第9話「戻ってこなかった日常」
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「…ていうことがあったんだ」
「なるほど、理解できないな」
俺と神龍寺は大学の食堂でランチタイミーをしていた。話の種というか、話の外来種である先日の件を話題にしていたのだが、神龍寺にしては理解が遅いな。この大黒道場編の説明が足りないか?まだ俺の熱量が伝わらないか?もっと武勇伝を言ってあげて!
「いや正確には理解はしているが理解できないってところかな?」
んー難しいこと言い始めたぞ。俺が君で俺が俺でみたいな?あれそうなると俺が二人いるのか?
久しぶりに、でもないが少しの間会えなかったからか、この会話に居心地の良さを感じる。
「とにかく、今回君は少し無茶をしすぎだ。僕と一緒に除霊をしてきた経験はあるかもしれないが、本当に危険な霊もいるんだ。あまり心配させないでくれ…」
「いや…ごめん」
普段無表情な神龍寺が少し心配そうに俺を覗き込んでくる。不謹慎だが可愛いと思ってしまった。
「でも僕無しで除霊をできたのは本当にすごいことだよ、本来は僕宛の依頼だったみたいだしね。そうだ何か一つ君にご褒美をあげようか?」
ご褒美!?まさか何でもいいってやつか!!
「おっと、何でもいいとは言っていないよ。エッチなことは禁止だ」
一瞬で真顔になる神龍寺。目がガチだ…それでも、それでも俺は!!
「神龍寺!ご褒美として膝枕を要求する!異論は認めない!」
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「んー、最近は霊剣を枕にしてたからな。柔らかめの素材がより心地よく感じる」
午後より授業は休講のため、サークル以外は活動がない。よって空き教室も出てくるわけで、俺はそこで遠慮なく食後の昼寝をしていた。神龍寺の太腿で。
ふむ神龍寺の膝枕たまらん。少しゴリ押しだが、何とか膝枕に持ち込めたぞ。
「誰もいないとはいえ恥ずかしいな…」
「むにゃむにゃ」
「なあ、君はいつまでこうしているつもりだい?」
「むにゃむにゃ」
「君、何を!?」
俺は寝ぼけて寝返りをしているだけだ、うつ伏せ状態となり、神龍寺の太腿とゼロ距離睨めっこをしたとしてもそれは不可抗力となる。
「もう終わりだ!終わり!」
「うおっ」
神龍寺は強引に体を起こし、膝枕キャンセルをしてきた。ふぅ…柔らかくていい匂いだった。今夜は君に決めた!
「全く…君の太ももへの執着には薄々勘付いてたけどここまでとはね」
なぜ気づいた!?いつも太ももを隙あれば見てたからか?ストッキングを脱ぐことを以前に推したからか?全く心当たりがないな。
「ちょっと寝ぼけてたかも。なんかしちゃった?」
「とぼけているつもりかい?まあ嫌なわけじゃないんだ、ただ恥ずかしい…。今日はもう帰るよ、少し家を空けていたからね掃除がしたいんだ」
「お、おう」
神龍寺はそそくさと帰っていった。背中を向けながらも「また明日」と小さな声が聞こえた。
いつも面と向かって話す神龍寺にしては珍しい光景だった。
もう少しよく見ていたら気づけたかもしれない、神龍寺の頬が薄く淡く赤くなっていたことに。
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さて俺も帰るか…
「先輩!」
むっ!この声は!!!!!!
「四宮さんか…お疲れ、昨日は大変だったね」
「はい、お疲れ様です!昨日はありがとうございました!たまたま先輩をお見かけしたので声をかけちゃいました!」
ほうほう、これが後輩か。可愛いのぉ。
『言っておくが、この小娘学食にいた時からお前をつけていたぞ』
ほぇ?霊剣ちゃんどういうこと?
「ところで、先輩はこんなところで何をしていたんですか?」
ほぇほぇ?ことりんのキラキラした目から、ハイライトが消えていく。
「いや、空き教室でちょっと仮眠取ろうかなと…」
「先ほど女性の方がそそくさとこの教室から出て行きましたね」
「あ、ああ!そいつが神龍寺だよ!昨日の件を報告していたんだ!」
「え、あの人がですか?」
「そうそう!今度一度道場に行って他にも霊が残留してないか見た方がいいらしいよ。強い霊がいた場所はパワースポット的な?そんな感じらしいから」
「そ、そうなんですね。挨拶しておけばよかったです」
ふぅ、ごまかせたな。膝枕案件がバレてしまうところだった。
『ちなみにだが、貴様が主に膝枕というか不埒なことをしている時も見ていたぞこやつは』
えぇ…霊剣ちゃんそれ先言ってよ。いや聞いても何もできんが。
「ところで先輩と神龍寺さんはなぜ空き教室まで来たのですか?午後は休講なのに?」
俺はその後、目が全く笑っていないことりんに誘導尋問を受けるのだった。




