後日談2(????の場合)
真っ暗な部屋の中。
PCが起動すると同時に、モニターの光が部屋を淡く照らしだす。
もし今、この部屋に初めて入った人がいたのなら。この淡い光だけでも、この部屋の異常性を察知したことだろう。
薄暗いため遠目には何が映っているか分からない。ただ、何かを映した写真が、天井を含めた部屋の壁面全てに隙間なく貼りつけられている。
部屋の中にいるだけで、主の妄執に取り込まれ、ほとんどの人が発狂してしまう。そう確信できるほどの狂気で、そこは満たされていた。
だが幸いにも、主はこの部屋に人を呼ぶつもりはなかった。いや、それは少し違う。一人しか呼ぶつもりはなかった、が正しいと言える。
壁を埋め尽くす写真。その全てに映りこんでいる、主の思い人以外は。
主はカメラのデータをPCに取り込んでいく。
取り込んだ写真を、モニターで最大まで拡大した上で、一枚一枚、じっくり確認していく。勿論、確認する際の主は、気色の悪いにやけ顔を浮かべている。
半日以上もの時間をかけて全ての写真を堪能した主は、最後、唯一思い人が映っていない写真をモニターに映した。
その写真を見れば見るほど、主の眉間に深いしわと青筋が刻まれていく。
主は怒っていた。今すぐにでもモニターを殴り、破壊し、このデータを絶対に復旧できなくなるまで粉々に砕きたいほどに。
しかし、当然そんなことはできない。それをしてしまえば、思い人のデータも一緒になくなってしまうから。
主は一度大きく息を吐きだすと、今度は今しがた取り込んだ写真を、自家用フォトプリンター(最高級品)で全て印刷していった。
印刷された写真を、主は一枚一枚、慈愛を込めて撫でていく。ただし、最後に印刷された写真だけは別だった。
デスクの上から赤のマジックペンをつかみ、映りこんだ男の顔目掛けて何度も何度もバツ印をつける。やがてペンの圧が写真の強度を超え、男の顔を貫通する。
主は赤ペンを投げ捨てると、すでにボロボロになった写真を丁寧に、丁寧に細かく指で千切っていった。
粉々になった写真を足で丹念に踏みつけながら、主――有馬瑞樹は拳を握り締めた。
「よりによってこの僕に、あの人の講釈を垂れるなんて。許さない、絶対に許さないぞ、斎藤頼一。喜一郎君の隣に立つのは、この僕だ」
『Episode2:未来が視える水晶-完-』




