別れた。

 ……頭をワシワシ撫でるのもお父様ゆずりみたいだね。


 再び階段を使って1階に降り、北棟にある執務室へ向かう。執務室は1階にあった。非常に助かる。重厚感あふれる扉をノックすると、中からお父様の執事が開けてくれ、そのまま中へ案内された。失礼します、と言いながら部屋へ入るとお父様とお母様がこちらへ視線を向ける。どうやら何らかの話し合いをしていたらしい。お父様の手元に紙とペンが用意されていた。

 あれ、入るときに失礼しますって言わなくてよかった?なんか職員室に入る時みたいな感覚になっちゃったんだよね。


 「もうできたのかい?早かったね」

 「お兄様も全く同じことを言っていました。何回も描いていたので、もう慣れたんです」


 ティリアにお父様へクーラーを渡してもらう。ありがとう、と言った後、錬金陣に触れて起動し、動きの確認をする。そして1つ頷き、木材を目の前のローテーブルに置いた。


 「フレージア、そこに座ってくれるかい。……別に怒ったりするわけではないから安心して」

 「では……」


 促されるまま、テーブルを挟むように置かれた黒い革製のソファへ座った。お父様とお母様は反対側に座っている。

 怒らないって言って、本当に怒らないなんてことないよね。え……何かしたっけ。


 ものすごく緊張している私を安心させるように微笑み、お父様が布の小袋をクーラーの横に置いた。チャリと、中から金属がぶつかり合うような音がする。


 「これは?」

 「さっきロザリナとも話して決めたんだ。これはフレージアへの報酬、このクーラーの代金だと思ってくれていいよ」

 「お金?!そ、そんな凄いものじゃないですよ。自分のついでに、ただ皆が快適になればいいなって。ほとんど遊びのようなものですし、それに材料も用意してもらいましたし」

 「ふむ、確かにそうだね。じゃあ、材料分だけもらっておこうかな」


 そう言ってお父様が袋から銀色のコインを1枚つまみ出し、再び私の前へ袋を差し出した。それでも受け取ろうとしない私に、今度はお母様が諭すように話をする。


 「どんなものでも、職人の手や技術が加わればより価値が生まれるものよ。もともと普通の木材だった物を皆が便利だと思う物にしたのはフレージアだもの。これは受け取るべきよ。それが敬意でもあり、フレージアのことを応援しているということにもなるのだから。……わたくしたちにフレージアを応援させてくれないかしら」


 お母様に続いてお父様がおどけたように口を開いた。


 「ロザリナに全部言われてしまったな。相手が誰であれ、本人が遊びで作ったと思っていたとしても、技術とアイディアには相応の評価と対価があるべきだと思うんだ。それに、また新しいことを始めるなら先立つものが必要なんじゃないかい。どうだろう、受け取ってくれるかな」


 胸の奥あたりがぎゅっとなった。目の周りが熱を持ち、鼻がツンとする。うっかりこぼれてしまわないよう、グッとお腹と口に気合いを入れた。

 この人たちは、お父様とお母様はちゃんとすごいと認めてくれるんだ。自分の子供が変なことをしてたとしても、見ていてくれるんだ。


 「……分かりました。大切にさせて頂きます」

 「ふふっ、ありがとう。そういえば、また何か作るつもりなのでしょう?」

 「はい。お姉様が言っていた温風を出すクーラーができたら、『シャンプー』と『ボディーソープ』を作ってみたいと思ってます。えっと……髪と体用の石鹸ですね」

 「まあ!それはいいわね。普段はお湯で流すだけだもの。完成したら、ぜひわたくしにも使わせてちょうだい」

 「石鹸か。清めに使うものといったら女性物の印象があるが、私のような男性でも使った方がいいのかな」

 「もちろんでしょう!」

 「もちろんです!」


 私とお母様の声が被った。2人で顔を見合わせ、つい吹き出してしまう。当のお父様は(0▽0)みたいな顔をしていた。

 お母様を順調にお風呂の道に連れ込めそうで嬉しいよ。




 ちなみに、執務室の後に厨房へ行って料理人の人たちにクーラーをプレゼントしたところ、みんなとてもすごく感謝してくれた。

 もはや号泣してたよね。そんなに暑くて大変だったとは……。気づいてあげられなくてごめんね。これからは少し楽になると思うよ。



ご覧いただきありがとうございました!

フレージアの前世にあまり触れていないのにも理由があってのことですが、前世の事とも少し関わりがあるお話でした。


話は変わりますが、語彙力が欲しいです。切実に0▽0

次はシャンプーだー!!

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