当初の目的へ
「流石だな嬢ちゃん、噂に違わねぇ実力だ」
背後から声がかかる。振り返ると清々しい笑みを浮かべたガランドが手を上げて近付いてきていた。もう必要はないと考えてか、あの巨大な斧はその手を離れて地面へと突き刺されている。
横を見ればガランドの側近メイドであるリーシエもこちらへと足を進めていた。変わらずの無表情ではあるが目下の危機が去ったことにどこか安堵しているようにも見える。
次第にクラリスの周りに集まり、隣に来たリーシエの頭をガシガシと撫でながらガランドは笑う。屈託もなく、心底楽しそうに、頭に響くような大声で笑う。
「ガッハッハッハッハッ! まさか本当に一人で仕留めちまうとはな! ヘビに囲まれて見えなくなった時は肝が冷えたぞ!」
「……うるさい」
「おぉ悪いな! んだが、上手く行って何よりだ。嬢ちゃんの力を疑ってたわけじゃあねぇんだが、”もしも”を考えたら、な!」
首を手で横に切るようなジェスチャーをして笑う。決して過剰とはいえない心配に何も言えずに困っていると、
「……あれ、何?」
何かを見つけたリーシエが訝しむようにそれを見る。つられて同じ方向を見ると、そこには青黒く不気味に光る拳ほどの大きなの石が落ちていた。
「そいつぁ……」
「これは……魔石、ではなさそうですね。何か知ってるんですか? ガランドさん」
顎に手をやり、深く考え込むように唸るガランドに目を配る。しばらく思考の海を漂っていたガランドだがクラリスとリーシエ、二人の視線を受けて、
「あぁ、いやなに、つい少し前に似たようなもんを拾ったものでな」
そう言って懐から出したのは、落ちているものと同じような石。青黒く光った、拳ほどの大きさの物体。
クラリスは落ちている石を拾い、取り出して見せたガランドの持つ石と並べて見比べてみる。
「確かに、凄く似てますね。同じ物みたいです。これはどこで拾ったんですか?」
「これは嬢ちゃん、お前さんが仕留めたあのデカいヘビの亡骸から出てきたもんだ」
「え? そんなのあったんですか? 知りませんでした」
「死体が塵になったと思ったらこれが落っこちてたってわけだ。何かの手がかりになるかと思って拾っておいたんだが、どうやら勘が当たったらしいな」
二つの石をツンツンと突くクラリス。
クラリスの手の上にある石とガランドの手の上にある石。密接な関係があるであろうそれぞれの蛇型の生物から出てきたこれは、どう見たって何らかの繋がりがある。考えるまでもないな、と笑い、一応と思って拾っておいて良かったと安堵する。
「嬢ちゃんが言うように、コイツぁ魔物が持つ魔石に似ている。だが、魔石にあるはずの魔力を感じねぇ。そもそもこんな魔石、見たことも聞いたこともねぇがな」
つまりは分からない、と弱気な結論を出して頭を掻く。三人が戦ったいくつものヘビは普通の生物でも魔物でもない。ならばそこから出てきた謎の石など、分かるはずもない。今はまだ考えるだけ無駄だと見切りをつける。
「これが何なのか分かるのはここを出て詳しく調べてから、だな。それとも、嬢ちゃんいるか? お前さんの貴重な戦利品だぞ」
「いえ、ではこれもガランドさんが持っててください。もしも未知のものでしたら研究したりとあって困りませんしね」
「何だか厄介物を押し付けられたような気もするが、まぁいい、後でじっくりと調べさせてもらうさ」
新たに手にした魔石のような謎の石をガランドへと手渡し、その後を任せる。実際、何か分からないものを一冒険者のクラリスが持っていても宝の持ち腐れというやつだろう。宝かはまだ分からないが。
「さーて、それじゃあ坊主と合流するか、外の様子も気になる」
「ですね。結局あのヘビ? のようなのも塵になって消えてしまいましたし、まだ敵がいないとも限らないですしね」
そう言う二人の声は、どこか薄い期待が滲んでいる。
