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4話 二人はラクシュミー 3

 吹き飛ばされた覆面の人は受身を取れず、アスファルトにしたたかに体を打ちつけた。

 その彼にむかってジャリッ、と歩みを進めるものがいる。

 体長3メートルはあろうかという熊? ……いやタヌキの化け物だ!

 タヌキはゆっくりと口を開き動けない彼へと狙いを定める。

「たぁーーーーーあぁ!」

 そのタヌキに向かい横からとび蹴りを食らわせる。

 ゆっくりと崩れ落ちるタヌキと覆面の彼の間に入り、彼をかばうように身構える。

「だいじょうぶ?」

 チラリと彼を見て安否を尋ねる。

「……あぁ……」

 そういうと彼は何とか立ち上がった。

 顔を正面に向けるとタヌキもまた起き上がっていた。

 タヌキは大きく息を吸い込む。

 みるみるおなかが膨らんでくる。

「くるぞ!」

 覆面の彼がさけぶと同時にタヌキがパンパンに膨らんだおなかを叩いた。

 ドン!

 衝撃波が襲う!

 バッシャーーーーーーーン…………

 と、わたしたちの後ろにあった「ため池」から衝撃波を受けて水柱が立ち上る。

 彼のおかげですんでのところで避けることができたが、もしあれを食らっていたらと思うとぞっとする。

 と、視界に見覚えのある影が見えた。

 だいぶ離れた場所にいるが、こっちに向かってスマホのカメラを構えているのは千代ちんだ!

「はやくにげて!」

 向こうへ行けと彼女に手を振る。と、千代ちんがこちらを指差す。

「へ?」

 と思った瞬間、横から強い力で押されわたしはその場から弾き飛ばされる。

 振り返ると今わたしがいた場所には覆面の彼が横たわっており、その足にはタヌキの腕が振り下ろされていた。

 わたしはすぐにタヌキに向かって飛び掛るがタヌキはそれをヒョイとかわし間合いを取る。

「ぬ、おぉお……」

 背後からは彼の辛そうなうめき声が聞こえてくる。

「ごめんなさい!」

 今度はスキを見せないよう、タヌキから目をそらさないようにして彼に声をかける。

「とにかくアイツを彼からひきはなさなくちゃ……」

 わたしはタヌキのふところに飛び込み、2、3発パンチをおみまいして、覆面の彼と反対側に回り込む。狙い通りタヌキはこちらへと注意を向ける。

「さぁ、来い!」

 とかまえる視線の先、先ほどのため池から見えているだけでも5メートルはあろうかという大きなヘビが鎌首をもたげて覆面の彼を狙っているのが見えた。

 覆面の彼は足を押さえて動けない。

「もう!」

 殴りかかってきたタヌキを跳び箱の要領で飛び越し、再び覆面の彼の元へと寄り添い大ヘビをけん制する。

 前には大ヘビ、後ろには化けタヌキ、足元には動くことの出来ない覆面の彼。

 絶体絶命のピンチだ!

 ほっぺたをタラリと汗のしずくがつたって落ちる。

「とにかく動けるようにしなくちゃ」

 わたしは覆面の彼を抱き上げる。いつかの反対、逆お姫様抱っこだ。

 重さは何とかなるが、大きいので動きづらい。

「気をつけろ! 来るぞ!」

 彼の声に振り向くとタヌキがまた衝撃波を放つ準備をしていた。

「避けろ!」

 彼の叫び声に合わせて飛び上がり何とか衝撃波をやり過ごす。

 しかし、そのタイミングにあわせて大ヘビがアタマをぶつけてきた。

「キャァアァアアァァァ……」

 空中から叩き落されたわたし達は離ればなれになって地面へと叩きつけられる。

 彼は気を失ったのかピクリともせず倒れ伏している。

 ズルリ、ズルリと大ヘビがため池から這い出してきた。そしてその長いしっぽをわたしへと伸ばしてくる。

「逃げなきゃ……」

 と思うが、叩きつけられたダメージで思うように体が動かない。

 ついにヘビのしっぽはわたしを絡めとると、ぐるぐる巻きにしてそのまま宙に持ち上げた。

「ラクシュミー!」

 シンハの声がする。

 見ると離れた場所からシンハがこちらを見上げて声を張り上げている。

「……シン……ハあぁあああああぁぁぁあっ!!!!」

 大ヘビがわたしの体を締め上げる。

 みりみりと体中に激痛が走る。

「ラクシュミーーーー!」

 さけぶシンハに千代ちんが駆け寄ってくる。

 シンハは千代ちんに抱き上げられて保護されたみたいだ。

 シンハが暴れて千代ちんは押さえつけるのに必死だ。

 そのとき大ヘビが再びわたしを締め付けるために力をこめた。

「あぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁーーーーーーーーっ!!!!」

 あまりの痛みに目がかすんでくる……

 その時、千代ちんの体が強い光に包まれた。


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