5話 学校
「冬牙くんって、かっこいいね〜」
女子たちが黄色い声を上げて、騒いでいる。
「どこの中学から来たの?」
「趣味はなに?」
男子たちも、転校生に興味津々だ。
みんな、冬牙に群がっている。
鈴は少し離れた席から、それを見ている。
「鈴ちゃん」
「あ、猛くん」
幼馴染の猛が声をかけてきた。
「すごい人気だね、あの転校生」
「そ、そうだね」
「行こうか、鈴ちゃん。次は、音楽の授業だよ」
「そうだね」
鈴は、教科書などを用意すると、猛と教室を出ようとする。
「──待て」
不機嫌な声が、後ろから響いた。
「お前、誰だ。鈴から離れろ」
冬牙だった。敵意むき出しに、猛を睨んでいる。
「ちょっ、冬牙くん?」
鈴の肩に手をかけ、自分に近づける。
「こいつは、オレとつきあってる。去れ!」
教室が一時的に騒ぎになった。
「ちょっと、冬牙くん!」
廊下に連れ出して、鈴が言う。
「な、なんであんなこと!」
「? だって、オレたち、つきあってるだろ?」
「え……」
「だって、キスしただろ」
鈴が真っ赤になる。
「やだ、他の人に聞こえちゃうよ!」
辺りの生徒たちを見て、鈴は困った顔をする。
「なんでだ? 堂々としてればいいだろ」
「やだ、 信じらんない!
それに、なんで急に転校なんて」
「それは、次期当主として人間の暮らしを勉強するため……。
なんだ、鈴。嬉しくないのか?」
「だって」
「オレは、お前に会えるの楽しみにしてたのに!
お前は、違うのかよ」
「や、恥ずかしいよ! 冬牙くん」
「……。来い!」
冬牙は、人気のない階段裏に鈴を連れていくと、強くキスをした。
「や! こんなとこで」
「オレは、今、怒ってる」
「え……なんで」
「自分に聞け」
そう言うと、冬牙は荒々しく、立ち去った。




