第3話「vs変質者の霊」
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変質者の霊を探して三千里。
軽くググると、昭和から平成初期にかけてトレンチコートの下が裸の変態が日本にいたらしい。今も探せばいそうだが。
あの手の類は神龍寺にとって弱点のはずだ、心配になり電話をかけるが全く出ない。
まずいな、さっきの攻撃を受けたら神龍寺は…。
探し回っていると、売店に並んでいる神龍寺が見えた。
自販機ではなく、ここまで買いに行っていたのか。さっきの変態はいない、人が多いからだろうか。
安心したのもつかの間、急に出現したトレンチコートの変態が神龍寺のいる場所へ向かっていった。
「こんにちはお嬢さん、素敵なタイツですね。少々近くで拝見してもよろしいでしょうか」
「は?」
神龍寺に話しかけているが、ここからでは聞こえない。
とにかくあの攻撃が発動する前に知らせなくては!
「気をつけろ!そいつが例の変質者だ!」
普段は出さない大きな声で叫んだ。周りの人間も異常を察知したのか、トレンチコートの変態から距離を取り始めた。
やはり多くの人間が視えている、霊ではなく本物なのか。だがコイツ、情報通り神出鬼没なところがある。
「なるほどね、貴方はかなり未練か執着が強いようだ。けどそれは危険なこと、成仏できないのなら除霊させてもらうよ」
神龍寺が木で出来た精巧な短剣を取り出した。
あれは、ごくまれに戦闘タイプの霊を除霊させるときに使う短剣だ!なんでも神木から作られたもので、一流の除霊師が使えば強制的に除霊できるとか。
素早く短剣を変質者に刺し込むが、変質者は消えない。
「何!?」
珍しく狼狽える神龍寺。
「何か聖なる気を感じますね、その剣。しかしこのトレンチコートの前では無意味ですよ」
あのトレンチコート、まさかあの短剣をガードするのか!
以前に2段階進化した戦闘系の霊にも効いていたのに。
「貴女は大人しくその白タイツを私に見せればいいんですよ」
コートに手をかけた!来る、あの攻撃が!
「君に決めた!」
どこかで聞いたことのあるセリフと共にコートがオープンされる。
「やめろぉぉぉぉ!」
俺は神龍寺と変質者の間に入り、神龍寺の視界をふさいだ。そして目の前には先ほど見た光景が。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ、くぁwせdrftgyふじこlp!?」
2度目のダメージ、回数を重ねる毎に精神を侵食していく。
これは、何度も受けることはできないぞ。
「君!大丈夫かい!?」
「神龍寺見るな!精神をやられるぞ!」
「ほう、あれを2回受けてまだ立ちますか。存外ただの雑魚というわけでもなさそうですね」
いつの間にかコートを閉じている、常時解放はできないのか?
「くっ、一旦引いた方が良いね」
神龍寺が何かお札のようなものを数枚投げる。お札がバラバラに変質者の周りに浮遊する、そしてお札同士が光の糸みたいなもので繋がり、変質者を拘束した。
「逃げるよ、恐らく長くはもたない」
「え、あ…」
情けない声を出しながら神龍寺に手を引かれる俺、おぼつかない足どりで逃げることしかできなかった。
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「あれはかなり具現化が強くなった霊だ」
アスレチックパークに逃げてきた俺たちだが、急に何かの漫画で聞いたような用語が神龍寺の口から出てきた。
「具現化?」
「そう、霊というのは未練や何かの執着の度合いによって具現化のレベルが違う。今回のように具現化が強い、色の濃い霊は多くの人間に視えるんだよ」
「なるほ、そういえば俺も霊によっては薄かったり濃く視えたり色々だな」
「僕のような霊感が強い人間は全部はっきり視えるんだよ。君は僕と、そして霊との関わりが多くなって後天的に視えるようになったパターンだ」
そうなのか、言われてみれば神龍寺と最初に仕事をしていた時は何も視えなかったので、痛い子だと思ってほほえましく後ろから見ていたな。
「どうすればいいんだ?あの剣が効いていなかったけど」
「コートの下を狙うしかない、それもこの剣で」
それって、つまり…
「僕は見えなかったんだが、あのコートの下はどうなっているんだい?君はかなりショックを受けていたけど」
「神龍寺は絶対見るな!あれは危険だ!」
あれを、ブツをこの純真な神龍寺に見せる訳にはいかない。
神龍寺が神龍寺でなくなってしまう、そんな気がした。
「しかし、この短剣をヤツに刺さなくてはならないんだ」
「じゃあ…俺が、やる」
「君が?でももう君は…」