戦利品こそ謎の石だったが、明確に今までのヘビとはモノが違う存在を倒したのだ。現状を取り巻く問題のいずれかが解決に少しでも近付いているのではないか、と思わずにはいられないのだろう。あわよくば、自分らを閉じ込める結界が解かれていたり、など。
「私は屋敷の中を見て回る」
「え?」
「まだヘビがいるかもしれない。もう一回見て回る」
ガランドにぐちゃぐちゃにされた髪を整えつつ無表情に話すリーシエ。分かれて動くと言ったリーシエの発言に反応したクラリスの疑問に答えながら手に持つナイフの状態を確認していく。身体からいくつものナイフが現れ、それを眼前に掲げて刃毀れを確認し、どれも問題なく使えることを確認したリーシエは満足げに頷く。
そんな様子をクラリスは若干引きながら見る。
「おう、んじゃあそっちは頼むな、リーシエ」
「うん、任せて旦那様」
ガランドとのやり取りが終わるやいなや、リーシエはゆっくりすることもなくすぐさまその場を離れていく。屋敷を周り、その中の安全を改めて確保しに行ったのだ。
段々遠ざかっていく背中を見ながら、
「――――さて、それじゃ俺らも行くとするか」
「はい、エルさんなら恐らく外の門の近くにいるでしょう」
クラリスとガランドもまた動き出す。死闘を演じた中庭を出て廊下に入り、玄関扉へと歩いていく。
短い道の道中ではヘビのようなものは現れず、平和に進むことが出来た。敵は現れず、倒した敵も塵となってその全てが消えてしまうので最初から何もいなかったのではないかと錯覚すらしてしまう。といっても、一部崩れて瓦礫となってしまい悲惨な状況になっている部屋もあるのでその存在は確かなものである。
やがて、扉の前に着く。外と中を繋ぐ玄関の扉。屋敷の主であるガランドがドアノブに手をかけ――――ゴクリと口に溜まった唾液を飲み込む。
見ればガランドもその顔が強張っている。クラリスと同じように、緊張しているのだろう。
この扉を開ければ、現状が分かる。結界が解かれているかもしれないし、何も変わっていないかもしれない。下手をすると新たな敵がいるかも知れない。扉を開けば分かるそれを知るのに、少しばかり心構えが必要になってしまうのを誰も責められなかった。
「……いくぞ」
「……はい」
現実と向き合う覚悟を決め、意を決して扉へと伸びている手に力を込める。隙間から差し込む光に困惑を膨れ上げながら目を細めゆっくりと扉を開いていき――――
「――――なんだこりゃあ……?」
「――――これは……」
網膜を焼く光に少しずつ目を慣らしながら、ようやく外の光景を目にする。
中庭にいた時には間違いなく夜だった。はずだが、目に映る景色は、燦然と煌めく陽の元、門内の庭にいる沢山の人影。庭を埋め尽くす、は言い過ぎたが決して少なくない数の人が集まってこちらを見ていた。
さしもの光景に言葉を忘れ、驚きに瞠目するだけの二人に、
「――――あ、おーい!」
手を大きく振る少年の姿が見えた。
◆◆◆◆◆
「はぁ、僕が喋ってるっていうのに……」
肩を落とし嘆く。チラリと伸ばした視線の先には、冒険者やら鍛冶師やら、多くの人に囲まれているガランドがいる。各々の心配の声を吹き飛ばすように軽快に笑い、五体満足のその恵体を見せびらかしている。
屋敷から出てきたクラリスとガランド。それを迎えたエルなど眼中にないかのようにガランドへと押し寄せたあの人の群れは、それほどガランドが好かれているということなのだろう。
「まぁまぁ、それくらいガランドさんが心配だったということですよ。良いことじゃないですか」
ふてくされて噴水の側に座るエルの横に腰を掛け、その手に持っていた串焼きの一本をエルへと手渡す。
