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第78話 告白


「……。」

「…え?」


結衣は、何度か瞬きをした。


「今……なんて?」

「好きだからだ」

「………。」


「聞こえなかったのか?」

「聞こえた!」


「その……好きって、どういう……」

「どういう、とは?」


「だから! 家族とか、仲間とか、そういう感じの……?」

「違う」


「………。」


「結衣を、女性として好きだ」



思わず口をパクパクとさせる結衣は、大事なことを思い出す。

そもそも、ノクスには火竜のお姫様がいる。

だから、これはきっとノクスの表現の仕方がおかしいのだ、と。


「で、でも!ノクスには火竜のお姫様がいるんでしょう?」

「…何の話だ。そんな話、とっくの昔に断っている」


「…だって、街で噂になってるの聞いたよ?ノクスに恋人がいるって…」


ノクスは結衣の言葉に、ぴくりと眉を動かした。


「それは…私が結衣を探せと…雇用主を探せと言いかけたのを、部下達が勘違いして…」

「勘違い!?」


(それってつまり、巷で噂になってる元凶は私ってこと!?)


「それに噂なら、次期魔王妃と言われているのは、結衣。お前だ」

「…!?」


「もっとも、それは噂で終わってしまいそうだが…」


自嘲気味にいうノクスは肩を落として深くため息をついた。


「本当に、ノクスは…私のこと、好きなの?」

「だから言っている。結衣のことを愛おしく思う、と」

「…っ」


聞いたのは自分なのに、顔が熱い。


「結衣はまだ自分の気持ちが分からなかったのだろう?」

だから、とノクスは続ける。


「結衣に好いてもらえるよう、色々試してみたが…抑えが効かなくなった」


「どうしても、触れたい、と思ってしまったのだ」



ノクスは下を向いているから気づいていない。

結衣の顔が、耳が、羞恥心から赤くなっていることを。


「結衣を見ていると、触れたくてたまらなくなる」

「ずっと側にいたいと思ってしまう」

「結衣の笑う顔を見ると、とても満たされる」


「もっともっとと際限なく求めてしまうが、結衣の嫌がることだけはしたくない」


心臓が、爆発するんじゃないだろうか。

息を吸うのもやっとな結衣が、必死に声を絞り出した。




「…も」

「…?」



「私も、ノクスのこと…好き、なの」



「…。」

「…。」



「「……。」」

「……ノクス?」



「…………好き?」

「うん」


「結衣が?」

「うん」


「……私を?」

「だから、そうだってば……!」


改めて問われると、余計に恥ずかしくなる。

ノクスの顔を恐る恐る見ると、まるで人形のように動かない。

けれど、じわじわと耳が赤く染まっていくのが分かった。


(ノクスが…照れてる…)


お互い、固まったように動かない。

ノクスは耳が赤くなっているし、結衣に至っては顔から首元まで赤い。


「……一つ、確認してもいいだろうか」

「な、なに?」


「これからは……触れてもいいのだろうか」


“触れてもいいだろうか”

昨日聞いた同じ言葉なのに、今日は全く意味が違う。


「…うん」

結衣は小さく頷いた。


「…いいよ」


ノクスの表情が、初めて緩んだ。

ゆっくりと伸ばされた手。

結衣の様子を確認するように、いつでもすぐ離れられるように、ゆっくりと。


ノクスの手が、そっと結衣の背中に回る。

そのまま引き寄せられて、すっぽりと包み込まれた。

ぎゅ、とノクスの服を掴む結衣。


結衣が頭を預けると、ノクスの心音が聞こえる。

結衣と同じくらい早い鼓動。


「結衣」

「…うん」


ノクスの腕に力が入る。


「結衣」

「…ノクス」


名前を呼ばれているだけなのに、胸がいっぱいになる。


「…結衣に嫌われていなくて、よかった」

「嫌ったことなんて、ないよ」


ノクスの腕に、ほんの少し力がこもった。

今度は結衣も、逃げなかった。



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