7話 展望台
「鈴!」
なにやら、教室で猛と楽しそうに話していた鈴を引き離し、冬牙が言う。
「明日、学校休みだろ。街を案内してくれないか?」
「お待たせ!」
鈴が走ってくる。
黒い髪を薄いピンク色のシュシュで二つに結び、厚手のワンピースを着ている。もちろんコートも着ているが、いつもよりも軽装──おしゃれを重視していた。
冬牙は、寒さ対策なのか、着込みに着込んでいた。
「かわいいな。でも脚が寒そうだ」
「いいの! 今日は、あったかい方なの!」
「こ、これでか?」
空からは、雪が降っている。
手がかじかみそうだ。
吐く息が白い。
「それに、おでかけだからだよ……」
「それって、オレのためか? 鈴!」
感極まって、冬牙が抱きついてくる。
「やめてよ! 図書館の前だよ!」
「なんで、おまえはいつもそうなんだ……」
「もう! 行くよ、冬牙くん」
図書館は、無料なのに暖房が効いていて、パラダイスのようだった。
だからなのか、人が多い。
「おお! 本がたくさんだな!」
「テスト前は重宝するよ」
「鈴、鈴!」
「ちょっと、図書館では静かにだよ! 冬牙くん」
「もっと、人がいないとこがいい。……せっかくのデートなのに」
「え? なんか言った?」
髪を揺らして、鈴が首を傾げる。
「べ、別にー?」
「じゃ、次はどこ行こうか」
その後、雪降る商店街や暖かなカフェなどに行き、展望台に登った。
ここは、街のちょっとした名所だった。
道は除雪されていたが、
「ほら」
冬牙が差し出した手を繋ぎ、二人は歩いた。
手すりの向こう側に、白く広い街が一望できた。
「ここが、私の生まれ育った街!」
鈴が誇らしげに笑う。
冬牙は少し緊張していた。他に、今、人は居ない。
(チャンスだ!)
鈴を後ろから抱き締める。
「冬牙くん……」
「鈴。誰もいない。いいだろ?」
向き直ると、鈴が目を閉じる。
(やった!)
冬牙は幸せを噛み締めた。
優しくキスをする。
(ど、どうしよう、キスの後は……)
テンパった冬牙は、鈴の頭にもキスし、コートのボタンに手を伸ばした。
「ちょ!」
鈴のブーツが、即座に冬牙の腹に決まる。
「あんた、いまなにしようとした?」
「なにって……アレだよ。コートが重そうだったから」
「この、ケモノ!」
「だってオレ、狐だもん」
「信じらんない!」
鈴は、驚くほどの速さで、階段を降りていく。
「す、鈴〜〜!」




