4話 約束
冬牙は、狐の街を走っていた。
鈴を探していた。
「一体、どこだ!」
もし、彼女になにかあったら、自分のせいだ。
「君が、次期当主のお気に入りだね?」
「手荒な真似をしてすまなかった」
「俺たちは、本当に次期当主に君が相応しいか、話したかったんだ」
妖狐たちが口々に言う。
「君が冬牙を騙してないか、心配で」
鈴は吹き出した。
「なんですか。それ……」
妖狐たちが顔を見合わせる。
「ふふ、冬牙くんって、愛されてるんですね」
「なに、笑って……」
鈴は毅然と言った。
「私は、冬牙くんをどうにかしようなんて考えてないです」
そして、微笑んだ。
「狐さんたちとも、仲良くなりたいです」
妖狐たちは、赤面した。
「……本当に?」
冬牙が情報収集して、辿り着くと、妖狐のうちの一人が鈴の手を握っていた。
「本当に仲良くなってくれるの?」
「かわいい」
「おい、離せよ。俺が先だ」
「友達になろう、鈴ちゃん」
「おい」
不機嫌な声が響いた。
「おまえら、なに鈴を口説いてる?」
「げ! 次期当主!」
「違う、俺らは、鈴ちゃんとただ友達になろうと、なぁ?」
「そうだ、そうだ」
「……ほんとかよ。お生憎様。鈴は、オレの友達だ」
そう言い放つと、鈴を連れて、冬牙は出て行く。
「待って! 冬牙くん!」
「いいの。あんな奴らと友達にならなくても」
「どうして?」
「オレは、ライバルには容赦しない」
「ライバル?」
「あーもう! 鈴がかわいいいからいけない!」
「え……」
「鈴」
冬牙が鈴を抱きしめる。辺りに人は居ない。
「心配した」
「冬牙くん……」
「嫌か?」
「……嫌じゃない」
大胆なことを言ってしまい、鈴は自分でも驚く。
「冬牙くんなら、嫌じゃない」
「鈴。会いに来てくれて、ありがとう」
抱きしめる腕に、力が入ったのがわかった。
「私も、会いたかった」
「鈴!」
冬牙の顔が明るくなる。
「鈴……いいか?」
冬牙の手が、鈴の顎を上向ける。
鈴は、静かに、瞳を閉じた。
「じゃあな! 鈴」
冬牙は、笑って手を振った。
「楽しかった」
鈴は、帰宅することになった。長くは居られない。
不在中のことは、冬牙がまたクラスメイトに化けて、辻褄を合わせてくれた。
「また、会おうな!」
鈴は、笑うことができなかった。
なぜか、涙が堪えられず、溢れてしまった。
その数日後。
鈴は、教室の机で頬杖をついて、外を見ていた。
窓の外の木々が揺れ、光が踊っている。
空は、青く広く、しかしどこか空虚に感じた。
ドアを開けて、男性教師がやってきてた。誰かを伴っている。
「え〜、転校生を紹介する」
その子は、なんと──
ブレザー姿の冬牙だった。




