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【完結】あの子は剣聖!! この子はエルフ!? そしてオレは操縦士-パイロット-!!!  作者: PRN
6章2節 あの子はちょろい この子の愛 そしてオレは吸いまくる 

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126話【VS.】後悔に溺れる凶獣 にゃにゃにゃのニーヤ 2

操縦士と剣聖

敵はL級の猛獣


闘いのなかで

己の力を紐解いていく


しだいに鞘と剣は

ひとつになって踊る

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

 猛スピードで接近してくる獣に対して左腕を立てて突きだす。

 その手首に装備しされているのは、ドワーフ解放に貢献した金蛇の腕輪だ。魅了吸収の発動の条件は、意識して思うこと。想像によるスイッチング。

 ヘルメリルの教えでは、言葉にしたほうがより切り替えがよいという。そして、この腕輪の名前もすでに決まっていた。


「《チャームスポイト》ッ!」


 その声に反応するかの如く。金蛇が開眼して全体が淡く輝きを放ちだす。

 ガキンという衝撃と激しい風圧によって聖水が弾け跳ぶ。下の白い石床が晒しだされた。

 ニーヤとリリティアが1回のアプローチを交わすだけで足元の聖水が干潮の如く消え失せ、また満ちる。


「――ハァッ! その腕輪の名前は……みりょみりょきゅうきゅうですってばぁッ!!」


 飛びかかってくるニーヤを7分の剣で片手間にいなし、ついでのようにリリティアが片頬を膨らませて抗議してくる。

 明人に与えられしエーテル国の神より賜りし宝物(アーティファクト)、その模造品、《マナレジスター》。さらにもうひとつの魔具の名はチャームスポイトと決定した。

 半径およそ5メートル前後。射程内に入ったものにかけられた魅了の魔法を吸い寄せて保存する。そして、装備者には魅了無効の加護を授ける。さらに《マナレジスター》とセットにすることによって魅了の魔法をも周囲に発散させることもできてしまう。

 世界最強の魔法使いといわれる呪術師、ヘルメリルの作りだした一品ものの貴重(レア)な装備である。魔具と魔具のコンボによる第一の被害者は、移動要塞モッフェカルティーヌで留守番中だ。


