『※イラスト有り』189話 されば神に祈りて導かれん
到達と功績
人間は
仲間を求めた
虐げられたものは
光を求めた
共に歩み
共に背負う
まるで神に導かれるように
首の座っていない赤子のようにゆらぐ門番の兵士をおいて男たちは、教会の扉を静かに閉ざす。
なかは予想通りもぬけの殻。神に祈りを捧げる厳粛な教会は、視界に石畳と絨毯をぼんやりと映しだす。
常闇に射し入った月の光がステンドグラスを透華すれば、花灯となって虹の如き神聖さを幻出する。
客を祭壇に引き寄せる毛足のしっかりとした身廊だ。それを挟んでビオラのように艶めいた古風な長イスが連なって並ぶ。
到達した達成感で明人も緊張の糸を少しばかり緩めた。
「よーしっ、到着だ」
指の骨を鳴らしてパイロットスーツに覆われた首を回す。細く長い室内で、疲れがエコーのように反響した。
その後ろでクロトは、ぽぅっとした顔を手で多い隠す。
「もう……わたし、お婿にいけない……」
耳まで真っ赤に染めて、黒い頭の上にちょこんと乗ったホワイトブリムが歩くたびにふりふりと可愛く揺らぐ。
それは聖女が残した忘れ物だった。
「クロトくん、もう演技しなくていいんですよ……? 今日のことはワーウルフに噛まれたと思って忘れましょうよ?」
その震える小さな肩をしかめっ面で抱いてハリムは、渋く眉を寄せる。
「それ結構重症です……」
「じゃあ僕みたいなゾンビにでも噛まれたことにしよう」
「それも重症だと思います……」
クロトの演じたキャストは、堂々たるもの。それこそ主演女優賞ものだった。
意地悪なご主人様に命令され、1日中働いてむくつけき兵士を慰安をする。そんな恥ずかしがり屋の巨乳で奴隷の黒メイド。
月の下で飢えた獣に歩み寄る儚げな少女は、台本通りに番兵へとこう言った。
『あ、あのっ……! ご主人様の言いつけなのですが……! そのぅ……小さなお花を愛でることはお好きでしょうか?』
もじり、もじり。身をよじりながら恥ずかしそうに兵士に近づいて声をかける。
薬によってたわわに実った果実を半身ほど見せびらかし、頬を赤らめ殺し文句の矢を放つ。
薄く桃色の肌は、きっと本当に恥ずかしかったのだろう。
そうやって上等の文句を上目遣いで口にすれば、剣を抜きかけていた兵士も剣鞘から手を引かざるを得ず。あとはなし崩しにゴールへ向かう。
もちろん舞台監督兼ピンチに駆けつけた主役は、明人である。
まずクロトが開き直って敵の目を引いている隙に、教会の庭へと侵入した。
そこからは距離を詰めて、背後から《マナレジスター》と《チャームスポイト》で終幕となる。
その間に巨乳奴隷メイドがなにをされていたのかは、ハリムとクロトだけが知っている。
「ううう……。つんつんっ、て……むにむにっ、て……されたぁ……」
やらねばならない。それを盾にした明人の辞書に同情の言葉は書かれていない。
歩み寄って、いい加減聞き飽きたクロトの恨み言を払いのけるように、その貧相な尻を少しばかり力を入れてひっぱたく。
「ひゃうっ!?」
「ほら行くぞ」
飛び上がると同時に発せられたいたいけな悲鳴が神聖な静寂を汚す。
数センチジャンプしたクロトは、狐につままれたようにぽかんとしながら、スカート越しに尻をなでさする。
そこから沸々と水が煮えるように目が鋭く据わっていく。
「ひどいじゃないですか! わた、僕にあんなことまでさせておいて!」
1度目に足らず2度までもの豊胸による豊胸。ここで怒らなければ、男ではない。
しかし明人は、ぷんぷんするメイドの横を颯爽と通り抜ける。
通り過ぎザマに一言。
「ことが済んだら謝るし償いもする。地面に頭をこすりつけて欲しいのならやってやる。だから今はとにかく前に進んでくれ」
そう言って祭壇に向かってのっしのっしと絨毯を踏んだ。
「あれはクロトじゃなきゃダメだったんだ。もし女性が囮になって失敗でもしたら失うものは男よりも多い」
クロトの男に泥をぬるような行動に、後悔はない。
サナとルナ、なおかつ唯一の剣であるフィナセスをも置いてきた意味。それは賭けだったから。
「だったら囮に性転換は使えない。かといって、演じるのにオレとハリムじゃ無理がある。だからクロトを信用したんだ」
そう講釈をを述べる背中は、いつもよりも少しだけ小さい。
ベットするのであれば当然負けの目も見る。負ければ終わるだけではない。敗北の先には、性差はあれど当たり前の地獄がまっている。
騙すことには、悲観する力も必要だった。それが危険を背負う仲間と共有するものであれば、なおのこと考えを巡らせる。
死んでも口にはださなくとも、それが今の明人にできる精一杯の努力だった。
正面から突っ込むこともできる。