「俺なら大丈夫さ、なあ神龍寺、俺の事が信用できないか?」
「君のことは信頼している、いつも僕のそばにいてくれたからね。ただ霊媒師としては素人だろ?この剣も使いこなせるか…」
「それでも俺がやる、これは俺の使命なんだ」
神龍寺を汚させはしない、きっと今まで通りに太ももを素直に見れなくなるからだ。
「神龍寺、頼みがある。もし上手くいった時はそのストッキングを脱いでほしい」
「そんなに僕の健康が気になるのかい?ストッキング程度で血行が悪くなるわけないと思うけど」
「頼む…」
「わかったよ、素直に心配してくれているのは嬉しいしね。ただ僕も傍観者でいるつもりはないよ、スキは僕が作る、いいね?」
「ああ!行こう!」
俺のやる気ボルテージが最大となった。
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俺たちは変質者を探していた。
あの変質者は神龍寺に執着していたようにも感じたので、不意に襲われるのではなく、こちらから出向こうというわけだ。
変質者霊は人気のないミラーアスレチックのエリアにいた。
「お待ちしていましたよ。それにしてもまんまと来てくれるとは、あなた達は戦いというものをわかっていない。いいですか能力があればいいだけではないんです。フィールドを最大限利用する、それが真の強者というものです」
コートに手をかけたやつから目を逸らそうとした俺たち、だがここはあらゆる角度にミラーがある
「神龍寺!」
俺は神龍寺が目を逸らした先に体を割り込ませた。そこにはミラーに映ったやつの姿が。
「うっ!かはっ!」
「君!」
「大丈夫だ…それよりも」
「ああ、追い詰められたのは貴方の方だ」
神龍寺がポケットから輝くお札を取り出して、変質者霊に投げつけた。
「む、これは」
変質者は危険を感じ取ったのか、コートを仕舞う前に札から逃げ出した。
だが甘い!俺たちの狙い通りだ!
お札は激しく発光し、俺たちは目をつぶった。だが変質者霊は札を見ていないもののミラーに反射した光を見てしまう。
「ぬぁぁぁぁぁぁ!」
今だ!目を開けてこの剣をやつに!
「くらえぇぇぇぇ!」
半開きのコートの隙間から見えるやつのブツを直視しながら剣を突き刺す。
「ばかなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
霊剣を刺された変質者霊と、やつのブツを直視して精神的なダメージを受けた俺の悲鳴が重なる。
そして、剣を刺された変質者霊が薄く、そして粒子状になって少しずつ消えていく。
「まさか、小童ごときにやられるとはな…」
「はぁはぁ…お前は誘い込まれたんだよここに。おかしいと思わなかったのか、このエリアだけ人がいないことに」
「なるほど、あえて私の有利なエリアを開けて、探しているフリをしていたわけですか…」
どうやら観念したらしい、トレンチコートを閉じてスッキリした顔をしていた。
「私はただストッキングを近くで見たかった。亡き妻がいつも履いていた純白のストッキング。ストッキングを見るたびにあの頃が思い出せそうで、ただそれだけだった…」
こいつ…
「しかし君のストッキング姿は美しすぎた、複数のミラー越しに見える沢山のストッキングは妻をも凌駕した!」
こいつ!
「さらばだ、そしてありがとう」
そう言って粒子状に消えていった変質者霊。
本当に迷惑な奴だった、天国の妻はこいつの所業をどう思っているのだろうか。
「終わったね、今回も結局戦いになってしまった。それに君がこんなにも力を貸してくれたのは初めてだね」
「まあな、あいつは明らかに神龍寺と相性が悪かったし」
「ありがとう、やっぱり君は僕の…大切な親友だね」
正直照れる、今までは友達と言っていたはずだ。少し頬を染めた神龍寺が初めて俺の事を親友と言ってくれた。
「さっきの霊、前までは視える人間がそこまで多くなかったと聞いている。きっと強い目的を見つけて具現化が強くなったんだろうね」
「そうなのか」
神龍寺の顔が真剣になる。
「霊は未練・執着が強いと具現化が強くなる。そして強すぎる霊は生きていると周りに誤認させるほどになるんだ。それこそ一般社会で普通に過ごすほどにね」
何それ怖い。でも確かにさっきのやつは事前に情報がなければほとんど霊だとわからなかった。
「じゃあ、今まで俺が出会った人間の中にもいるのかな」
「いたかもしれない、でも僕は未練・執着を無くして欲しいと思っている。そのまま生きているのは辛いから…」
神龍寺…
「少し暗い話になったかな。さあそろそろ夕刻だね、少しだけ遊ぶ時間もありそうだけど、どうだい君は?」
無表情のようだが、照れている。俺にはわかる親友だからな。
俺の返事は決まっていた。




