第11話:進捗報告会
お読みいただきありがとうございます!
第11話は、定期的に行われるチームの「進捗報告会(振り返り)」のエピソードです。
ただ戦うだけでなく、お互いの課題と成長を可視化する修平流の「KPTフレームワーク」が、仲間たちの絆をさらに強固にします!
拠点として定着した廃村のミーティングルーム(元・村長の家)
手作りの木製テーブルの上には、葵が淹れてくれた香ばしい野草茶と、源さんが焼いた素朴な乾燥パンが並んでいた。
「よし、今週の『KPT振り返り会議』を始める」
修平がホワイトボード代わりに設置した平らな石板に、炭で大きく三つの文字を書き込んだ。
「けーぴーてぃー……? 西岡さん、それは何ですか?」
加入したばかりの葵が首を傾げる。
「ビジネスでよく使われる分析手法ですよ」
修平は炭をクルリと指で回しながら説明した。
「KはKeep(良かったこと・今後も継続すること)
PはProblem(問題点・課題)
TはTry(次に向けて挑戦すること)
感情論で反省するのではなく、事実ベースで現状を可視化し、次の改善につなげるための会議です」
「ほう……単なる反省会とは違うのだな」
瑞穂が興味深そうに身を乗り出す。
「では、まずKeepから。今週は葵さんの加入により、パーティの負傷リスクがゼロになりました。また、源さんの拠点補強により生活水準が大幅に向上。レン君の火魔法のコントロールも精度が上がっています」
「へへっ、ボク、火加減の調節ができるようになったんだよ!」
レンが誇らしげに胸を張る。
「次にProblem――課題です。瑞穂さん、前線の感触はどうですか?」
「うむ……」瑞穂は顎に手を当て、真剣な表情になった。
「魔王軍の幹部を退けたとはいえ、敵の数は圧倒的だ。私の長剣一本では、多対一の混戦になった際の抑止力が足りない」
「なるほど。源さんは?」
「俺の体力は問題ねぇが、今の資材じゃあ防具の強度が足りねぇ。瑞穂ちゃんやレン坊を守る盾や鎧の鋳造技術が欲しいところだな」
「貴重な意見をありがとうございます」
修平は石板の「Problem」の欄に素早くメモを書き留めていく。
「最後にTry――今後の具体的なアクションプランです。
第一に、瑞穂さんの負担を減らすため、源さんと協力して『簡易防壁』を可働式にし、集団戦の地形をこちらでコントロールする。
第二に、葵さんのMP消費を抑えるため、現地で手に入る薬草の調合知識をデータ化する。
第三に――魔王城への進撃ルート開拓のため、前人未到の危険地帯『暗黒の森』の事前調査に入ります」
明確な課題の抽出と、それに対する具体的で無理のない解決策。
自分たちの成長が数字と事実で可視化され、仲間たちの表情に確固たる自信と笑顔が戻っていく。
「……すごいです、西岡さん」
葵が感銘を受けたように目を輝かせた。
「私、前の病院では『もっと要領よくやれ』って怒られてばかりで……
でも、こうして課題を具体的に示してもらえると、自分が何をすればいいのかすごく分かります!」
「チームの失敗は個人の責任ではなく、『仕組み(工程)』の責任ですから。個人を責めても生産性は上がりません」
修平は温かいお茶を一口飲み、満足そうに頷いた。
「皆さんが日々成長してくれているおかげで、プロジェクトは予定以上の進捗(進み具合)を見せています。この調子で、一つずつ課題をクリアしていきましょう」
「「「おおっ!!」」」
ただ突撃するだけの冒険者集団ではない。
失敗を学びに変え、常に組織として進化し続ける「最強のプロジェクトチーム」が、ここに完成しつつあった。
第11話をお読みいただきありがとうございました!
ビジネスの手法「KPT」を取り入れ、チームの結束と成長をさらに確実なものとした修平たち。
次回、第12話は【魔王城へのルート開拓】をお届けします!
前人未到と言われる極悪な難所「暗黒の森」。
危険に満ちた樹海を前に、修平の「徹底的なリスク管理(事前調査)」が冴え渡る……!




