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初めての錬金術と胃痛の種

魔法でいい感じにクーラーを作ることができたフレージア。

本格的にクーラーを作成するにあたり、錬金術について学んでいくことにしました。

またお父様に本を借り、まずは初歩的なことを勉強しているようですが……




 ピクニックから一夜明け、私はお父様とティリアに連れられて再び図書館に来ていた。


 「はい、あったよ。これが錬金術の入門書みたいだね」

 「ありがとうございます、お父様」


 文字の本を探したときと同じ魔法を使い、お父様が1冊の青い本を持ってきた。錬金術について知りたいとお願いしたところ、ちょうどいい本があると言って貸してくれると言ってくれたのだ。


 「錬金術の本とは珍しいですね。長くこの屋敷で働かせいただいておりますが、このようなものがあったとは知りませんでしたよ」

 「あの、この本って私が持っていてもいいものなんですか?」


 複雑な模様が描かれた表紙と、羊皮紙らしき紙で作られた本はどう見ても高価なものだ。それにページも多い。私のような子供が簡単に触ってはいけないものではないだろう。しかし、そんな心配を気にしない様子でお父様が軽く手を振る。


 「大丈夫だよ。ここにある本には保護の魔法がかけられてあるからね。汚れたり、壊れたりすることはないから安心するといいよ。それに、これは私の祖父様(おじいさま)の本でね。珍しいものが好きだったから錬金術にも手を出していたんだ。ずっと本棚に収められているよりも、錬金術に興味があるフレージアが読んであげたほうが本も喜ぶよ」

 「曾祖父様(ひいおじいさま)が……。分かりました。ありがたく使わせていただきます」

 「ああ。私も幼い頃に少し話を聞いたことがあるから、簡単なことなら教えてあげられるかもしれない。何か分からないことがあったら聞くんだよ」


 執務に戻っていったお父様を見送り、自室に戻って早速本を開いてみる。ページをめくると、学校の図書館のような古い本の匂いがした。


 「えっと、れ、んきん、これはじゅかな。あ、錬金術。にゅ、う……もん?」


 だめだ。分からない単語が多すぎる。なんて読むのか分かっても、それが何を指すのかすら分からない。この調子じゃ、1ページ読むだけで丸1日かかっちゃうよ。


 「ティリア~」

 「わかりました。お嬢様は字を習ったばかりなのです。いきなり大人用の本を読むのは難しいですよ。ですが、私も魔力に関することは詳しくありません。教えて差し上げるというよりは、ただ読み上げるだけになると思いますが、それでもよろしいですか?」

 「ええ、大丈夫よ。分からないことがあったら、お父様に聞いてみるから」


 では。と、本を手に取り、私に中身が見えるようにした状態で読み上げてくれる。


 「錬金術入門。この本は錬金術を初めて習う人向けの本です。ある程度知っている人は、錬金術発展という本を読んでみましょう。……関連書籍の販促ですね」


 おう。ちゃっかりしてるね。それにめちゃくちゃ丁寧。小学校の教科書みたい。


 「錬金術とは、魔法とは似て非なるものです。魔法は体内魔力と空間魔力を使いますが、錬金術は体内魔力のみを使います。なので、体内魔力の消費スピードが速いです。魔力の枯渇に気をつけましょう。そして錬金術は、対象の物に特徴を持たせることができます。例えば、水を入れるとあっという間に冷たくなるティーカップ。魔力を注げば水が湧いてくる石。何度も使える火種。魔法で作られた道具は魔法具と呼ばれますが、錬金術で作られたこれらのような物は、宝具と呼ばれます。……いいですね、水が冷たくなるティーカップ。ぜひ我が家にも欲しいです」


 魔力の枯渇か。MPが0になる状態ってことだよね。枯渇したらなにかあるのかな?


 「ねえティリア、魔力が枯渇したらどうなるか、知ってる?」

 「そうですね。私が聞いた話にはなりますが、まず魔法が使えなくなります。それから、人にはよりますが、体調が悪くなったり、力が入らなくなったりするようですね。旦那様の場合は、力が抜けて動けなくなるようですよ」

 「なるほど……」

 「では続きを読みますよ」


 ティリアがページをめくると、本の右ページに大きな魔法陣のようなものが描かれていた。こういった絵でページが多くなっているのだろうか。


 「錬金術には3つの物が必要です。まず体内魔力。錬金を行うときや、宝具を作る時に必要になります。次に土台となる素材。錬金術を施して宝具にする元になる物が必要です。最後に錬金陣。錬金陣を用いることで素材に特性を持たせることができます。詳しく書くほど、より正確に特性を与えることができます。それぞれの物について、より詳しく見ていきましょう」


