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僕の隣にいたのは、たぶん生きていない人  作者: 楽五郎


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第6話「ようこそ!大黒道場へ!」

 道場に束の間の静寂。

 ついに出会ってしまった二人、俺はこのランニング少女に金を返さなければならない。


「えっと、ポカリ代だよね?きっとスーパーで買ったから100円くらいかな?自販機で150円とかじゃないよね?」


 財布に100円しかない俺は一筋の望みにかけた…


「は、はい。スーパーで買いだめしました。じゃなくて!神龍寺さん…じゃないですよね。そのご相談があってお呼びしたのですが…」


 この子が神龍寺に用事がある後輩か…。


「そっか、でも神龍寺は今日いないぜ、明日まで待ってくれよな!じゃ!」


「えぇ!?待ってください!とりあえずお話だけでも!」


 これ俺が相談を一旦聞く感じ?まぁ、可愛いし許可する。


「まぁ話だけなら…話だけならね」


 パァッと笑顔になる後輩、やはり陽の者か。

 ま、明日神龍寺に伝えておけばいいだろう。


「ありがとうございます!先輩!」


 え?今なんと…?


「え?今なんと…?」


「先輩ありがとうございま…す?」


「俺の名前は田口拓実!大学生2年生!」


「田口先輩ですね、私は四宮小鳥(しのみやことり)って言います!1年生です!よろしくお願いします!」


 田口先輩…!いい、いいよぉ!ことりんいいね!


「四宮さんか、よろしくね」


 初後輩ゲットだぜ!でも後輩はそもそも後輩で、他の後輩も後輩だから、初後輩ではないか?でも何となく初後輩な気がする…


「では、行きましょうか!」


 え?


「話を聞くだけって…」


「はい!実際に来て頂いた方が話がわかりやすいと思います!」


 違う、そうじゃない!話を聞くとは、ここで話を聞くという事だ!


「では、行きましょうか!」


 それさっき聞いた!え、なにこの娘、すごい力なんだけど!ちょっとちょっと、俺男なのに軽々と引きずられてるよ!

 信じられない力で俺は引きずられながら目的の場所(?)へ向かわされるのだった。


---


 それなりに歩かされ、もとい引きずられながらどうやら目的の場所に…ってなんだこの長い階段!神社の前によくある石の階段だ。というかここ俺の家の近くだよな、こんなところがあったのか。


「この石段を登れば空手道場があるんです!」


「空手道場?」


「はい!私空手家なんです!」


 まぁ大学の道場で待ち合わせ場所にしてたし、何かしらやってるとは思ったが。どうりで力強いわけだ。


「あのさ、この階段登るの?ちょっと疲れそうだなーなんて」


「そうですか?じゃあ私おんぶしますね!」


「ほぇ?」


 俺の懐に素早く入り、目にも止まらぬ動きで普通におんぶされた。これはどちらかというと柔道じゃね?

 というかおんぶ恥ずかしぃよぉ…


「いきますよ…っ!」


「ふぁっ!」


 ひぃっ!と、飛んでる…うそ、10段抜かしぐらいしてるけど…風圧が、風圧がぁ!


「田口先輩を背負ってるとちょうどいい負荷ですねこれ!」


「あばばばばばばば」


 超高速階段昇りにより、ぐんぐん天へと近づいていく、俺は数度気を失ったが、即座に風圧で叩き起こされる。


「ラスト!」


 最後にジャンプ…した後にジャンプ!これって二段ジャンプ…!


「ふぅ、少しはトレーニングになったかな?ちょっと軽い?」


 いや、どちらかというと少し太ったから重いはず。それにしても情けねえや俺、足が震えてやがる、アトラクションだろこれ。薄々勘づいていたが、ことりん脳筋キャラ?


「ここが道場の敷地ですよ!すごくいいところなんです」


 おんぶアトラクションの消耗により、膝に手をついて呼吸を整えていた俺は、顔を上げた瞬間目の前に広がった光景に驚愕をした。

 ただそこに道場があるだけかと思ったが、広い敷地、庭、各種別棟、そしてその中心にでかい道場があった。


「すごいですよね!ここ!親戚の叔父さんがここの師範なんです」


「こりゃすごいな、というかこんな場所で神龍寺宛になんの話があるんだ?」


「それについては師範代から説明してもらいます。道場で待っていると思いますので」


 え、ことりんの悩みじゃないの?そう思うとやる気が大幅ダウンしたが、もはや後戻りできない、あの無駄に長い階段もあるし…。

 俺は憂鬱な気分のまま、道場へ向かうのであった。


---


 今俺は窮地に立たされている。

 道場の中に入った俺は、何故か筋骨隆々のガチムチ共に囲まれている。ことりんは道場にいなかった師範代を探してくると言ってどこか行くし…


「てめぇ、舐めてんのか?」


「はい?」


「はい?じゃねぇよカス!小鳥さんとどういう関係だって聞いてるだろ!?」


 いや、今初めて聞かれたけど。

 というか空手家ってこんなガラ悪いの?


「先輩と後輩ですぅ…」


「それだけで小鳥さんにおんぶしてもらえんのか?見てた奴がいるんだよ!あん!?」


「ひぃぃ!違います!あれは俺が階段に登る体力がないだけで!だから四宮さんにおんぶしてもらって…」


 言わせんなよ恥ずかしい…


「あの階段を登る体力がない…?マジかよこいつウケる(笑)」


 こいつ…ムカつくぅ!


「笑かすな笑かすな、もやし君(笑)」

「帰りは俺がおぶってやるならな(笑)」

「意外といいケツしてるな…」


 これイジメじゃないですか?道場の真ん中でガチムチ共に囲まれて、責められて、バカにされて…助けてよ神龍寺ぃ


「みんな何してるの?」


 救いの神ことりんの声!どうやら戻ってきてくれたみたいだな。


「四宮さん、いきなりこの人達に囲まれて、イジメられ――」

「入門希望者かなって思ってみんな興味が出たんです!」


 ぐっ、こいつ急に肩を組んできた。そして仲良くしてる風だが、とてつもない握力で肩を掴まれている。


「そうなんだ!でも違うの、例の事で相談に乗ってくれる人だよ」


「なんだぁ、みんな喜んでたのに〜」

「寮に空きあるか確認しに行くところでしたよ」

「こいつのケツを狙うチャンスは今しか…」


 こいつら二重人格なん?さっきまでただの柄の悪いヤンキーでしたけど!?


「こらこら、客人を困らせるなよ」


 ことりんの後ろからガチムチを上回るスーパーガチムチが出てきた。助かったぁ、見た目的にこの人が師範代だなこりゃ。


「初めまして、この大黒道場師範代の大黒(ダイコク) (ダイ)だ。よろしく頼む」


 ガチムチでイカついが、スポーツマンシップのありそうな人だな。笑顔で握手を求められた、スポーツなんてやってこなかったからこういうの憧れてたんだ!


「よろしくお願いします。俺は田口たくみゃぁぁぁ!」


 握手をする力が尋常ではない、いやまじで!


「たくみゃ君か!軟弱な名前だ!ところで小鳥とはどういう関係かな?」


 こいつもか…。神龍寺、俺明日お前に会えるかな?


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