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【完結】あの子は剣聖!! この子はエルフ!? そしてオレは操縦士-パイロット-!!!  作者: PRN
7章 あの子は大きい この子も大きい そしてオレはもっと大きい

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136話 とっても意外な来訪者と生存者

混血はエルフの輪に加わって

にこやかに笑う


再会と

そして、再会


それは甘えか鞭か


優しさか

「ユエラちゃんまたねー!」


 これで幾度目かの足止め。元気よく走り去っていく少女エルフをユエラは、にこやかに手を振って見送った。

 そんな光景を明人は、リリティアの手にぶらさがりながら見守る。

 ワイワイガヤガヤ。生き生きとしたエルフたちに満ちる市場でも混血は、よく目立つ。ゆえに、発見したエルフたちが意気揚々と語りかけてきた。

それをユエラは、花咲くような笑顔で応対する。

 自らが大好きなエルフたちに囲まれて笑うハーフエルフを見て明人は、思う。もっともこの戦争で変わったのはユエラなのかもしれない、と。


「ごめーん。またせちゃったわ」


「いえいえ、せっかくのお友だちとの交流なんですから気にしなくていいですよ」


 外套の裾を波打たせながらユエラがこちらに駆け寄ってきて、リリティアもほがらかな笑みで歩きだす。

 そして、明人はずりずりと引きずられる。

 スニーカーの踵で道の苔が削れ、まるで車輪が通った後のような轍が残っていく。


「大丈夫っ! オレも今きたところだから! 2時間まったけど!」


「は? 何いってんのアンタ? つーか、自分で歩きなさいよ……」


 エルフたちの注目を浴びながら異色を放つ1人とふたりは、しばらく森のなかの小さな市場を回った。

 地球とは異なる見た目の野菜や果実の店、木工製品など様々な物がシートの上で売られている。

 明人は、リリティアに引きずられながら尋ねた。


「さっきから似たような場所ぐるぐるしてるけど、どこに向かってるんだ?」


「薬師友だちのところなんだけど……。おっかしーわね? 今日は、お店ださないのかしら」


 木陰なのにも関わらず手でひさしを作ったユエラは、辺りをキョロキョロと見渡す。

 ふと、その時。市場にがたがたと重いものを引きずるような響きが鳴った。

 自然に侵食された敷石の上を羽の生えた馬が箱を引いてやってくる。


「馬みたいな家畜もいるのか……。てっきり移動も荷運びも全部魔法でなんとかしてるのかと思ってた」


 驚いて思わず立ち上がった明人は、地球同様に異世界でも生き物を飼う習慣があることに感動を覚えた。

 その隣でリリティアが不思議そうに首を傾げる。


「明人さんの世界にも、ひんひんかぽかぽがいるんですか?」


「別だな。うん、別々。オレの世界にその名前の動物はいない」


 もはやネーミングセンスに突っ込む気力すら失った明人は、投げやり気味に話を打ち切った。


「リリティアが勝手にそう呼んでるだけよ。でも、馬ならともかくペガサスを使うなんて珍しいわねー。お金持ちかしら?」


 そう言って、ユエラは木々の隙間をギリギリで通る高級そうな馬車を見つめた。

 売買に励んでいたエルフたちも商品を片手に立ち止まって馬車の行く手を遮らぬように開いていく。

 白い羽馬を操る御者(ぎょしゃ)は乗っておらず。それでも器用に車を木にこすらぬよう歩く様に皆の眼が釘付けになった。