受け取った串焼きを一口食べ、そこでようやく自身の空腹に気付く。色々なことがあってせいで満足に食事も出来ていなかったと思い出し、ありがたく平らげる。横を見ればかなりの数の串を両手に抱えているクラリスからもう一本をもらい、今度はゆっくりと味わっていく。
串焼きに舌鼓を打ちながらどこから調達したんだと周囲を見回してみると、庭の一角で串焼きを作っている出店を発見する。みたところ金銭のやり取りもなく無償でやっているようで、これもガランドの人望の故か、と素直に称賛する。
灰炉組合の代表ガランド。この街の支柱たる冒険者を支えている彼は、かつて高名な冒険者であったという経歴もあり、多くの人から支持と尊敬を得ているようだ。
「敵に回さなくてよかった……」
かなり不敬を働いてしまったような気もするが、根本的な部分で対立してしまってはこの街で生きていくことは難しいだろうと思う。あの交渉の場で、一歩間違えたらの分水嶺だったことに今更ながらに気付き遅れて冷や汗が流れる。
「ガランドさん、愛されてますね。――――二日も消息不明だったんですから、今はそっとしておきましょうか」
「二日、ね……」
そう、結界が晴れて元の世界へと戻って最初に気付いたのは、時間のズレであった。結界内――――屋敷の敷地にいた時間は、せいぜい数時間が程度。夕方から夜にかけての時間だったはずだが、いざ元通りになってみると空は青く、体感以上の時間が過ぎ去っていたのだ。
ある程度の想定はしていたものの、可能性の中ではあまり良いとはいえない推測の一つが当たってしまったことに背筋が凍り、だが致命的な時間経過が起きているわけではないとホッと安堵のため息を吐いてしまった。
「結界のせいで二日間は誰も敷地に入ってこられなかったんでしたっけ?」
屋敷の外に出たクラリスは、二人を迎えたエルから軽く状況の説明を聞いていた。といってもすぐにガランドを心配する街の人のせいで中断されてしまったのでまだ詳しい話は出来ていないが。
「君たちが出てくる少し前、突然結界が解かれたんだ。さっき言った通り、多分あの中庭の化物を倒したのがきっかけだと思う。僕は外に近付いて結界を確かめたり、屋敷をグルリと回ってたりしてたんだけど、急に外の奥の空が光ってね。暗い夜の空から段々と明るい太陽の空に変わっていったんだ。それに驚いていると、門の外にあるひとだかりを見つけて結界が解かれたんだと話を聞いてみたら――――」
「外では屋敷の敷地に入れず、中にいるであろう二日も姿を見せないガランドさんを心配して集まった、ということですね」
「うん、後少し遅れてたらそれなりの規模の調査隊が作られるところだったんだって。流石は灰炉組合」
ぼんやりとガランドとそれを囲む人だかりを眺めながら、しばしまったりとした時間を過ごす。
次第に人が捌けていき、ガランドの全身が見え始めてきた頃合いでエルとクラリスは立ち上がり、彼の元へと向かう。ヘビを倒し、結界を解いてもまだ二人にはやることがあるのだ。
「――――おぉ悪いなお前さんら、随分待たせちまった」
近付いてくる二人に気付いたガランドが笑って謝る。どうやらよほど心配されたようで、若干の気疲れが見える。
「いや、いいよ。それにしても、色んな人がいるんだね」
「そうですね、灰炉組合の方と思われる職人さんたちはもちろんですけど、冒険者やその他の街の方々まで」
老若男女問わずガランドの身を案じてここまで来てるのだ、タートの街における彼の信頼というのはかなりのものだろうと想像がつく。が、確かに少々不思議に思わないでもないが。
「これでもギルドマスターやってるからな、タートの構造上色んなヤツと関わりがあるってーわけだ」
「ギルドマスター!?」
エルとクラリスの声が重なって響く。
長年引き籠っていたエルの記憶の貯蔵から該当の情報を引き出す。
