予言的中
「斎藤さん、動けますか?」
名前を呼ばれる。機械的に首を上げ、声の方に目を向ける。
有馬さんが、心配そうな顔でこちらを覗き込んでいた。
「僕のことがわかりますか?」
「有馬、瑞樹さん」
「そうです。有馬です。じゃあここがどこか思い出せますか?」
「黎深館の、六階の、どこか」
「ええ、その通りです。どうやら記憶はしっかりお持ちのようですね」
ほっとした様子で彼は胸を撫で下ろす。
俺はぼんやりと彼の顔を見ながら、「なんで、有馬さんがここに?」と尋ねた。
「喜一郎君に呼ばれてね。君がピンチだから今すぐ来てほしいって」
「佐久間さんに」
「まだ僕も、何が起きたか全て理解してるわけではないのですけどね。取り敢えず、落ち着いて聞いてください。アリスさんが殺されました」
「……」
知っている。だって、彼女を殺したのは俺なんだから。
俺が一緒にいてあげなかったから、彼女は殺されたのだ。
「それから、アリスさんと全く同じ顔の女性も一緒に殺されていました。英樹さん曰く、アリスさんの双子の妹のイリスさんという方らしい」
「……」
それも知っている。彼女を殺したのも俺だから。
アリスさんを殺した犯人が近くにいるかもしれないのに。いや、いたというのに、一人にして逃げだしたのだ。そのせいで、彼女も殺されてしまった。
「……その反応、やはり知っていたようですね。まあそうでなければここまで心神喪失状態にはならないでしょうが」
「……」
「動ける状態でないのは理解しています。ですが、ひとまず食事処まで移動してもらいます。今、一人でいるのはとても危険ですから」
有馬さんは俺の手を強く引く。
手を引く程度では動かない俺を見て、今度は肩を貸し、引きずるように部屋から連れ出した。
そこまでするくらいなら、放っておいてくれて構わないのに。そんなことを考えていると、
「今なら、逆に冷静に聞いてもらえるかもしれませんね。今日殺されたのは、彼女たち二人だけじゃない。先ほど、万里さんも殺されていることが確認されました」
「は……」
完全に全身の力が抜ける。有馬さんは一瞬ふらつき俺を落としそうになるも、何とか堪えてみせた。
ずるずると引きずられていく中、俺の心は後悔の二文字で埋め尽くされていた。




