迫るアダム
いよいよ兄アダムは兵を指揮してヴィスタ家を目指し、姉であるモニカの拘束を目指そうとする。また王国周辺にバックス公国の軍が展開されており、王国軍はそちらを警戒せざるを得なくなったうえ、メイルがまだ兵を集めきれてなく俺達と合流していない状況である。数的にも俺達はかなりの不利ななか、敵の指揮官がラオール家随一の兵であるアダムだ、まともにぶつかれば勝ち目はかなり薄い。
「ついに兄上がくるのか、ヴィスタ家の管轄地域までは入ったか?」
「いえ、こちらを目指しているには間違いありませんが、まだファブ家が設置した関所までは到着しておりません」
「これ以上守りは固められない、それぞれの担当配置につかせるよう急いでくれ!」
「はっ!」
俺は騎士に俺達騎士団の兵、そしてファブ家の兵をあらかじめ指定しておいた担当配置につかせるよう指示を出し、そんな中、ダンテが俺に尋ねてくる。
「いよいよ、アダム様との激突ですね、ジュン様、アダム様に対抗する策はありますか?」
「……ない、その気になれば兄上ならばヴィスタ家の屋敷ごと俺達を葬る事ができるからな」
「そうですね、だけどアダム様の目的はモニカ様の身柄を拘束することですから」
「ああ、父上が身柄を拘束されただけで、処刑されたという情報はないし、さすがにアダムも家族殺しの汚名を被るのは嫌なようだな」
後継者争いと言えば一見すると自分以外の家族は皆殺しというのがまず浮かびそうだ。もちろんそういったこともされてはいるが、今のアダムは理由をつけて父上を拘束し、今なおモニカの身柄を押さえようとしている。だがさすがにアダムも父や姉を殺すだけの大義名分はなく、そんなことをしてしまえば将兵や民の心は離れてしまう。
「汚名を被るのは嫌と言いますが、今回のアダム様はかなり無理な徴兵をしたようですよ、普通は領内に敵が深く入り込んでするような事を攻める側の自分達がやっているんですから、民の不満も相当なんじゃ」
「すでに多くの汚名を被っているとも言えるが、どうせ戦闘になればアダムが出てくる、どう防ぐか……」
「ジュン様、まともに戦えばヴィスタ家にも騎士団にも相当な被害は避けられませんし、何かメイル団長が来るまで時間を稼ぐ方法があれば……」
「うう……いったいどうすれば、王国軍はともかくせめてメイルだけでも来てくれたら……」
メイルがファブ家の兵を集めてこちらに戻ってくれば勝機はあるし、被害も抑えられるかもしれない、だけど今は数が足りないうえにもうそこまでアダム自身も迫っている。やはり俺がアダムと……。
「ジュン、時間を稼ぎたいのでしょう、それならばお兄様と交渉をしましょう!私が出るわ!」
モニカが交渉?だけどそれは危険だし、でも何か考えがあるのか?




