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炎の魔女による防御魔法特訓

属性魔法(風以外)を成功させたフレージア

次は防御魔法!

複合魔法は難しいぞ




 ティリアに事情を説明し、危険なことはしないようにと釘を差されたあと、私はお母様に、お兄様とお姉様はお父様に魔法の実践練習をしてもらうことになった。向こうの方でドンドンパチパチやっている。


「あの子達はいろんな魔法を試しているけれど、フレージアはまず防御魔法からね。ちゃんと使えるようになれたら錬金陣を自分の魔力で描いてもいいとヘンディアノが言っていたわ」

「ということは、今日成功しちゃえばいいってことですよね!」

「あら、属性魔法は比較的簡単だったけれど、ここからは複数属性同時処理魔法ってものになっていくわ。そう簡単にできるものじゃないわよ」

「身を守る重要な魔法なんですよね。1つの属性で、すぐに発動できるシンプルなもののほうがいいと思ったのですが」

「速さだけならね。ただ、属性には相性があって、よく効く効かないがあるから、複数種類を混ぜたほうが強度が上がるのよ。火の魔法には水の防御は効くけど、草だとあまり効かない、という風に。最強は、全属性の結界魔法ね」


 なるほど。混ぜものみたいな感じかな。


「お母様は何の属性を組み合わせているのですか?」

「時間に余裕があるときは全属性の魔法を使うけれど、急なときだったら、土と火ね。ヘンディアノは風と水だったはずよ。水より土のほうが得意らしいのだけれど、風との相性が微妙なのよね」


 私に、一度見せてあげるから少し離れるようにと言い、離れたところでお兄様たちの様子を見ていたお父様に声をかけて軽く手を振る。

 なにしてるんだろう。あ、お父様がなんか振りかぶった。ってえええ!


 「な、なにか、魔法がこっちに!」

 「大丈夫よ、安心して」


 お父様が放った風の塊が、野球漫画のようにギュオンギュオンと猛烈に回転しながら、すごいスピードでこちらへ飛んできた。本能的に腕で頭を守ろうとしてしまう私とは対照的に、お母様はその風をじっと見据えて立っている。

 ぶつかる……!

 

 あっという間に風の魔法がお母様まで残り数mという距離になる。その瞬間、前へ突き出されたお母様の手の前に金色の炎が現れた。大きな盾のような形の炎に一瞬の間もなく風の塊がぶつかる。しかし炎は風の塊を呑み込み、さらに勢いよく燃え上がった。金色の炎と風がお母様の豪奢な髪と、白くて長いひらひらしたワンピースを翻す。熱風が地面を這い、空気を焦がした。

 か、かっこいい!お母様がまるでワルキューレみたいに見えるよ!


 「フレージアが近くにいるから全力ではないけれど、こんな感じね。私は反射的に展開できるけど、慣れるまでは合言葉や事前動作のようなものを作るといいわ。その言葉を発すたびに全く同じものを作れるようにするの」

 

 なるほど、この世界の魔法に呪文は無いのかなって思っていたけど、呪文は条件反射を起こすための補助的な物みたいだね。


 「フレージアもやってみましょうか。そうねえ……。フレージアは土と草の複合がいいと思うわ。草は火に弱いけど、土は耐火性能が高いの。そのうち、水属性とも合わせられるようになるといいわね」

 「あの、お母様。もう一度先ほどの盾を見せてもらってもいいですか?ちょっと気になることがあって」

 「いいわよ。熱いから近くに寄りすぎないようにね」


 お母様に再び炎の盾を出してもらう。形のない炎だが、よく見るとうっすらと模様のようなものが見える。時折火の粉を飛ばす半透明の黄金の盾はもはや芸術だ。

 さっきちょっと気になったんだけど、勢いが激しすぎてよく見えなかったんだよね。


 「お母様の盾は火と土の複合魔法なのですよね。私、土属性の物理的な盾を火が包んでいるものをイメージしていたのですが、違いそうで……。一体どうなっているのですか」

 「あら、よく気が付いたわね。私の複合魔法は、この火に土属性を付与している状態なのよ。物理的な影響を受けなくてすむようにね。こうすることで、体内魔力の温存にもなるのよ。難しいから、最初はあまり考えなくてもいいけれど……やってみたいのね」

 「はい!お母様の盾、とってもかっこいいですもん。土の盾に草を生やすだけなんて、かっこ悪いでしょう」


 ただでさえ火魔法と水魔法がダサいのだ。盾くらいかっこよくしたい。


 「褒めてくれるのは嬉しいのだけれど、本当にイメージが難しいのよ。魔法において最も大切なイメージが遅くなってしまったら、盾を作るのも遅くなってしまうわ」

 「それでも、一度だけでもやってみたいのです」

 「そこまで言うなら……。最初から時間はかけるつもりだったから、それが多少長くなっただけね。いいわ。だけど、防御に使う魔法だから、他の人には簡単に解析されないような魔法にしなくてはならないの。だから、自分だけのイメージを作り出す必要があるわ。今までのように方法を教えてあげることはできないの。道を示してあげることはできるけど——」

 「大丈夫です。何事もやってみなければ。挑戦は人生のスパイスですよ!」

 「長生きな学者みたいなことを言うわね」


 おっとまずい。


 「えーと、お母様は火に土属性を付与していたのですよね。じゃあ、草魔法に土属性を付与すればいいということになりませんか?お母様の盾とは違って物理的な干渉を受けることにはなりますけど……」

 「そうね。やってみてちょうだい。魔法は基本挑戦と失敗の繰り返しだから。最初はうまくいかないとしても、やってみるといいわ」


 属性付与(エンチャント)ねえ。土でできた草?まず草魔法で盾の形を作ってみたほうがいいかな。空間魔力で手の中に種を作って、それを盾の形になるように育てるイメージで……。お、結構いい感じなんじゃない?

