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僕の隣にいたのは、たぶん生きていない人  作者: 楽五郎


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第7話「黒くてテカテカ」

 俺は大黒道場の師範、大黒大(ダイコクダイ)略してだいだいに圧力質問を受けた後、ようやく本題に入る事ができた。


「深夜の道場に霊が出るようになった?」


「ええ、今年の4月から急に…。ここには寮もありますので住み込みの人間が道場や敷地から何やらうめき声などを聞いたみたいで…。それで現場に行くといるみたいなんだ」


「いるとは一体何が?」


「黒くてテカテカした霊が」


「はい?」


 黒くてテカテカした霊?霊ってテカテカするの?何を言ってるんだこのガチムチ師範は…


「あの、それって本当に霊なんですか?」


「間違いない!私も見たんだ!あれは間違いなく人型の黒くてテカテカだった!そして、陰から見ていると消えるんだ。あれは人間ではない」


 うーん、なんか気持ち悪いなぁその霊


「あの、近づいて顔とか見なかったんですか?」


「霊かもしれないだろ!?物理攻撃は効かないじゃないか!」


「まぁ、霊だったら確かに…。一瞬怖いのかなって思っちゃいましたよ、ハハハ…」


「………怖いわけないだろ」


 ギロッと睨む師範。間があったしこれ図星だな。ていうかその顔見せれば霊も来なくなるんじゃね?貴方の顔見せればいなくなりますよって言って帰れねえかなぁ。


「昔からある道場ですし、何かあるかもしれませんね。明日にでも友達のプロの霊媒師にお伝えしておきます。俺も除霊を手伝っているので、友達の腕が確かな事は保証しますよ」


 よし、これでいいな。さ、帰ろ帰ろ。


「待て!たくみゃ君」


 おい、テメェ、その呼び方止めろよ。いわすぞ?


「はひぃ、なんでしょうか?」


「まぁ、その友達に伝えるにしても、ここに泊まって君も一度見た方が詳細に伝えられるのではないか?除霊の手伝いもしているし、その知見で何か新しく情報が得られるかもしれない」


 いえ、全くその必要はございません。


「いえいえ、俺では何もできませんので…手伝いと言っても雑用みたいなもんですよ」


「いいから!今日はもう遅い、泊まりたまえ」


 まだ夕方だぞ


「そういえば、今日は門下生達が実家に一斉帰宅の日ですもんね」


 ことりんが急に思い出したようにそう言うとビクッとする師範。

 こいつ今日は一人でこの広い敷地に泊まるのか。ざまぁ


「たくみゃ君、泊まっていきなさい」


「先輩!私も泊まりますから、一緒に調査しましょう!」


 なんでこんなノリノリなのか、これが体育会系のノリか。

 ちなみに今俺は師範に肩を掴まれ、強力な圧迫感を味わっている。

 これだから体育会系は…俺はもっと最初の時点でこの道場に来ることを断っておけばよかったと、いまさらながら思っていた。


---


 深夜まで時間があるので、ことりんに道場を案内してもらっているが、本当に広いなここは。


「ここが歴代の師範や門下生の賞状やトロフィーを置いている部屋ですよ」


「へぇぇ、多すぎぃ!」


 見渡す限りショーケースや壁に掛けてある賞状などすごい量だ。

 そして一番目を引いたのは壁の一番高い所に、綺麗に並べてある人の写真だ。


「写真が気になりますか?これは歴代の師範達の写真なんです、大黒家の」


 だと思った、ガチムチばっか。

 その中でも恐らく初代師範代であろう人間はレベルが違う。異様な筋肉に血管、そして色黒の体が重厚感を際立たせている。

 正直やりすぎてきしょい。


「四宮さんはこうはならない…よね?」


「私は鍛えてるんですけど見た目にあんまりでないんですよね。でも力はついているので問題ないですよ!」


 よかった、この純真な可愛らしい顔にガチムチはマジでミスマッチだからな。


「そろそろ夜中ですね、少し寝た方がいいと思います」


「だね、俺は寮の客間で寝るみたいだから」


「私も隣の部屋にいますので、何かあったら呼んでください!」


 そうして俺たちは深夜になるまで、黒くてテカテカの霊を待つのであった。


---


 何といっても一に睡眠、二に睡眠、三に睡眠ですよね


「うーん、むにゃむにゃ、神龍寺ぃ太ももで俺の顔を挟んでくれ…」


『おい』


 なんだ?誰かに呼ばれているような。俺はまだ寝るんだ、明日にしてくれ。


『あほか、深夜に調査するのではなかったか』


 それは黒くてテカテカが出たらね…


『いいから起きろ!』


 痛っ!ビリビリするぅ…。あれ、ここはいつぞやの白い世界!


『ようやく意識がはっきりしたか』


 目の前には先ほど学校で寝ている時に現れた霊剣ちゃんだ!


『ちゃん…まあいい。それどころではない、この道場にかなり強い霊力を持った霊がいる』


「え?黒くてテカテカ?」


『わからん、しかし深夜に近づくほど強くなっている。これは…』


「あーやっぱなんかいるのか。今日はやり過ごして、明日神龍寺に来てもらおう」


『そう上手くいくかの。昨日までがどうだったか知らんが、今日は攻撃的な気配を感じる』


 また戦う系?この霊剣ちゃんで何とかできないのかな?


『私の使い手がへっぽこでなければ何とかなるがのう』


 うわっ、心臓にくるわ。ま、部屋に籠っていれば大丈夫でしょ。


 ドゴォンン!ドゴォンン!


 すさまじい爆音、近所迷惑レベルである


「うん、気のせい」


『おい』


「先輩!先輩!起きてますか!」


 白い世界の外から声が聞こえてきた、そこで俺は現実世界へと引き戻され、部屋の扉からドンドン叩く音がする


「いや、寝てるよ」


 起こし方には指導が必要だな、部屋にこっそり入って、馬乗りになって優しく起こしてもらわないと


 バキャ!「先輩、良かった起きてたんですね」


 普通に扉を開ける感覚で鍵を破壊しただと!!もうやだこの道場…


「この音は道場からか…行くしかないかなぁ…」


「行きましょう!それに師範も見当たらないんです…心配ですね」


 全く心配ではないが、さすがに無視できんか。


「よし、四宮さん。様子見だけで行こう、俺たちはプロじゃない情報だけ持ち帰るんだ」


「押忍!」


 この気迫、隠密には不向きだな


---


 俺たちは異様な音のする道場へことりんと向かい、入口から中を覗き込む事にした。

 月明りで照らされた道場の中には、神聖な雰囲気のど真ん中にそれをぶち壊すガチムチが二人いた。


「この程度か!私が追い求めているのは貴様程度の雑魚ではない!どこだ、強者は」


「うう…」


 地面に倒れている師範とその近くに立っている、黒くてテカテカしたガチムチがそこにいた。

 なんて筋肉だ、月明りがオーバースペックすぎる肥大化した筋肉を無駄に照らす。

 徐々に明かりが黒いガチムチの全体を照らす、この顔どこかで…いやそれよりもこいつブーメランパンツ1枚だぞ!


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 ことりんが急激な悲鳴を上げた、男の裸体に免疫がないのか、ガチムチブーメランだからなのか。前者であって欲しい!


「ん??誰だ、強者か?」


 当然気づかれる。ここは変にこそこそしない方がいいな、何かあったら頼むよ霊剣ちゃん!


「すみません、夜中なので静かにしてもらえませんか」


 俺は無難なファーストコミュニケーションを試みる、まあどうせ話が通じないんだろうなと思いながらも、わずかな希望にかけるのだった。


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