 そして、おもむろに明人たちの横で馬車は停止する。

 白い羽馬がぶるぶると鼻をふかして、広げられた真っ白なシーツの如き羽を2度3度、羽ばたかせた。

 刹那の間にバタンと車のドアが強引に開け放たれて、小さな影が飛びだしてくる。


「ふにゅうううッすうううっ!」


 ぽふん。腰に巻いた布から伸びるすらりとした足が、煙をだしてぬらりと光る魚の尾っぽに変化した。

 明人目掛けて小魚がダイブしてくる。


「――んなっ!? ピチチ!?」


 リリティアから手を離して明人は、飛来してきたマーメイドのお姫様をキャッチした。


「ふにゅうッす! 生きてたッすううう! あれから音沙汰なくて心配してたッすよおおお!」


 水平のような白い衣服を纏ったピチチ・ナルセル・ランディーは、鼻声で明人の晒された胸板部分に頬をこすりつける。

 ふわりと香る女性特有の花の如き甘い匂いと魚臭さ。涙で濡れたマリンブルーの瞳とピンとたった耳ビレは、マーメイドの特徴。


「な、なんでオマエがエルフの村にいるんだ?」


 明人は、動揺しつつもしがみついてくる小魚をお姫様のように抱っこした。


「なんでじゃないッすよ! あの闘いをしてから7日ぶりの再会なんすよぉっ! もっと私にいうことあるッすっ!」


 すっぽりと。明人の腕に収まったピチチは、赤子のように体を丸めてまくしたてる。


「ごめんごめん。でも、オレも昨日あたりからようやく動けるようになったばっかりなんだよ」


「ううう……! 絶対に許さないッすぅ!」


 たまらず謝る明人にピチチは、唇を尖らせてみずみずしい頬を厚い胸板にこすりつけた。


「あれっ? オマエって、そんなにオレのフリークだったっけ?」


 久しぶりに再会を果たした犬のように懐くピチチに明人は、頭を悩ませた。

 どちらかといえば臆病者と思われていた記憶のほうが多いのだが。

 混淆(こんこう)の祠にて、死線と共に乗り越えた人間の相棒である小魚だ。骨と臓物の召喚獣、カオスヘッド討伐のために一役買った小魚は、英雄と呼ばれるだけの働きをしたのは間違いない。

 あれ以降、明人は治療と静養のために誘いの森へ。別れをいう(いとま)さえもなく、その後の呪いによって互いを傷つけあった複合種がどのように付き合いを正しているのかすら不明だった。

 なお、にゃにゃにゃのニーヤが誘いの森にやってきているのは、ちょっとまだ恥ずかしくて皆と顔を合わせにくいから。


「ワタクシたちは、本能によって認めたかたを親愛します。娘もきっと本能で貴方様に心を許したのでしょう」


 大きな車輪とロイヤリティ感が溢れる赤と金の馬車のなかからもうひとりのマーメイドが降りてくる。

 天女の如き翡翠色の羽衣が緑の風にたゆたい、流水のごとく凛として、優雅な立ちふるまいの母。


「こんにちは、複合種の架け橋となった英雄の皆様。あれからお体のお加減のほうはいかがでしょう」


 マーメイド王の妻であるところのピジャニア・ナルセル・ランディーは、はだけたなだらかな撫で肩を寄せてぺこりと挨拶する。

 とても子を産んだとは思えない美貌。見物していたエルフたちは、目が覚めたかのように眼を丸くしてさざ波だった。

 水の麗しさを想起させる飾られた青の踊り子の如き衣服。幅広の腰に巻いたパレオ切れ込みから伸びる細長い足はすらりと長くヒールも相まって白木の枝のよう。肩をバッサリとだした華やかなれど艶美な衣服。ぽっかりあいた腹部には、ネジ穴のようなヘソがちょこんとそこにいる。

