第5話:社畜の真骨頂「ストレス耐性」
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第5話は、劣悪な環境と疲労が仲間たちを襲うエピソードです。
異世界の過酷な現場で、月100時間残業を生き抜いた修平の「真の能力」が試されます!
地下遺跡に足を踏み入れてから、丸一日が経過していた。
「……はぁ、疲れた……。足が重いよ……」
「くそっ、ジメジメしてて腰が痛くなりやがる。風呂に入りてぇな……」
暗い通路を歩くレンの足取りは重く、ベテラン大工の源さんすらも愚痴をこぼし始めていた。
元自衛官の瑞穂も、気丈に振る舞ってはいるものの、眉間に刻まれた深い皺が極限の疲労を物語っている。
見知らぬ異世界、いつ襲ってくるか分からない恐怖、湿気と硬い岩肌での不十分な睡眠。
どれだけ役割分担を整えても、人間である以上「メンタルの摩耗」だけは避けられない。
パーティ全体に、重苦しい空気が漂い始めていた。
だが――ただ一人、西岡修平だけは違っていた。
「……ふむ。照明用の苔の密度が上がってきたな。出口が近づいているか、あるいは地下水脈が近いか……」
修平の顔には、疲労の色こそあれど、パニックや絶望のの色は一切なかった。
それどころか、彼の足取りは一定のテンポを保ち、視線は鋭く周囲の環境を分析し続けている。
瑞穂が不思議そうに修平へ問いかけた。
「西岡殿……失礼だが、君は恐怖や疲労を感じないのか? 私は自衛隊の訓練で厳しい環境には慣れているはずだが、それでもこの先行きの見えない状況は胃がキリキリする……」
「あはは、そんなわけないでしょう。私だって足はパンパンですし、ふかふかのベッドが恋しいですよ」
修平は苦笑しながら、ネクタイをクイと直した。
「ただ……私にとってこの状況は『繁忙期の決算期』に比べれば、まだマシなんです」
「け、決算期……?」
レンが呆然と尋ねる。
「ええ。理不尽な納期遅延、突如として仕様変更を迫るクライアント、上司からの怒号、鳴り止まない電話、そして三日連続の徹夜……。あの極限状態に比べれば、『モンスターが出る』『出口を探す』というタスクは、条件が非常にシンプルで分かりやすい」
修平はポンと自分の胸を叩いた。
「会社員を十五年やっているとね、自然と身につくんです。自分の感情と課題を分離する『ストレス耐性』という技能が。今ここで落ち込んでも、状況は何一つ改善しませんから」
「感情と課題の分離……」
瑞穂はその言葉を噛みしめるように呟き、目を見開いた。
過酷な環境で試されるのは、腕力や魔法力だけではない。
「理不尽な状況を受け入れ、パニックを起こさずに淡々と目の前の仕事を処理するメンタル」――それこそが、社畜・西岡修平が長年かけて鍛え上げた最強のスキルだったのだ。
「さあ皆さん、あと三十分歩いたら『十五分の定期休憩』に入ります」
修平はポケットからカロリーメイトを取り出し、三人に小さく割って手渡した。
「ブドウ糖の補給です。不安になるのは脳のエネルギーが切れている証拠ですよ。大丈夫です、私が組んだ工程表に遅れは生じていません。必ず全員で脱出します」
修平のブレない声と、自信に満ちた(というより社畜慣れした)笑顔。
その圧倒的な安心感に、挫けかけていた三人の心に再び明るい灯がともった。
「……ハハ、西岡さんには敵わないな。高校生のボクが弱音吐いてちゃダメだよね!」
「おうよ! 現場監督がどっしり構えてくれてんだ、職人が日怯んでどうする!」
「ふっ……頼もしいリーダーだな。ついていくよ、西岡殿」
極限状態のチームを支えたのは、剣でも魔法でもなく、泥臭いビジネスの現場で培われた「一人の男の鋼のメンタル」だった。
そしてその直後――通路の先から、冷たい風と共に「外の光」が差し込んできたのだった。
第5話をお読みいただきありがとうございました!
月100時間残業の経験からくる圧倒的なストレス耐性で、チームのメンタルを救った修平。
次回、第6話は【最初の拠点とプロジェクト発足】をお届けします!
ついに地下洞窟を抜け出した修平たちを待ち受ける異世界の現実とは……?