しかし相手は、上位種と呼ばれる未知の種族。
近づくまで隠れ潜んで敵を打つ。
気づかれれば元も子もない。正面衝突よりも不意を打てぬだけリスクが跳ね上がる。
だからこそ明人は、クロトを使った。
もっとも戦闘に発展しない配役で、危険が少なく、敵の意表を突く。
自身の脳で考えうる最高の手段をもってして計画を遂行した。
「けどもし嫌気がさしたんなら帰ってもいい。オレひとりだろうが穿孔機みたいに前に進んでやる。逃げても誰も攻めないし、選択は自由だ」
玄関口でとり残されたふたりが遠のいていく。
身長差のあるクロトは意外そうに目を見開いて横を見る。
同様にハリムも向けられたくりくりの瞳を見下ろす。
それからふたりは、まるで打ち合わせでもしていたかの如く同時に頷いて、追いかけた。
官能的なスーツをきた明人を挟んでウェイターと黒メイドが、喜色満面にまくしたてる。
「待ってくださいよ。嫌気がさしたなんていってないじゃないですか」
「そうそう。こんなグールが飛びだしてきそうな場所でひとりなんて怖いですよ」
横並びになって祭壇に向かう1人とふたり。
先ほどまでの緊迫した空気とは打って変わって足どりは、軽やか。
荘厳な造りの夜の教会に軽口が飛び交う。
「ハリムさんのゾンビジョーク、全然面白くないですからね? あと、せんこうきってなんですか?」
「死後硬直するくらい寒かった?」
「おぉー、心が強すぎて砕ける気がしないです。で、せんこうきってなんですか?」
1人を挟んで和気あいあいと弾むように語り合う。
およそこれから敵の腹心に迫るとは思えぬほどにノリは明るげ。
しかし緊張は抜けても注意は怠ってはいない。語らいながらも侵入者を手挟むようなイスやら円柱の影に、きっちりと目を配っていた。
それが仲間と離れて孤独だった明人には、どうにも嬉しかった。
ようやく頼れる仲間を見つけたような。重荷を分かち合うよう妙ちきりんでどこか懐かしい暖かさ。
イージスの名を冠した仲間たち。思わず頬が緩るむ。
「ほらほらっ、クロトくんはそう言うけどフニーキさんは笑ってくれてますよ」
「いやいや、絶対にジョークで笑ったんじゃないと思います。これはだけは絶対です。譲りません」
それを見たクロトとハリムも一緒になって微笑んだ。
スポットライトのように絨毯の一部を丸く彩る万華鏡の模様を踏みしめる。
バラ窓から射し込んだ月明かりが幾何学模様が、一党らの似た黒い頭に斑を乗せる。
偶然であった男たちは、偶然にも神に与えられた物に運命を動かされて、たまたま神を讃える場にて会同す。
神を讃える祭壇の前に、三者三様の顔つきで立ち止まる。
見上げてみれば、槍をもった男は若々しくもたたずまいは、猛々しい。
神々しい鎧に身に帯びて長槍を掲げるように構えている。白亜の口元で弧を描きつつも荘厳な目つきをしている。
足元には、天使がふたり分。
小さな天秤を掴んだ胸のない少女と羽兜を冠った美しい女性が、神を守護するように立っている。
――ここが入り口か?
ミリーナ曰く、神に跪けば道はおのずと見えるのだという。
明人は、言いつけどおりに膝ををついて、マーブル模様の大理石に拳を押しつけた。
手触りは固くなめらかで、血を冷やすように冷たい。
「ッ、情報は正しかったみたいだ」
ニヤリ、笑み。1人感心しつつ横目で目指示す。
クロトとハリムもこくりと頷いて、同じように偶像の足元に跪いた。
「こ、これは……! 言われてみないとみつからないですねぇ」
「うーん。これは確かに跪かないと見えない景色だ」
神の足元、その裏手。決して日の届かぬマントの裾の奥に、微かに聞こえる風の音がひとつほど。
這って近づいてみれば、確かに地下へとつづく穴が口を開けている。
階段奥から吹いてくる生暖かい風が、猛獣の如き音を奏でて唸りを上げた。
どちらともなくゴクリと生唾を飲む音が耳をかすめる。ふたりだけで店を切り盛りできそうなウェイターとメイドは、揃って青い顔をする。
身をこわばらせるふたりをおいて明人は、布マントをくぐって石の段差にすべりこんだ。
「さて、真実の欠片を探しにいこう」
そしてふたりに向かって手を差し伸べる。
「は、はいっ!」
「し、死なば諸共ってやつですね。まぁ、僕は死なないんですけど」
まず明人がハリムを引っ張って、ハリムはクロトを引き寄せる。
どこか緊張感にかける、あの頃に似たふたりは、伸びてきた手をしっかと握り返して階段を降りる。
「あははっ。やっぱりそのゾンビジョークつまらないというより不謹慎です」
強ばっていた頬をとろかしたクロトは、軽口に安堵の息をこぼした。
湿った空気がいつかどこかで嗅いだことのある臭気を纏う。右手に当たる壁の感触がこの階段が螺旋であることを教えていくれる。
