魔法の授業:実践編(風・土・草)
火と水属性の魔法を何とかクリアしたフレージア。
次は風、土、草属性の魔法のようです。
火と水の魔法に続いて挑戦した風魔法。なんとこれが非常に難しかった。
体内魔力できっかけを作るって、風のきっかけてなに?!現実では上昇気流がなんとかーって話だったと思うけど、それをどう再現しろと。扇風機、扇風機か?!
「難しそうかい?」
「はい……」
ぐぬぬぬ。ここで足踏みしていられないのに。
「お父様とお姉様は一体どのように発動しているのですか?」
「どう、か……」
「そう言われると説明は難しいわね。こう、風の流れを感じて、掴んだ!って思ったら感覚でやっているから」
なんと。まさかの感覚派でしたか。
その後もいろんなイメージや方法で試してみたが、そよっとも風が吹くことはなかった。結局今回は諦め、次の魔法に移ることにする。
あとで自主練しとかなきゃ。魔法もそうだけど、早く錬金術やりたいもんね。
「先に土魔法をやろうか。土魔法には大きく2つの方向性があってね、既にある土や岩を利用して変形させたりするものと、魔法で1から創造するものがあるんだ。こんなふうにね」
開かれた手のひらの上、ぷかぷかと数個の金色の小石が浮かぶ。石はそれぞれ回転したり他の石とぶつかったりしながらカラカラと音を鳴らしていた。中には金属もあるのだろうか。時折、カキンという硬質な音も響く。お父様が手をぐっと握りしめると、石は砕けて散っていった。
「まずは既にある土を好きに動かしてみようか。あまり難しく考えないで、体内魔力で土を押し出したり支えるイメージでやるといいと思うよ」
「やってみます!」
押し出す……。上からより、土の中から上に押し出した方がいいんじゃない?こうやって、手から魔力を土に浸透させる感じで。そしたら、魔力をシートみたいにして、上に持ち上げる!
バコッ!という音と共に、私が立っている場所まで1mほど庭の土が飛び出した。急な動きに落ちそうになり、慌てて地面に這いつくばる。
「うわあ!お、思ったより大きくなっちゃいました」
「すごいね。はじめてにしては上出来だよ。力の感覚は覚えないといけないようだけどね。じゃあ次は一度降りて、この土の形を変えてみようか。」
これさっきと同じ感じでいいんじゃない?こう、土の周りに体内魔力のシートをかぶせて、それを手の代わりに形を変えるとか。あ、いい感じ。
「フレージア、これは一体なんだい?」
「『埴輪』です。かわいいでしょ」
「ハニワか。これは顔かな?確かにかわいらしいね」
無事に1mの埴輪が庭に誕生した。
これ邪魔じゃないかな。ここ置いといていいの?結構存在感あるけど。ああお兄様、埴輪の腕にぶら下がっちゃってるよ。確かにぶら下がりやすそうな腕だけど。
「土魔法の応用だね。自分で1から石か土を作り出してみようか。金これも難しく考える必要はないよ。さっきよりも消費魔力が多くて維持も大変だろうから、気を付けるんだよ」
「お父様、さっきのように石を浮かせるのはどうやっているのですか?風魔法でしょうか」
「ん?いや、宙に浮かぶ石をイメージしたらできるよ」
まじか。ということは、あれは反重力な小石ってこと?そうそう、さっき思いついたんだけど、体内魔力は空間魔力に干渉するためのものって考えるのもいいかなって。だから、こんな感じで。まず空間魔力が空中で大きな岩になって浮いているイメージをする。そしてその岩を、体内魔力を使って細かく爆破する。やっぱり!うまくいったよ。
私の身長より少し高いところに、大小さまざまな石がぷかぷかと浮いていた。空間魔力で浮いている岩を作るところを想像したからだろうか。
「もしかしたらフレージアは土魔法が得意なんじゃない?他の魔法よりも、ずっと上手よ」
「そ、そうですか?」
「確かにそうかもしれないな。ブロムキントの者は土魔法にゆかりがあるというけれど、フレージアは特にその特徴を持っているんじゃないか?」
土が得意魔法か。お姉様たちにこうして褒められると、ちょっと照れるね。
すると、お兄様が何かいたずらを思いついたかのような表情で私をつついた。
「フレージアも”土の少女”を名乗ったらどうだ?」
「なんだか絶妙にダサいですねえ」
「はいはい、その話はもういいだろう。フレージア、石を消していいよ。最後に草魔法をやっておこうか」
埴輪がどどんとあるので、すこし別の場所に移動して行うことになった。草魔法も土魔法と同じく、既に生えている植物に干渉する魔法と、自分で植物を生やす魔法があるらしい。
「草魔法は弟がとても上手いんだが……」
「私たちにとっての叔父にあたる方ですよね。お会いしたことありましたっけ」
「そうか、フレージアは会ったことがないのか。叔父上は旅に出ておられるんだ。最後に帰っていらしたのはリリアナが生まれてすぐくらいだったか」
