第8話:異種族間の「合意形成」
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第8話は、橋の復旧現場で直面する「異種族間の泥沼の対立」のエピソードです。
感情的になって衝突するエルフとドワーフに対し、修平の「合意形成術」が炸裂します!
バルガス子爵と交わした「納期三日」の試練。
街道を塞ぐ暴走モンスターを瑞穂が素早く退治したところまでは順調だった。しかし、最大の課題である「崩落した大橋の復旧現場」に到着した修平たちを待ち受けていたのは、想定外のトラブルだった。
「だーから言ったろ! ドワーフの頑固頭が作る石橋なんて、重すぎて崩れるに決まってんだ!」
「あぁん!? なんだとヒョロガリのエルフめ! お前らの軟弱な木組みだから魔物の体当たり一発で壊れたんだろうが!」
現場では、森の精霊エルフの建築技師たちと、山に住むドワーフの石工たちが、胸ぐらをつかみ合って怒号を飛ばし合っていた。
お互いの自尊心と建築思想が衝突し、復旧作業は完全にストップ(工程遅延)している状態だった。
「西岡さん、どうしよう……喧嘩をやめそうにないよ……」
レンが怯えたように修平の袖を引っ張る。
(なるほど。部署間の縄張り争い、および職人同士の意地の張り合いか……)
会社でもよく見た光景だ。開発部と営業部が互いの不手際をなすりつけ合い、プロジェクトが進まなくなるあの地獄。
修平は深く溜め息をつくと、源さんに視線を送った。
「源さん。同業者として、あの二つのやり方はどう見えますか?」
「ん? そうさなぁ……」
源さんは腕を組み、崩れた橋の断面をじっくり観察して呟いた。
「ドワーフの石組みは土台としては最高だが、水流の逃げ道がねぇ。エルフの木組みはしなやかで水には強いが、強度が足りねぇ。……両方の良いところを合わせりゃ、100年は崩れない最高の橋になるんだがな」
「完璧な分析です。ありがとうございます」
修平は頷くと、怒号が飛び交う喧嘩の渦中へと迷いなく踏み込んでいった。
「双方とも、そこまでです!!」
修平の張り詰めた大声が響き、エルフとドワーフたちが一斉に振り返る。
「なんだ貴様は! 人間の若造が口を挟むな!」
「俺たちの技術の何が分かると言うんだ!」
「技術の凄さはよく分かります!」
修平は引かずに、双方の代表者の目を見つめた。
「エルフの皆様の木工技術は、水の力を逃がす美しさと柔軟性がある。ドワーフの皆様の石工技術は、どんな衝撃にも耐えうる圧倒的な堅牢性がある。どちらも紛れもなく超一流です!」
突然の絶賛に、エルフもドワーフも一瞬毒気を抜かれ、言葉を詰まらせた。修平は間髪入れずに言葉を畳みかける。
「ですが、お互いの技術を排斥し合っていては、この橋は永遠に完成しません。結果としてバルガス子爵に『どちらの技術も役に立たなかった』と切り捨てられるだけです。それで本当にいいのですか!?」
「うっ……それは……」
「提案(落としどころ)があります」
修平は地面に素早く棒切れで図面を描いた。
「川の激流に晒される『川底の基礎と橋脚』は、ドワーフの強固な石組みで構築する。そして『橋桁と上部の床板』は、エルフの柔軟な木組みで組み上げる。――名付けて【ハイブリッド構造橋】です!」
修平の提示した図面と、横から源さんが「職人の目線」で付け加えた技術的フォロー(補強ポイント)を見て、エルフとドワーフの技術者たちの目が変わった。
「これなら……お互いの強みだけを活かせる……!?」
「くそっ……悔しいが、理にかなってやがる……!」
「双方のプライドを立てつつ、最高品質の成果物を納期内に納める。これが我々の目指す『合意形成』です」
修平はスーツの袖を力強く捲り上げた。
「さあ皆さん! 互いの技術を競い合うのは終わりです。これからは『最高の橋を作り上げるチーム』として、共同作業に入りましょう!」
「「おっしゃあぁぁ!!」」
さっきまでの対立が嘘のように、現場に一体感が生まれた。
エルフの木工とドワーフの石工、そして源さんのプロデュースが完璧に噛み合い、作業は驚異的なスピードで進み始めた。
現場の対立を解消し、互いの利点を掛け合わせる。
社畜のネゴシエーション術が、異世界の異なる種族の心を見事に一つに束ねたのだった。
第8話をお読みいただきありがとうございました!
エルフとドワーフの縄張り争いを見事な「合意形成(落としどころ)」で解決した修平。
次回、第9話は【魔王軍幹部「納期厳守の刺客」】をお届けします!
橋の復旧作業が佳境を迎える中、ついに魔王軍の刺客が襲来!
猪突猛進な強敵に対し、修平が仕掛ける「工程遅延」の罠とは……!?




