2話 恩返し
「すまなかった」
耳と──尻尾まで生えた男の子が、目の前にいた。
鈴は、なぜかとてもドキドキしていた。
「オレは、冬牙。
君に助けられた、狐──妖狐だ」
男の子は、鈴と同い年くらい、中学生くらいに見える。
「狐?」
確かに、耳や尻尾は狐のそれだったが、あの時のかわいい狐とは似ても似つかない。
「君に恩返しがしたくて、君の同級生に化けてきた。
でも……なんつうか、君があまりにかわいくて、抑えられなくて」
「え……。か、かわいい?」
「一目惚れなんだ」
冬牙は恥ずかしそうに、頬を掻いた。
「え……」
「ぎゅーって、もういちど、したい」
鈴を見つめて、そういった。
「や、なに言って……」
「鈴、感謝している。
だめか?」
なにも言えずにいると、冬牙は気落ちしたのか、下を向いた。
耳と尻尾が、力なく垂れ下がる。
「手を握るのは?」
「え」
「鈴が嫌なら、しない」
真剣な目を向けられた。
鈴は、なぜか抗えなかった。
「……いいよ」
真っ赤になって、言った。
「手、くらいなら……」
「鈴!」
冬牙は、すぐに鈴の手を取った。
電流が走ったみたいだった。
鈴は、心臓が早鐘になったようなのに、甘い甘い気持ちになる。
「冬牙……くん」
「鈴。会えて嬉しい。
抱きしめるのは、だめ?」
「だ、だめ……」
「そっか」
冬牙は、鈴の手にキスすると、立ち上がった。
「困らせて、ごめん。
助けてくれて、ありがとう。
じゃあな」
そういうと、冬牙は行ってしまう。
「あ……!」
鈴は急に悲しくなった。
布団の上で、冬牙の温もりの残る手を、胸の方へ引き寄せる。
「冬牙くん……」
起き上がると、玄関へ走った。
しかし、そこにはもう、誰もいなかった。