 この魔法陣は錬金陣というものらしい。めくられた次のページにも、イラストがたくさん描かれている。


 「えーと、体内魔力に関しては省きます。知らない人は、『初めて学ぶ魔力』を読んでください。……急に投げやりになりましたね。」

 「この間お父様に教えてもらったし、気にしないでいいかしら」

 「ええ、大丈夫でしょう。では次が……次は素材についてです。素材の質が良いほど宝具の質もよくなります。選ぶ際は気をつけましょう。また、作りたい宝具や持たせたい特徴によって素材を変えましょう。属性や性質が似たものであるほど、仕上がりがよくなります」

 「属性って、お父様が得意な風魔法のような?他にもあるの?」

 「確か、火、水、風、土、草、この5種類だったと思いますよ。旦那様とリリアナお嬢様は風魔法、奥様とアスター坊ちゃんは火魔法がお得意ですね。それから、皆さま土魔法が他の方よりも上手だとか。お嬢様は何の魔法がお得意なのでしょうね」


 へえ。昨日の水の花は水魔法なのかな。風魔法も見たことがあるけど、他の魔法ってどんな感じなんだろう。


 「では続きを。最後に錬金陣について。錬金陣は体内魔力を線として書き出します。指で書くこともできますが、魔力を吸い出すことができる専用のペンを使った方がいいでしょう。錬金陣には、属性とそれをどのように用いるかについて記す必要があります。」


 つまり、錬金陣はプログラムみたいなものかな。魔力がプログラムを動かすための動力で、媒体が実行の対象的な……。だとしたら、前世のプログラミングの授業は得意だったし、錬金術、結構できるかも。


「属性の模様と錬金陣の例を次のページに描いています。体内魔力を流し込むように、錬金陣に触れてみましょう。……これがその錬金陣ですね。お嬢様、やってみますか?」

「もちろん!触れればいいのよね」


 めくられたページには3つの錬金陣が描かれていた。下にはそれぞれ説明が書かれてある。どうやら、描いた場所の紙と本自体を宝具としているようだ。

 これが私の初錬金術!地味に初めての異世界らしいことなんじゃない?

 

 気合を入れて袖をまくり、ためしに音が鳴る、と書かれた左の錬金陣に触れてみる。その瞬間、パッパラパー!と、ラッパのような軽快な音が部屋に響き渡った。かなりうるさい。

 びっっくりした。ずわっと魔力が吸われた感覚がしたよ。手は……なんともないみたいだね。


 「すごいですね、これが錬金術ですか。こちらの錬金陣はどうでしょう」

 「これは、宙に浮く、かな。やってみよう」


 他2つよりも丸みを帯びた錬金陣に手を触れてみる。すると、さっきのように魔力が吸い取られる感覚がした後、持っていた本がふわりと浮いた。20cmほどの高さでホバリングする。


 「おおー!」

 「なんて便利な」


 喜びも束の間、本はすぐに重力に従って落ちてきた。再び手の中に納まる。

 うーん、魔力が少なかったとか?それとも錬金陣の特徴かな。


 「最後の陣は……光る。陣が光るみたいだね。やってみるよ」


 ……あれ?光らないよ。触れても魔力を吸われないし、壊れてるのかな?

 一度手を離してみたり、軽く叩いたりこすったりしたが錬金陣はうんともすんとも言わない。


 「どうされましたか?お嬢様」

 「錬金陣が発動しなくて……。どこかで線が途切れてたりしてるのかも」


 本に描かれた陣をじっと見ながら指でなぞってみる。陣は、外側に描かれた三角形の線の中に、曲線を多用したマークのような模様が描かれているものだ。

 うーん、ここの模様は音が出た錬金陣の中にも描かれているね。何か意味があるんだろうけど……。錬金陣がプログラムと同じ感じなら、発する、とか?音を発する、光を発する、みたいな。もしそうだったら、浮かぶ陣に入っていない理由にもなるよね。ということは、この模様が最終地点?じゃあつながっている線をたどっていけば……。


「あった。ここの線が掠れて途切れちゃってるね」


 古い本だから、劣化したのかな。っておいおい、保護魔法はどうした。


「どうしましょう。旦那様に相談いたしますか?」

「いえ、私が直してみる」

「お嬢様が?!できるのですか」

「やったことないけど、多分ここをこう繋げばいいと思うんだよね。えっと、体内魔力を使うんだよね。指で描くこともできるって書いてあったし」


 どんな感じだろう。指先から出た血で線を引くみたいな?例えが物騒だけど、こうピッと。

 指先が少しチクッとして、金色の線が本の上に引かれた。ちょうどかすれていたところだ。

 え、なんかできた。これは良い感じなんじゃない。


「おーいフレージア。部屋で作業してたら、お祖父様が特殊なペンを使ってたのを思い出してさ……」


 扉が開きお父様が顔を出した瞬間、私の魔力が勢いよく吸われ、本からピカピカと眩しく明滅する。

 何が、


「っ!離れろフレージア!」


 驚きに声を上げることも、本を閉じることもできないまま、私の部屋はいくつもの花火を同時に打ち上げたかのような光に包まれた。



ご覧いただきありがとうございました!

めっちゃ光りましたねー。

お父様も、あと5秒くらい早く来ていれば……!

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