「にゃああああぐぅぅぅ!!」


 ニーヤの体から漂う光の鱗粉が金蛇に吸われていく。

 通常であれば数秒ですむ作業。少なくともドワーフたちはそうだった。


「にゃがぁ! にゃにゃにゃぐああ!」


「ふッ! ほっ、よいしょ!」


 ニーヤによる両碗の猛ラッシュをリリティアはすべて受け流していく。

 右の強打を起点に上下左右自由自在。1打1打ごとに重々しい地鳴りのような音が木霊する。

 L級とL級の目にも留まらぬ斬撃と斬撃による攻防だった。リリティアはとにかく剣で爪を捌き、ニーヤは毛むくじゃらの雄々しい腕で連打を叩き込む。


「相変わらず変則的な攻撃方法ですね。野性的とも言えますが」


 くるりとスカートと大きな三つ編みを波立たせて剣聖は、転回転回と繰り返す。

 左からの爪を防げば時計回りに、右からの蹴りを受け流して逆周りに。まるで優雅に銀閃を従えて踊っているかの如き美しい体捌き。

 にゃにゃにゃは、剣聖へ確実な死をもたらさんといわんばかり。時に羽で空に飛び立ち飛来して、距離を開けば弾かれたパチンコ玉のように飛びかかる。


「……《トランス》にゃ」


 ぼそり。攻めの気合とは違って冷水のような冷たい声。量の腕が白い短毛へと変化する。

 代わる代わるに体の部位を変えてニーヤは、あの手この手で攻めつづけた。

 そんな超常的ふたりの闘いは、常に場面が変わる。

 ばしゃばしゃと水を踏んで明人も食らいついた。燐光の帯は川が上から下へ流れるように左腕へと吸収される。

 刹那。猛る獣の瞳は、剣聖からぐるりと外され人間へと向けられた。野性的であるがゆえの動物的な気まぐれ。


「にゃ? ――ニャアアアゴ!!」


 そして、飛びかかる十指の鎌。


「ッ――!」


 攻撃の届く寸前の瞬間。明人は、世界が止まったと錯覚した。

 スローモーションカメラを使った映像のような迫りくる鋭利な爪が垣間見えている。

 玉のようになって宙で(きら)めく聖水と汗の飛沫ひまつが視覚可能なほど視力が鋭敏を示す。


――マナレジスターの発動は間に合わないか。


 そんな奇妙な現象のなかで、蒼を纏った者だけが自由だった。

 がっしと。毛深い手首を掴んでぶん投げる。


「にゃっ!?」


 慣性と力量と重力を乗せた一撃。その威力は、使用した本人すら後悔を覚えるほどに凄まじい。


「にゃがッ!? ――ぐにゃァっ!」


 ニーヤは、したたかに背を打って聖水が柱のようにトゲ立って波を作る。しかし、即座に地を蹴って距離をとった。

 さらに仕切り直しての一撃が風を切って再度襲いくる。


「させませんッ!」


 同時に白い風が前を吹いて衝撃派と火花を散らす。

 リリティアは、チラリとこちらに向かって目を丸くした。そのさなかでも剣と爪がこすれてギリギリと激を奏でる。


「今の動きなんですか!? 私でもギリギリとらえきれるくらいの速さでしたよ!?」


 無意識に体が動いたというよりは、生にしがみついたともいえるかもしれない。

 事故の瞬間に周囲がゆっくり見えると、体験した人間は口にする。しかし、同じ体験をした者ですらあの止まった時間を説明することができなかった。

 必死一撃を、必死の反応で返しただけ。そして、明人は蒼を纏った手を見ながら震えた。


「まさか……この力って反射神経まで強化するのか……?」


 今まで停滞していたにも関わらず明らかになっていく能力の真実。

 すべての始まりは、愛機の自動モード変更だった。

 それは長い時間を共に生きる操縦士ですら知らぬ機能。超過技術(オーバーテクノロジー)

 F.L.E.X。限られた者だけが使えるようになった人間の秘めたる力。使える者は限りなく少数。

 方舟の建造と優秀な種の選り分けるもある。方舟計画実行中の人類が、地球の事態を(かんが)みて研究が進んでいるとは思えず。加えて、力の発現に用いる薬が麻薬ときている。どこぞから仕入れた物か。その名まで知らず、勝手にフィラメントと呼ばれて忌み嫌われている。