 草魔法が得意という皆の見立ては合っていたらしい。あまり苦戦せずに手の中に50㎝四方ほどの蔦と葉でできた盾を作ることができた。


 「形はいい感じね。その調子よ」


 問題はここからだね。属性を追加するってどうしようかな。イメージ、イメージ。あ、染色のイメージとかいいんじゃない?我ながら天才か。溶かした土属性を草の盾に吸わせるイメージで。吸った部分の色が変わるように……。


 「で、できた?」

 「ええ。まさか本当にできるなんて、驚いたわ」


 完成した盾は、ところどころに緑色が残った土色の蔓と葉でできていた。染色をイメージしたせいだろう。究極的にダサい。

 なんで!かっこいい盾を作りたいのに!


 「おかあさまぁ」

 「十分すごいのよ。2属性はまだ簡単な方とはいえ、私だって最初は苦戦したのに一度で成功するとは思っていなかったわ。見た目に妥協したくないのは分かるけれど、まずは強度を上げるのが先ね」

 「強度ですか……」

 「魔力をたくさん込めるか、より硬いものをイメージできるようになったら成功よ。土魔法なら、金属とかもいいわね。フォークやスプーンのような物よ」


 金属も土魔法の1つなんだね。まあそれもそうか。金属ね。一番硬い金属ってなんだっけ。タングステン?理科の教科書に載っていた気がするんだけどな。実際に見たことは無いけど、タングステン、タングステン……。土魔法で作った液体のタングステンを吸わせるイメージで……。

 目を閉じて手元の盾に集中していると、お母様が「まあ!」と声を上げた。何か起きたのかと慌てて目を開くと、さっきまで土色だった草の盾が、周囲の光をキラキラと反射させる銀色へと変わっていた。いや、正確にはタングステン色といったところか。


 「ええ!なんか色が変わってる!」


 って、そりゃそうか。タングステン吸わせたもんね。さっきと同じ原理なら色も変わるよ。

 

 「じわじわと盾が銀色になっていったのよ。とても綺麗ね」

 「硬くしようと思っていたら見た目も良くなっちゃうなんて、ラッキーですね」


 まるで本物のように精密な形の蔓と葉が複雑に絡み合った銀細工のようで、とても綺麗だ。インテリアとして部屋に飾っておいてもいいくらいだと思う。

 お母様の盾と比べたら小ぶりだし、作るのに時間がかかるようじゃ実用的とは言えないけどね。


 「強度の方はどうかしら」

 「固いものを想像したので、結構硬いと思いますよ」

 「それはいいわね。見た目がいい上に盾としての役割も果たせるなんて、とても美しい魔法ね。ねえフレージア、早速使ってみたいと思わない?思うわよね」

 「え?あ、はい」


 食い気味ですねお母様。それに顔が赤くなって、目もワクワクしているし。実は戦闘ジャンキーだったりする?マジで?いつも優雅なあのお母様が?


 「最初は……風か水魔法がいいかしら。ヘンディアノー!」


 再びお父様へ声をかける。今はちょうど休憩中らしい。お兄様とお姉様も一緒に振り返った。


 「フレージアにいい感じの魔法を投げてちょうだーい!」

 「いきなりですか!?」


 向こうにいるお父様が手を振って合図をしてきたかと思ったら、早速とばかりに腕を振りかぶる。放たれた魔法は先ほどと同じ風の球だ。ただし、さっきより小さく速度もゆっくりで、ふわふわと飛んでくる。といっても自分に魔法が向かってくるのだ。焦る。非常に焦る。なにもかもが急展開すぎる。

 

 「まだ心の準備が!」

 「なら今準備なさい。ほら、しっかり前に構えて。もし危なそうだったら私が守るわ」


 イケメンですねお母様。そして急にスパルタですね!

 こうなったらもうなすすべは無い。無力な私はできたばかりの盾に身を隠すことしかできなかった。その数秒後、ぽひゅん、という音と共に軽い衝撃が盾を持つ手に伝わる。


 「成功ね!これを繰り返して、一瞬で防御魔法を展開できるように練習をしていくわよ」


 どうやら私は無事らしい。


 「は、はひぃ」


 どうやらスパルタモードに入ってしまった炎の魔女の言葉に、私は気の抜けた返事をすることしかできなかった。

 なんだか、その二つ名で呼ばれる理由が分かった気がするよ。



ご覧いただきありがとうございました!

防御魔法も完ぺきに使えるようになったら、錬金術!

あと少し!


私も魔法を使えるようになりたいと切実に思っています。

風がいいなぁ

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