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【完結】あの子は剣聖!! この子はエルフ!? そしてオレは操縦士-パイロット-!!!  作者: PRN
6章2節 あの子はちょろい この子の愛 そしてオレは吸いまくる 

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122話【自然女王VS.】酔狂なる復讐の化身 アルティー・E・メル・ランディー 3

絶対防壁と絶対的な神の杖

対するは自然女王ネイチャークイーン


自然魔法使いネイチャーマジシャン

混血

そして、薬師

 白い足、健康的なふとももを晒してもお構いなし。野うさぎのように軽快な動きでユエラは、外套の裾をはためかせた。

 バシャバシャと水の弾ける音が鳴るも不思議と抵抗や感触はない。しかし、水平線の写し鏡は上下感覚を鈍らせる。

 まるで雲を踏むような中空での決戦場だった。


「《せせらぎの精霊たちよ。清涼なる水の力で穢れを浄化せしめよ》」


 麗しげに紡がれる詠唱は、環境マナを一点に集合させて発現させる《エピックマジック》である。

 神に守られし水球のなかでアルティーは、優美に魔法を(うた)う。


「《エピック・グランドウォーター》」


 環境マナによって高められた魔法は、段階をひとつ上へと押し上げた。

 地より湧き上がる水はまさに津波の如し。荒れ狂う海を想起させる達人級の魔法は、水の壁が倒れるようにして襲いかかる。


「くっ――! 《ストレングスエンチャント》! 《プロテクト》! 《プロテクト》! 《プロテクト》!」


 赤透明の皮膜を頭から被るとユエラは、1枚の六角形を要所要所に発現させ、大地を蹴った。

 それから三角跳びの要領で水面に映った空から羽ばたき上へ、さらに上へ。《プロテクト》を交互に飛んで天空へと駆け上がる。

 そして、間一髪大波の先端、酸素と水の泡立った気泡部分を突き抜けて敵の攻撃を飛び越えた。

 ずぶ濡れになった衣服は、ユエラの大人びた肢体の凹凸を顕著に際立たせる。さらに全身をなぞるように纏った赤い皮膜は、身体能力の向上効果のある支援魔法ストレングスエンチャント


「やってくれたわね……!」


 軽快に着地を決めたユエラは、尖った目でアルティーを睨みつけた。前髪の端で結った小さな三つ編みが魔法の余波で穏やかに揺らぐ。

 敵は鉄壁の要塞のなか。さらに神より賜りし杖をも支配している。

 脳は細胞で焦りを巡らせ、網膜には勝利がうっすらとも映らない。受け身にならざるを得ない最悪の事態。

 敵の扱うのは最高級(グランド)魔法と同格か。世界で、ほんの一握りの者がいたれる境地だった。

 魔法を日常的に使うのが主とさしているルスラウス世界で魔法とは、呼吸することと同義の行為である。

 種によって得意不得意はあれど誰もが生まれもつ力。あるものは魔法を剣や鎧に込めて特殊な細工を施すのに長けた者もいれば、身を砕くほど研究をして魔法に特化したものもいた。逆に、使っているくわは光るが魔法を使わずマナの上限を壁を嘆きのうのうと力を腐らせる者たちもいる。


