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4話 二人はラクシュミー 4

 ゴウッ!

 ゴウッ!

 っと、激しい風きり音とともに真っ赤な炎がヘビへと向かって飛んでくる。

 大ヘビの頭は炎に包まれ、たまらずわたしを取り落とした。

 ドンッ!

 と、タヌキが衝撃波を炎の飛んできたあたりに放ち、土煙が上がる。

 するとその場所から一瞬早く緑色の影が飛びあがり、空中から火の玉を打ち出した。

 火の玉はタヌキの足元に炸裂し、炎の壁ができる。

 緑の影は空中で一回転すると、倒れているわたしのそばにふわりと舞い降りた。

「だいじょうぶ? ぼたんちゃん……」

 やさしく手を差し伸べる彼女は

「……千代ちん……」

 だった。

 差し伸べられた腕の手首には真っ赤な丸い飾り布で覆われている。

 見上げると萌葱色でノースリーブのミニ丈の浴衣、という表現が果たして適切かどうか、それをベースに妙に立体感を増した胸元に、如意宝珠を埋め込んだ鳥を模したような飾りがついている。

 背中にはかわいらしい鳥の翼が天使のようについていた。

 千代ちんのトレードマークとも言える真っ赤な髪飾りはソフトボールほどの大きさにふくらみ、その先のツインテールはそれぞれ三つの束に分かれ逆立っている。

「ラクシュミー!」

 シンハもわたしの元へと駆け寄ってきた。

 まだ思うように立ち上がれないわたしに向かってシンハは前足をかざすと、何か呪文を唱え始めた。するとシンハの前足から何かあたたかな波動のようなものがわたしの体へと流れ込んできて痛みがだいぶうすらいでくる。

「ぼたんが文珠を取り戻してくれたおかげでだいぶ力が戻ってきているッハ」

「ありがとう、シンハ、千代ちん」

 まだふらつくがようやく何とか立ち上がる。

 目の前の炎の壁の向こうに見えるタヌキの影が大きくなった。

「来るわ、千代ちん」

 シンハを抱き上げながらわたしは言った。

 ドン!

 と大きな音が響くと炎の壁が吹き飛んだ。

 衝撃の余波は跳びのいてかわす。

「なるほど……空気を吸い込んで衝撃波をだすッハね……千代! あいつの回り全部を炎の壁でつつむッハ!」

「オッケー!」

 言うなり千代ちんは飛び上がり、空中からタヌキへ向けて手のひらから炎を打ち出す。

 シンハの言うとおりタヌキは炎の壁につつまれた。

「だめよそんなことしたって、さっきみたいに衝撃波で消されて終わりじゃない!」

「大丈夫、もうあいつは衝撃波を出せないっハ」

 自信満々のシンハだが、タヌキを見ると再びそのおなかを大きく膨らませようと……

 あれ、膨らまない? それどころかのどを押さえて苦しそうにしている。

 ついにタヌキはその大きな体をどうと横たえてしまった。

「炎の檻の中は空気が薄くなっているッハ。 おまけにせっかく吸った空気も熱くなっててタヌキののどを焼いたんだッハ。ぼたん、今がチャンスだッハ!」

「ようし」

 わたしは如意宝珠に手を触れると中からトゥインクルロッドをつかみ出す。

 くるりくるりと舞うように空中に魔方陣を描き出す。

 ようし気力充実! と、そのときわたしの上に影が落ちた。

 見上げるとさっきのヘビがいつの間にかわたしの頭上に大きな口を広げていた。

「ぼたんちゃん危ない!」

 千代ちんが大ダヌキのそばに駆け寄り、まるでサッカーボールを蹴るように蹴りつけた。

 タヌキはほんとのボールのようにやすやすと蹴り上げられる。

 そして、わたしを狙うヘビへとたたきつけられた。

 ヘビとタヌキはもつれるようにからまりあって地面へと落ちた。

 わたしは向きを変えるとトゥインクルロッドを2匹めがけて振り下ろす。

「ラクシュミー・トゥインクル・ファウンテンッ!」

 光の噴水が杖の先からほとばしり、二匹の体をつつむ。

『ダデェエェエエエェェェェナアァアァアァァアァーーーーーーーーーー!!!!!!』

 虹色にかがやく光の中からヘビとタヌキの絶叫があがる。

 その光が叫び声とともに小さくなる。

 そして完全に光が消えると、そこからシンハくらいの大きさのタヌキと、一メートルほどのアオダイショウがこそこそと藪の中へと逃げていった。

 シンハが二匹のいた辺りへと駆け寄る。

「お、四つも文珠があったッハ、そりゃ苦戦するはずだッハ……」

 と、つぶやいた。

「そうだあの人!」

 さっきまで一緒に戦っていた覆面の彼を探す。

 確かヘビに叩きつけられて動けなかったはず。

 しかし、彼の姿はどこにも見当たらなかった。

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