 戦時中だったのでまじまじとピジャニアを観察できなかった明人は、足元にすらいることが許されないほどの美貌にただ圧倒された。

 礼に礼を返すように、リリティアも腹の下に両手を添えてぺこりと頭を下げる。

 慌ててせかせかとユエラも、緑碧玉の髪を振り乱して頭を下げた。


「この通り、みんな元気ですよ。とはいえ、伏せっていた明人さんただけですけどね」


「わ、わわ、私たちはっ! ボサーっとしてただけですっ!」


 そんなふたりを見てピジャニアは、染み色ひとつない手で口元を隠して控えめに笑う。

 大人の女性。または、母。ゆるく弧を描く眉と長いまつ毛は優しげで、長い髪は先端がゆるくウェーブを描く。太陽の如き暖かな印象を受ける。


「ふふっ、明人様。このたびは貴方様の鬼神の如きご活躍によりおおくの命が救われました。どうかもう一度お礼を」


 そう言って、ピジャニアは艶容な仕草で腰をくの字に曲げて礼をする。

 その礼儀作法の一挙手一投足にくらくらするような色気が入り混じっていた。

 美人を前にして動揺を気どられぬよう明人は、荒波立った心を強引に鎮めて冷静に対処する。

 方法は、妹の夕と過ごした過去を思い起こすこと。そうすることで兄として生きた自分をとり戻すことができた。


「いえいえ、こちらとしても皆様が無事であってくれて、非常に、よよ、よろこ、よろこばしい限りです、候」


「ふにゅうがなんかぷるぷるしてるッすよ?」


 兄としての自分をとり戻すことができなかった。

 そして、明人の視線を逃した先にあった馬車のなかで、もうひとつのもぞもぞと動く影。


「ん? ――ッ!?」


 明人は即座に飛び退いた。まだ癒えきっていない筋肉が鈍い痛みを発する。

 その動きに合わせるようにしてリリティアとユエラの表情にも緊張の色が浮かぶ。


「なんでテメェがここにいやがる?」


 明人は馬車のなかからでてきた女性にむかって語気を荒げた。


「――あっ! ダメっす! ふにゅう落ち着くッすよ!」


 ピチチが小さな手で明人の頬を包むように抑えて静止をうながす。


「落ち着けると思うか? なにせその女は……――いってええええ!?」


 上着の合わせからはだけた胸に激痛が走って明人は、悲鳴をあげる。

 見れば、歯を立てた小魚が噛み付いていた。


「明人。落ち着いて」


 痛みに苦しみもがく明人の横を過ぎてユエラが悠然と通り過ぎた。

 前にでると、影に向かって語りかける。


「その調子だといい具合に収まったみたいね」


 ユエラは、救済の導である酔狂なる愛の化身アルティー・E・メル・ランディーに微笑みかけた。


「あんなハレンチな服よりもそっちの格好のほうがよっぽど似合ってるわよ」


 それを聞いてか、アルティーはもじりと身をすくめて黒に包まれた豊満な胸に手を添える。

 白と黒のゆったりした袖のついたくるぶし丈のローブのような服。それはまるで修道女のように肌を隠して世の中的に整えられている。とても以前の布を前と後ろに貼り付けた下品な格好と比べられぬほどに。


「そのお声は……」


 よく通った透明感のある声。アルティーは、手探りで馬車の枠を掴み、杖を使って時間をかけながら緑の村道へと降り立つ。

 しばしそれを眺めてから。ユエラは、改めて自己紹介をする。


「私はユエラよ。ユエラ・アンダーウッド」


 アルティーの耳びれがひくりと僅かに動いた。

 しかし、ユエラは自身のくびれのある腰に手を当て居丈高ぶりながら淡々とつづけた。


「見ての通りの混血よ。まあ、今の貴方には見ることができないでしょうけど」


 その彩色異なる視線が向いた先。アルティーの顔に縛られた白い布は、目隠しをするかの如く巻かれていた。

 見たことや聞いたこと、そしてしでかしたことの凶悪さたるや。アルティーの魅了の魔法によって命を落とした者は数知れず。

 明人は、ユエラに詰め寄って問う。


「ユエラ……。オマエまさか知ってて生かしたのか?」


「そうよ。アンタ、棺の間で狐たちを覚えてる?」


 魅了されて呆然と佇む狐たちの姿が明人に、怒りの感情を思い起こさせる。

 それ以外にも100年苦しんだドワーフやにゃにゃにゃへの魅了など、魅了魔法の被害者をあげつらねたらキリがない。


「覚えてる。覚えてる上で、なんでだ……? コイツは救済の導だぞ? 信念やらを武器に多種族を殺戮する気狂いだろ?」


「そうね……。でも、思いだして。狐たち、治療されてたでしょ? あのエルフの女が治療すると思う?」


 闘いから逃げた女エルフの小ずるくも妖艶に笑む姿が、明人の頭の中に去来(きょらい)する。


「あー、……アイツが治療なんてするわけがないだろうなぁ」


 憶測なれど経験論だった。

 他者の命を弄んで屈させる。およそ誘拐事件の被害者だからこそ胸を張って断言できるのだろう。


「そっ。だからちょっとだけサービスで毒を薄くしたの。それにトドメを刺すのは私じゃないってね」


 そう言って、ユエラは指をくるくると回しながら再びアルティーに微笑んだ。

 棺の間で呆けた狐たちの手首に巻かれた包帯。その唯一見せた厚意だけでアルティーは、生きている。

語らずとも語ってしまうSSコーナー

……………

「歯型がついたッすねぇ」


「おもっクソ噛みやがったからな。すげぇ痛かった」


「あの変態の服は着てないんすか?」


「変態っていうな。いや、まぁぴっちりはしてるけどさ……」


「ところで、なぜ明人様はワタクシの顔を見てくださらないのでしょう?」


「あー……アイツ、慣れてない相手だと結構目を合わせないんですよ」


「そうなのですか?」


「そうですね。それに、未だに私の胸ばっかり見てるときもあります」


「ああ、なるほど。どおりでワタクシも胸ばかり見られてる気がしてました」


「いや、たぶんピジャニアさんが相手だと私も……眩しすぎて、ちょっと目を見れないです」


「どうしてでしょう? 戦争中は、皆さんによく話しかけていただけたのですが……」


「って、お母様がいってるッすよ?」


「バレてたのかぁぁぁ……」


「女は相手の目を見て話すッす。バレバレっす」


「いや、ピチチよ。言い訳を聞いてくれ」


「いいッすよ。さぁ、御託を並べるッす」


「オレとユエラが対面する」


「ふんふんッす」


「そうなると1番距離が近い部位はなんだ?」


「うーん……、突きでたおっぱいッすねぇ」


「オレと1番距離が近い部分を見るのは当然とは思わないかね? ピチチ君」


「ほー、見事な御託ッすね。言い訳ですらないッす」


「……どおりで、明人さんとよく目があうわけです……」


「あ、リリティア。違うよ? 放っておくとなにするかわからないからいつも見てるだけだよ?」


「――つまり、私のことをいつも見ているってことですねっ!?」


「あー、うん。……それでいいか。言葉の響きだけは間違ってないし」

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