3話 狐の国
鈴は、一人、冬牙を探していた。
なぜだかはわからない。あの日以来、彼女は冬牙が気になって仕方なかった。
冬牙と初めて出会った雪道や、その周辺を探し回った。
不意に雪が強まった。
降りしきる雪に、方向を見誤る。
どうしてこんなことしているのだろう。
もう、会えないかもしれないのに。
迷い道をどれほど歩いたか。
気づくと、オレンジの灯りを見つけた。
最初は、ほのかな光だった。
行くうちに、光は大きくたくさんになった。
「あぁ、よかった……」
鈴はそこで、安心して、疲れ切って倒れた。
体はすっかり冷え切っていた。
灯りが、ぼやけて見えた。
「鈴! 鈴!」
冬牙の声がする。
夢だろうか?
知らずに、呟いていた。
「冬牙くん。会いたかった……」
鈴は、狐の国に来ていた。
目覚めると、冬牙がいて、そう説明された。
窓の外を見ると、狐の国は鈴の住む街と違い、雪が降っていない。
「鈴、もう二度と会えないかと思ってた。嬉しい」
「冬牙くん、私も」
見つめ合っていると、咳払いがした。
「冬牙、その娘さんが、言っておった、恩人か」
見ると、九尾の狐の老人がいる。
ここは、狐の国の長老の家だった。
長老の名は、蔵人であった。
「娘さん。次期当主を助けてくれてありがとう」
蔵人は、なぜか鈴を見つめ、少し眉を動かした。
「? 次期当主?」
「聞いておらんか。現当主のわしの孫、冬牙のことじゃ」
冬牙は少し赤くなった。
「大したことないよ……。
それよりせっかく狐の国に来たんだ。
今日はもう暗いから、明日、国を案内するよ」
翌日。
鈴が当てがわれた部屋で目覚める。
大きな窓から太陽の光が差しこんでいる。
布団を畳んでいると、葉の模様の襖の外で声がした。
冬牙だった。
「鈴。朝食を食べたら街へ行こう」
鈴は、迷わぬように冬牙に手を引かれ、街を歩いていた。
川沿いを歩くと、赤い鯉がたくさん泳ぐのが見えた。
道の横には、日本家屋のような家が広がっている。
反物屋やせんべい屋。いろんな店も並んでいた。
触れた手が、汗ばんだ。
恥ずかしかった。なのに、離したくなかった。
街を、耳や尻尾の生えた和服の妖狐たちが、歩いている。
人間の鈴を歓迎する妖狐もいれば、遠くから冷笑する妖狐もいた。
「鈴、飲み物を買おう。なにがいい?」
冬牙が会計している隙に、妖狐の若者たちがやってきた。
鈴がなにか言う前に、手を引っ張られた。
口元に布を当てられた。
気づくと、鈴は、倉庫のような暗い建物の中にいた。
周りを、妖狐たちが囲んでいる。




