1話 来訪者
鈴は、咳をした。
今日は、風邪で学校を休んでいた。
ずっと、布団に横になっていたが、やがて手持ち無沙汰になってきた。
熱は幸いなかった。
大事を優先していたが、暇は暇だった。
「みんな、何してるかな?」
鼻声で呟いた途端、また咳が出た。
その時だった。
インターフォンが鳴った。
家人は、仕事に行っていて留守だった。
「は〜〜い」
上着を羽織り、玄関へ向かった。
玄関を開けると、同じクラスの佳美が立っていた。
「お見舞いに来たよ!」
「佳美ちゃん? あ、ありがとう」
急な訪問だったが、嬉しかった。
佳美とは仲それなりに仲がよかったが、こういうことは初めてだった。
「おなか空いてない? お粥作ろうか?」
「ほんと? 嬉しい!」
佳美は料理が上手だった。
鈴は想像した。
美味しいおかゆを食べている自分を。
白粥? 卵粥? 梅粥?
ところが、出てきたのは、焦げ焦げの茶色いお粥だった。
「よ、佳美ちゃん? こ、これは一体……」
「たんと、召し上がれ!」
「……まじ?」
「あ〜〜ん! 鈴ちゃん」
「え?」
なんだか、今日の佳美は距離が近い。
食べさせようとするのもそうだし、熱はないかとおでこをくっつけてくるし、鈴が少し横になると、安心させるためなのか、手を握ってくる。
「鈴ちゃん」
しかも、妙に熱っぽく見つめてくる。
「ちょ、ちょっと?」
違和感を覚えた。
汗が頬をつたう。
(もしや、これは!)
流行りの、ガールズラブ展開なんじゃ……。
鈴は身構えた。自分にはその気はない。
しかし、佳美は座ったまま動かなかった。
でも、急に赤くなって目を逸らした。
「そ、そんな、見ないで……」
「え、え〜〜?」
鈴は、布団から出ようとした。
「あ、急に立ち上がらないほうが」
佳美が手を伸ばしてくる。
座って抱きしめられる形になり、鈴は焦る。
「よ、佳美ちゃん……」
慌てていた鈴だが、やはり何かがおかしいと感じる。
なんだか、佳美がごつい。腕も、胸も……。
よく見ると、佳美の頭になにか、耳のようなものがついている。
「な、ナニ? 佳美ちゃ……」
鈴の目が見開かれた。
──男の子だった。
佳美が、なぜか、和服の男の子に変わっていた。
「きゃ、きゃ〜〜!」
鈴は、男の子を押し戻すと、その頬を、勢いよく叩いた。