 かといって、能力を発現できうるようになった者たちすら優秀とはせず選ばれなかった。

 突如降り掛かった異次元からの招かれざる客とそれを予見したいたかの如き人類の動向。

 現代の推移を駆使しても理解できない超過技術である。

 ルスラウス大陸に降り立った者には、それらすべてがもはや遠く届かぬ光のように思えた。

 淡い蒼を透かして己の手を見つめ、明人は握りしめる。


「はっ、知ったところでどっちにしろ歩く死体か……」


 ぽつり、と。勁草(けいそう)の如き硬い信念を漏らす。

 死にゆく友を思う約束こそが今の明人の原動力だった。

 もう少し早く気づければ世界が変わったかもしれない、などという甘い考えは脳をかすめてあぶくと消える。


「ニーヤとの距離が離れすぎて魅了の吸収がうまくいってないな」


 しかもちょうど腕輪に線の如く引かれた光の帯が弱まっていく。射程範囲外。

 明人は、腹を決めて剣聖のもとへと走った。あの現象を思い通りに引きだせれば、もう負けない。


「オレができるだけリリティアの近くにいられるように立ち回る。だから頼んだ」


 リリティアは、駆け寄ってくる明人を見て、敵の攻撃を弾いて吹き飛ばす。攻守を同時に行えれば他愛もない相手だというのも頷けた。


「ふふっ。では、明人さんも一緒に踊りましょう。……私についてこれますか?」


 その細まった金色の瞳は、挑戦的。あまり見られぬ冷然とした美の微かな笑み。

 対して明人もその挑戦を受けるべく、口角を上げて笑んだ。悪役の如き人相の悪い怪しげな笑み。


「たまにはついていくのもいいな。最近は作戦立案やら先導やらで立役者っぽくてな、新鮮味がないんだ」


 1人とひとりは、互いの笑みに笑むと敵の襲来を真っ向から受け止めた。


「にゃああらがああッ!」


 ニーヤの疾風の如き乱打が刻まれる。

 対象が増えたところで勢いは劣るどころか増すばかり。


「ふっ!」


 光の帯をゆらがせて、黒い瞳をちょこまかと動かし人間は柔軟に躱す。

 フレックスの恩恵によりおよそ人ならざる速度で、飛んで跳ねてかすめて、魅了を吸引する。

 隣でぴったりと寄り添う剣聖は、ときおり合間合間で折れた銀閃を繰り出して明人を守る。

 明人が下がればリリティアが敵の間に潜り込む。壁となって明人が安心してニーヤとの射程圏内を確保しつづけられるよう尽力する。

 自然と1人とひとりの動きは、肩を並べて闘う両者共に、ぴったりとはまっていった。

 猛烈な攻めの防御。バシャバシャと舞い踊る3つの影とそれらを彩る聖水の飛沫がアクセント。広い水平線を舞台に天と地の狭間で生と死が情熱の舞踏のリズムを刻む。

 次第に息が上がってパイロットスーツの下では洪水のように汗が吹き出している。それでも構いなく明人は、笑む。曲の終わりがくるまで。

 楽しいという感情はない。ただ、支えられているという安心感と胸の奥でくすぶる熱い滾りが体を突き動かした。

 とはいえ、それでも異常な事態であることには変わりない。


「ハッ、ハッ……! 長くないか!? まだ吸いきらないのか!?」


 長過ぎるという疑問。吸引を開始して途切れた時間はあれど、とうに数分は経っている。

 ドワーフ個体の魅了解除と比べれば10倍近くにも及ぶ。


「恐らく魅了を重ねているんです。1回の命令ごとに掛け直してすごく濃ゆーくなってます。語りかけても双腕のときとは違って一切反応を示しませんでしたし」


「なるほど……。つまり、にゃにゃにゃに色々命令して複合種を痛めつけてたわけだな?」


「確証は持てませんがあらかたそうでしょうね。そして今は時間を稼ぐように命じているのかもしれません」


 襲いくる爪、爪、打撃、打撃の大嵐。悠長に語らいながらも踊りはつづく。

 はりきりすぎて体力が保たないかも、と明人が後悔をしはじめたその時だった。


『さい――に――さい――ごめんさいにゃ……』


「んっ、なんだ? 声?」


 鼓膜を介さず直接脳に伝わってくる不思議な感覚だった。


「これは無声会話(テレバシー)ですね。魔法ではなく、野生の状態を初期とする種族が得意とする技です。きっと、魅了が解けて自我が戻り始めているんですね」


 頭のなかで繰り返し繰り返し謝罪が紡がれていく。

 それがいつしか暴風の如く吹き荒れる。


『ごめんにゃさいにゃごめんにゃさいにゃごめんにゃさいにゃごめんなさいにゃ……!』


 きんきんと大音量の謝罪の群れだった。

 ボリュームを間違えた上に、繰り返す様はジャンク品のラジカセのよう。

 脳幹から響くような大絶叫に明人は、眉をしかめ1度戦線離脱を余儀なくされる

 慌てて耳を塞いだ。が、それでも精神攻撃の如き音は変わることはない。


「うるせえええ! まずその謝ることを謝れェ! いやっ、もうやめてくださいお願いしますッ!!」

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