「私もお会いした記憶はありませんね。どんな方なのでしょう」
「そのうち会えるさ。そのときにでも草魔法を見せてもらったらどうかな。それじゃあフレージア、やってみようか。魔法で作る植物は、実態のある幻影のようなものなんだ。空間魔力で花の種をまいて、花畑が広がっていることを想像しながら体内魔力を広げてごらん」
言われた通り、自分を中心とした半径3mほどの範囲に空間魔力で作った花の種をまき、その種に栄養を与えるイメージで体内魔力を広げていく。すると、自分に近いところから波のようにぶわっと花が咲いた。イメージした通り、色とりどりの丈の短いコスモスのような花が咲いている。ここだけ春の草原のようだ。
「他の属性よりもやりやすいですね。こんなにイメージ通りにいくなんて」
「そのイメージが大切だからね。種も空間魔力で作るから、操作的な親和性が高いのもあるかも。それにブロムキントは草と土に適性がある血筋なんだ。ほら、花を作る魔法を前に見せたことがあるだろう。あれは特性魔法だが、少なからず草と土魔法に縁があるんだ」
なるほど、家系によっても得意不得意があったりするんだね。楽に使える魔法は多いに越したことはないよね。ラッキー。
「この種を咲かせてごらん。この魔法ばっかりは本当に人によるし、感覚の問題なんだ。難しいかもしれない」
そういってズボンのポケットから布に包まれた種を取り出した。スイカの種みたいな見た目だが、色がすごい。真っ赤だ。何の種なのか想像もつかない。ためしに手にもって魔力を込めて念じてみるが、うんともすんとも言わない。
小学校の理科で植物の発芽についてはやったことがあるけど、同じ感じなのかな。魔力を栄養のイメージで送ってもダメっぽいね。うーん。あ、そうだ!
脳裏に浮かんだ映像を実践するべく、貰った種を地面に置き、手を握りしめて腰を落とす屈伸をし、その後両手を挙げてジャンプをするという動きを繰り返す。
「……フレージア、何をやってるんだい?」
「んーっぱ!ですよ!」
某映画での印象的なあのシーンだ。映画では、姉妹がんーっぱを繰り返してたら、種がみるみる成長していた。
あの姉妹にできたということは、私にできないということはないと思うんだよね。魔力をいい感じに送りながらやったら結構いけるんじゃないかなって。あれ、でもあれってあのモフモフたちのおかげだったりするのかな。じゃあ無理じゃない?どうしよう、恥ずかしくなってきた。
だが何事もやってみるものだ。なんと地面に置かれた種が少し動いたかと思った瞬間、小さな種はイメージしていた通りのスピードでイメージしていた通りの木に成長した。いや、木ではない。非常に大きな花だ。私が手を伸ばしても一周できないほどの太さの瑞々しい茎の上に大きな桃色の花が咲いている。茎の途中に生えている葉も、私の体をすっぽり覆えるほどの大きさがある。花びらに光が当たっているということは、建物よりも高いところまで成長したのだろう。
うーん、ちょっとやりすぎた気がするよ。
「っな、なんだこれは……」
「先に言っておいてくださいよ、こんなに大きくなる植物の種だっただなんて」
「普通はこんなに大きいものではないのよ。せいぜい数十cm程度の高さにしか成長しないわ」
「ええ……」
「フレージアが何か大きい植物を想像したんじゃないか?そうじゃないと説明できないぞ」
うっ、その通りです。
「お父様、お母様。この花ってこのままでも大丈夫なのでしょうか」
驚いた顔でフリーズする両親に、恐る恐る声をかけてみる。やっぱりまずかったかな、と心配になってきたころ、2人がいきなり声を上げて大笑いし始めた。
「ぶっはっはっはっは。いいね、すごいよフレージア!これあいつにも見せてやりたいよ。一体どんな顔をすることか。ふっはははは」
「ええ、本当に。それに、うちらしくていいのではないかしら?もう、お腹が痛いわ。ふふふっ」
その後もしばらく2人で笑い続けていた。前世を思い出す前の記憶を含めても、2人のこんな姿は初めて見た。どうやらお兄様たちも同じらしい。呆気にとられた様子で2人を見ている。
「そろそろ、ティリアが飛んでくるころじゃないかい?第一声は、皆さんご無事ですかー!に賭けるよ」
「皆さーん!ご無事ですかー!」
ティリアが現場に到着すると、巨大な花の下、魔法でできた花畑の中で笑い転げる5人がいたそうだ。
ご覧いただきありがとうございました!
土の少女はちょっと微妙ですね。
なんせ両親が炎の魔女、風の貴公子ですから。
次の話では、さっそく複合魔法に挑戦するようです。
なんと防御魔法!
お父様がep11で使っていたものと同じですね。
ぜひ、ブクマなどをしてお待ちください!




