交渉にかける!
いよいよアダムがヴィスタ家の管轄地域に迫っている!まだ準備が十分でないのに戦わないといけないなんて、王国軍はバックス公国の軍を警戒しなくてはいけないからせめてメイルが兵を連れてきてくれればと思っていた中、姉上が時間稼ぎの交渉を願い出た。
「ちょ、ちょっと待ってください!兄上と交渉だなんて、今から何を交渉するっていうんですか?」
「時間稼ぎの為の交渉よ、確かにこのままじゃヴィスタ家の屋敷ごと焼かれてしまうけど、メイルが兵を連れてくれば対抗できるんでしょう?」
「それはそうなんですが、どんな交渉を兄上とするんですか?」
「お兄様の目的は私なんでしょう?それならば私の身柄を引き渡す代わりにヴィスタ家やお母様やダリーとチップを見逃す事、そしてお父様の開放を飲んでもらうのよ」
ずいぶん大きく出たが全てをアダムに飲ますのは無理なんじゃないのか?ヴィスタ家や母上達はともかく、父上を素直に開放するとは思えないな。
「あの、お言葉ですがモニカ様、交渉というのはこちらも手札、つまりなにかしらの強みを持っている事が前提になります。今モニカ様はアダム様より追い詰められている状況、強く出てもこちらの要求を一部でも飲むかどうか……」
「私もそれは百も承知よ、だけどもうヴィスタ家の戦力ではこれ以上迎撃態勢を整えられないし、あなた達だってお兄様に対抗するのは難しいはずよ」
「しかし、まずはアダム様が交渉に応じるかどうかです!否応なしに攻めてくるかもしれません」
「そうです、ヴィスタ家や騎士団から使者を送っても切り捨てられたらその時点で交渉は無理です!」
やはりこの方法は無理だ!無駄な犠牲を出すくらいならば姉上を守る為に全力で戦うしかない、アダムはどうにか俺が抑えておけば……。
「その使者は私がやるわ!」
「母上!」
「クレア様!」
「ごめんなさい、お母様も私もただあなた達に守られてばかりでいるのは耐えられなくて、この交渉も私とお母様で考えた方法よ」
ちょ、ちょっと待ってくれ!使者を母上だなんて、みすみすアダムに差し出すようなものだ。
「お待ちください、いくらなんでも母上を使者にするのは危険すぎます!みすみす兄上に引き渡すようなものです!」
「これも賭けなのよジュン……お父様をまだ生かしているアダムならば簡単に私を斬る事はしないと思うし……」
「母上……それならばジュンも護衛として参ります、交渉とはいえ護衛は必要でしょう」
「ジュン……ありがとう……ごめんなさい……」
姉上も母上も交渉という名の戦いに赴こうとしている。時間稼ぎが目的だが、とにかく賭けるしかないな。