鼻を突くような刺激臭は、医療従事者でなくとも嗅ぎ慣れている臭い。それに混ざる強烈な酸味もまた、この場にいる者であれば嗅いだことがある不快なもの。
それはきっと、下水に混じっていた死の臭い。
2番手を行くハリムは、鼻を鳴らしながらしんみりと口ずさんだ。
「んー、これは……僕の予想がビンゴっぽいですね」
それに先頭行く明人も同意する。
死骸の臭いは、過去にも、下水でも嗅ぎ慣れている。
「つくづく呆れるな。どうにもこの先でやってるのは、指輪の研究だけじゃなさそうだ」
ふと過去に思いが引き寄せられた。ヒューム、そして研究。
混血を作るために実験を繰り返したヒュームがいた。不死を作り出した研究所があった。
なぜ、どうして、いまさら。断ち切ったはずの禁忌の業をグラーグンが、こうまでしてつづける理由が見えてこない。
進むだけ進んだ分どんどん臭気と熱気が強くなっていく。
酷く狭苦しい階段の1段1段を足で確かめながら降りていく。暗がりで壁に手をつたい、肩を荒い石にこすりつけながら進む。
重力がなければ上か下かもわからない、ひりつく黒。すれ違えないということは隊列を整えることはできない。ただ愚直に、おぼつかない足どりで1本の階段を降りていく。
伸ばした手に突き当たった壁は、岩とは別で木の感触。漏れてくる不気味な灯り。
それを明人が押し開いたとき、ちょうど背後からぼつりと囁きが木霊した。
「ほぉら、やっぱり……。これは覚悟を決めたほうがよさそうですよ……」
忌むべきは、ここが教会の真下だということ。実働部隊が目指した先は、教会ではなくその地下にある。
世界に禁じられた研究をおこなうための実験施設。祭壇に祀られた神格をこき下ろすような非道がここにあった。
『聖都では城を開放して祈りの場としているわ。それなのに城前の広場に教会がある。オカシイと思わない?』
Sっけたっぷりにメガネを直す姿は、理路整然としていて非常に得意げ。
『フフッ、まるでどこいらからの頻繁なアクセスをしやすくするかのようよ。ねぇ? そう思わないかしら』
ミリーナがエルフであったから立ち並ぶ異物に気づけたのか。
はたまた拡散する覇道の意思、グラーグン・フォアウト・ティールによって緻密に隠し通されてきたのか。
どちらにせよパーティーのやることは、変わらない。暗がりの穴に、敵は墓穴を掘ったのだから。
先頭を行く明人は、急く足を押さえて洋館の内部へと侵入した。その手には、薬指を切り落とした鉛入りの革手を備える。
「秘密の穴ぐらか。どいつもこいつも考えることは皆同じだな」
部隊全員が体内マナをもたぬとなれば、《ライト》の魔法は使えない。闇を吸って闇を吐く。
「まー、碌なことにはならないだろうねー。なにせ研究所だし、いい思い出がないなぁ」
行き着く先は、奈落の底に鬼がでるか蛇がでるか。はたまた獅子の可能性もある。
「でも、やらなきゃならないんです……! サナとルナ、それにヒュームの未来のためにも……!」
無力な実行部隊は、敵の研究情報を掠め盗るために、各自にできうる方法で勇姿を顕にした。
悲鳴。そして、反吐がでるような濃い血の匂い。
まるで蒼の指輪に導かれるように。男たちは、教会の地下に広がった不潔な洋館へ挑む。
……………
心温まるレビューをいただきました。
とても励みになりました。
本当にありがとうございます!
なので、お礼と言ってはなんですが
つづけての紹介が入ります
英雄の孫 明人の姉弟子 のじゃロリ
ラキラキ・スミス・ロガー
身長:135cm 体重:36kg B70 W54 H66
年齢:153才
性別:強制幼女
種族:ドワーフ
能力:鍛冶
家事
趣味:祖父の背中を見つめる
もしグラマラスだったらを妄想する
好き:家族(祖父以外の亡くなった家族も含む
ものづくり
嫌い:腑抜け
諦めること
自分の体格
注釈:バーバリアン級のすごい力もち
作中でお漏らし第1号
将来の夢はお嫁さん
出会いの一コマのSS
……………
ラキラキ「なんなのじゃこれはぁぁッ!」
ユエラ「そんな格好で外にでちゃダメよ! ほら早くこれを履いて!」
ラキラキ「い、いやじゃ! そそそ、そんな卑猥なパンツを履くなんて変態の所業じゃ!」
ユエラ「――んなぁっ! 私が変態って言いたいわけ!? アンタも目くらい逸らしなさいよ!」
明人「大丈夫。男と違って人体構造上、上からはなにも見えないから」
ユエラ「そういう問題じゃないッ! モラルとかデリカシーの話をしてるの!」
……………
次は、シルルか
テレーレか(確定
Unknownです(確定
気分次第でお漏らし第2号もあるかもしれません
それではっ