ギルドマスター――――ギルマスは、ギルドのトップだ。そもそもギルドとは、かつての先人が創り出した組織で、対魔物を専門にする機関――のはず。今はどういった立ち位置の組織かは分からないが、かつては国の政に組み込まれるほどの力を持っていた。
想定外の大物な肩書きに開いた口が塞がらない。だとすると、灰炉組合の代表には少なくとも貴族とギルマスが所属しているということになる。
「はは……、そりゃこんな立派なお屋敷もあるよね」
乾いた笑いが溢れる。ただでさえ冒険者の価値が重い街だ。彼らを支える灰炉組合の、その代表。そして彼らをまとめ上げるギルドのトップの二つの肩書きを持っている男の屋敷が、そこらの貴族より小さいわけがなかった。
「そんな大層なもんじゃねぇさ、嬢ちゃんも知ってるだろ? 昔と違って今のギルドはそこまで力を持っちゃいねぇ」
「それは――――はい、そうですね……」
急に落ち込むクラリス。言葉の意味が分からないエルはその様子に首を傾げ、
「昔と違うってどういうこと?」
「…………あっ、そういえばエルさんは知らないんでしたっけ」
そう言ってクラリスはエルの疑問に応えようとして、口をつぐむ。ガランドの顔をチラリと見て、
「また今度、そのことについてお話しますね」
「……? 分かったよ」
どうやら今話すべきではないと判断したクラリス。しつこく追求することでもないのでそれで了承。
「それでなんだが、お前さんらに頼みたいことがある」
一変して真面目な顔をしたガランドが話を切り出す。エルとクラリスをそれぞれ見て、懐から一枚の紙を取り出して、
「ここに、ギーサの家までの地図を記してある」
「――――」
「本当なら俺が行くべきなんだが、俺はギルマスとして、これらの後始末があるもんでな」
後ろ指でボロボロになった屋敷を指さし、肩をすくめる。よくよく見てみればギルド職員と思われる何人かが屋敷の中へと入っていくのに気付く。
「ヘビこそ倒しはしたが、その首謀者については何も分かってねぇ。ギーサの野郎にも関係あんだろうが、だからってこっちを放っておくわけにもいかねぇ」
「ふむ」
顎に手を当てていかにも考えていますというポーズを取る。いや実際、考えているのだが。そうと分かる姿勢は大事なものなのだ。
さて、ガランドの言うことは最もだ。今回の襲撃において、ギーサが関与している可能性というのは今のところ否定できない。だからといって、三人揃ってギーサの元へ行くというのは確かに短絡的かもしれない。
襲撃に合った地。灰炉組合の屋敷は、中にいる人ごと結界で飲み込まれ、いくつもの敵性存在が放たれた。まだ中に何らかの手がかりが残っている可能性もあるだろう。それを踏まえての別行動、というわけだ。
そもそもガランドも出来るなら自分がギーサの元へと行きたいだろう、とエルは考える。当初はガランド本人が行くと行っていたが、状況が変わってしまった。
家族と呼んだ者の不可解な言動、その真意を一番聞きたいと思っているガランドの、しかしの立場と理性が決した苦渋の判断といえる。
ならば、
「分かりました。私たちはギーサさんの元へと向かいます」
ここでの返答はクラリスに任せよう。ガランドの信頼を勝ち取ったのは他でもないクラリスなのだから、それを決めるのも、ガランドの向けられた想いに答えるのもエルの役目では無いだろう。
「ギーサさんに会って事情を聞いて、出来ることなら私が力になります。困っているなら手を差し伸べます。助けがいるなら救ってみせます。――――なので、ガランドさんはこちらをお願いします」
そう言い切ることの難しさは、きっと彼女には分からないのだろう。もはや高潔を超えて潔癖と言って良い。
善性を信じるクラリスの熱い言葉を受け、ガランドもまた心得たと頷く。
「それでは、向かいましょうエルさん」
手渡された地図を握りしめ、決意を新たにするクラリス。返事も待たず歩き出すのに遅れて続き、その横へと並ぶ。
もうすぐ、長い一日の目的へと辿り着く。
