第7話:気難しい領主と「名刺交換」
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ここから第2章【現場主義と「根回し」外交】が開幕します!
第7話は、近隣の町で出会う「偏屈な領主」とのタフな交渉劇。
魔法も剣も効かない権力者に対し、修平の「徹底的な根回し術」が火を噴きます!
廃村を当面の活動拠点(支社)として整えた修平たちは、本格的な資材と食料の補給、そして情報収集のため、徒歩で半日の場所にある交易都市『ロストック』へと向かった。
活気あふれる石畳の街並み。だが、街を治めるバルガス子爵の館を訪れた修平たちを待ち受けていたのは、極めて冷淡な対応だった。
「――なんだと? 異世界の人間だと?」
豪華な執務室の椅子に深々と腰掛けたバルガス子爵は、贅沢な装飾が施されたパイプをくゆらせながら、鼻で笑った。
「失せろ、怪しい流れ者め。魔王軍の脅威で我が領地も手一杯なのだ。身元の怪しい者どもに支援や物資を回す余裕など一銅貨たりとも存在せん」
門前払い――ビジネスの現場で言えば「新規飛び込み営業での即塩対応」である。
「くっ……! 私たちが怪しい者でないことは、この魔物の素材を見ればわかるはずだ!」
瑞穂が腰の刀に手をかけようとし、部屋に緊張が走る。子爵の護衛兵たちが一斉に槍を構えた。
(待て待て、ここで感情的になったら契約成立(合意形成)は永遠に不可能だ……!)
修平は即座に瑞穂の前に割り込み、完璧な角度の四十・五度でおじぎをした。
「大変失礼いたしました、バルガス子爵閣下。突然の訪問でご不快な思いをさせたことを深くお詫び申し上げます」
「チッ、口先だけの男か……」
「いえ、決して口先だけではございません。本日は『支援のお願い』に伺ったのではなく、閣下の抱えていらっしゃる『課題の解決策』をご提案に参りました」
「課題の解決だと……?」
子爵が怪訝そうに眉をひそめる。修平は事前に街の市場で集めていた情報を頭の中で素早く整理し、メモ帳を広げた。
「閣下。この街は現在、北方の街道が魔物によって封鎖され、物流の約四十パーセントが停滞しておりますね? その結果、市場の食糧価格が高騰し、領民の不満が高まっているはずです」
「……な、なぜそれを……」
「我々のパーティには、優秀な元自衛官の武人と、腕利きの建築技師(大工)がおります。我々が街道の魔物を駆除し、さらに崩落した街道の橋を三日以内に完全復旧させます」
修平は自信に満ちた笑みを浮かべ、人差し指を立てた。
「報酬は金銭ではなく、我々の拠点への定期的な食料支給と『通行許可証』のみで結構です。閣下にとっては『ノーリスクで物流のボトルネックが解消される』計算になりますが……いかがでしょうか?」
「なに……? 三日で橋を治し、街道を解放だと……!?」
子爵が立ち上がった。本来なら何ヶ月もかかり、膨大な予算が必要な事業だ。
それをわずかな食料と紙切れ一枚の許可証で請け負うという提案は、領主にとって「あまりにも都合の良い旨い話」だった。
「……本当だな? もし嘘だったら投獄するぞ!」
「もちろんでございます。契約成立ですね」
修平はスーツのポケットから手作りの名刺(羊皮紙に丁寧な文字で名と役職を書いたもの)を取り出し、両手で恭しく差し出した。
「【魔王討伐プロジェクト】代表、西岡修平と申します。今後とも末永く、ビジネスパートナーとしてよろしくお願い申し上げます」
子爵は毒気を抜かれたように名刺を受け取り、ただ呆然と頷くしかなかった。
館を出た後、瑞穂が感嘆の声を漏らした。
「見事な交渉(根回し)だったな、西岡殿……! 一瞬で相手の利害を見抜き、有利な条件を引き出すとは」
「営業の基本ですよ」
修平はネクタイを整えながら、爽やかに笑った。
「『自分たちの欲しいもの』を要求する前に、『相手が困っていること』を解決して貸しを作る。これが大人の交渉術です。さあ皆さん、納期は三日です! 現場へ向かいましょう!」
異世界の貴族すらも手玉に取る、35歳社畜の「圧倒的プレゼン力」が、新たな道を開いた瞬間だった。
第7話をお読みいただきありがとうございました!
自らの能力と相手のニーズを完璧に把握し、一見不利な状況から「WIN-WINの契約」を勝ち取った修平。
次回、第8話は【異種族間の「合意形成」】をお届けします!
橋の復旧現場で出会ったのは、犬猿の仲であるエルフとドワーフ。
対立する二つの種族を、修平の「落としどころ」を探す合意形成術がまとめ上げる……!?