◆◆◆◆◆
街を歩く。
人通りの多い大通りを抜けて少し寂れた雰囲気のある住宅街を通る。この街に来て初めての、静かな町並みを密かに堪能する。どこにいても、大通りから離れた公園でも聞こえていた鉄を打つ音はここでは全く聞こえず、真の意味で静けさと落ち着きを得ることが出来た。
人影が少ない道の、更に路地へと入っていく。
ガランドから受け取った地図によれば、ここから路地裏に入って真っ直ぐ突き進んだところにある木造の一軒家――――そこが、ギーサの家だという。
見た目にそぐわず丁寧に書き込まれた端正な地図を都度確認しながら、目的地へと近付いていく。
あまり整備のされていない路地の奥へとひたすら進み、そうしてやがて突き当たりへと差し掛かる。道は左右に逸れ、その真ん中にポツンと建てられた木造の家。所々の木板が外れ、外から見ただけでもボロボロの状態と分かるそれと、手元にある地図を見比べる。
「うん、ここだね。地図が正しいなら」
ここ最近で地図に裏切られた経験があるので思わず猜疑的になってしまう。どうやらその発言が気に食わなかったらしい、横にいたクラリスが目を吊り上げてエルに、
「正しいに決まってるじゃないですか! 変なこと言わないでください!」
「ごめんごめんそうだよね、あまりにもな風体だったからつい。ガランドを疑ってるわけじゃないんだ、ほら行こう」
「全く! エルさんは捻くれてるんですから。もう少し素直なら可愛げもありますのに。そんなんじゃお友達も出来ませんよ」
「……君、僕の方が年上って忘れてない?」
普段は礼儀正しいのになぜこうもピンポイントで失礼なのか。やはり外見か、と威厳皆無な自身の身体を見下ろしてため息を一つ。――――と、人の家の前で長く時間を過ごすのは良いことにならないと身を持って知っているので会話も早々に、目の前にある家へと向かっていく。
近付いてみても変わらずかなりの劣化具合の家だが、果たしてここに住まう住人はどうであろうか。耳をすましても物音一つせず、中の様子を窺い知ることはできない。
「留守――――もしくは逃げたとか? それだったら困るけども」
人の家の前で悩んでいても仕方がない、と意を決し、エルとクラリスはお互いの顔を見合って頷きあう。一瞬の視線の交差の後、恭しげにお先にどうぞ、と手の平を扉の方へと向けるエル。促されたクラリスは唾を飲み込み、一つ深呼吸をして扉へノックをする。
「…………返事がありませんね」
反応がないことを確認し、今度はドアノブへと手を伸ばす。ゆっくりとノブを回し、自然と音がならないよう気をつけながらそっと扉を開ける。それでも立て付けが悪いのか鈍い音がなってしまうが、変わらず中からは何も反応がない。
「ギーサさん、いますか? 私です、クラリスです。いたら返事をしてください」
返事なし。この様子では本当にギーサの行方を虱潰しに探す羽目になるのではと危惧したエルもそっと半分ほど開いた扉から中を覗き――――
「――――」
クラリスとエルがそれを見たのはほとんど同時。扉の向こう、ギーサの家の中、簡素な家具が並び、恐らくは邪魔にならないようにと部屋の端へと置かれているテーブルといくつかの椅子がある――リビング。
部屋に一体となっているキッチンには使用済みの食器が溜まり、奥に見える本棚にはクモの巣が張っている。天井に吊るされた照明がゆらゆらと揺れ、部屋の中心にあるものを照らしている。
水がでているわけでもないのに、ぴちゃぴちゃと水滴の滴る音が聞こえる。酔ってしまいそうなむせ返る鉄の匂いが鼻腔に張り付き、
「――――ギーサさん!!」
血溜まりの池の上に置かれた椅子に、ギーサは項垂れていた。
漫画でも小説でも、物語を創作するにおいて緻密に計算して作る人って凄いですよね
私はそういうのが凄く苦手なんですよねぇ