 そして、大抵はオリジナル魔法、《レガシーマジック》に憧れるもの。

 ユエラが教科書魔法と銘打った誰もが多用する上中下。《ローウォーター》、《ウォーター》、《ハイウォーター》などの段階的な魔法。

 それでも極めれば災害レベルの域へと辿り着く。

 ツヤのある唇から漏れる呼吸の音は、やや荒く。それでも引くわけにはいかず。挫けそうな心を奮い立たせてユエラは、再度立ち向かった。

 とはいえ、一筋縄ではいかぬ相手。腰に帯びている蓑に濡れ手を突っ込み小さな粒を自身の周囲へと撒き散らす。


「はぁ……はぁ……。《グリーンウィップ》ッ!」


 大地で寝ていた蔦たちがもう一度起き上がり、色鮮やかな虹色の水球へと襲いかからんとする。

 さらに、ユエラの巻いた種が芽を吹く。

 時を加速するかの如く疾風怒濤の成長を終えると、さらに楽しげに鑑賞している敵へと襲いかかった。


「ふふっ、むだですよぉ? では、そろそろ幕引きとしましょう。《灼熱の精霊たちよ。灰燼かいじんすらをも焼き尽くせ。燃え滾る炎蛇の降臨》」


 若蔦と青蔦の螺旋が迫るなかでアルティーは、さらに歌を紡ぐ。


「《エピック・グランドフレイム》」


 突き出した杖先から放たれたのは、もはや炎ではなく炎の織りなす光だった。

 水分を含んだ蔦は燃えない。しかし、光に巻かれた自然の螺旋はいとも容易くその姿を消失させた。消滅ではなく抹消。


「……こ、こんな! こんなの……!」


 迫る白光にユエラは、ぞっと寒気を覚えて一瞬足を凍りつかせた。その僅かな恐れが隙を作る。


「し、しまった! くっ……《ハイプロテクト》、《ハイプロテクト》、《ハイプロテクト》、《ハイプロテクト》!」


 連鎖性のヘックスが段になって壁を成し光を拒む。それと同時に体内マナも驚くほどに減少していく。

 自然女王形態ならば回復はすれど、減るものは減る。

 迫る白光に1枚目の壁は簡単に砕け、2枚めの壁も1枚めと変わらぬ速さで溶けていく。


「お願い耐えてっ! 《ハイプロテクト》、《ハイプロテクト》、《ハイプロテクト》!」


「クスクス、無駄ですよぉ? これが私の愛の結晶ですのでぇ」


 悲痛な叫びとともに発現するヘックス。肌を刺すような熱と髪の焦げる臭い。長耳が腐り落ちそうなほど不快な声。

 僅かに持ちこたえるも白光は、止まらず。


「さぁアナタも輪廻へと旅立つときですぅ……私の種々諸々への熱い熱い――復讐心あいでっ!」


 そう言って、己の身を抱くとアルティーは物狂いのようにゲタゲタ笑う。

 そして、ユエラは決断した。ここで死ぬくらいならば、ここで友であり恩でもある1人とひとりを共に輪廻へ彷徨うわせるくらいならば、と。

 あれは、たった一言の偶然だった。それが意図して伝えられたのか、はたまたそうでないのか。

 とにかくユエラは、一発勝負伸るか反るかの賭けにでた。


「あららっ? お手上げですかぁ?」


 耳びれを機嫌よさ気に扇いでアルティーは反った尾っぽの先をひらひらと揺らした。

 対して、ユエラは意に介さず。

 超高温の白光を受け止めるかの如く向かって両の腕を伸ばす。そして、熱で汗ばむ手を開き、白い10指に体内マナを込める。

 震える膝を気合で押し留めユエラは、始めた。


「《ハイウォーター》ッ!」


 左の手から吹き出す間欠泉の如き水の撃竜。

 さらに繋げる。


「《ハイウォーター》ッ!」


 右の手より発現した怒涛の水の噴出。


「なっ……なに? なにをしているのですぅ?」


 目端にほくろのある眼にアルティーは、驚きの色を浮かべた。

 両手での魔法の合わせ技。ユエラとてこんな手段を思いつくとは数時間前までは想像もしていなかった。

 古書にも魔法書にも書かれていない恐らく生まれたばかりの偉業。それは魔法の多様性を縛る固定観念によって封じ込められていたのだろう。

 そして、それを生み出したのは果たしてひらめきの力をもつヒュームの血が(しか)らしめたのだろうか。ユエラにはわからない。

 それでも確実に種を植えた者が入るのも事実。


『ユエラは片手間でいいから蔦で気絶した連中をどけてくれ。もしワーカーで踏んだら死ぬ』


 複合種との接戦の際に、嘘と嘘の間に生きる臆病者からの発案。防御魔法の使用中に別の魔法を使えという無茶振り。

 その不自然さたるや。ヒュームに単独で龍族へ挑戦しろといわんばかりの異常性である。さらに特殊すぎた。つまり、歴史をて発達停滞した魔法、それの使用者だからこそ思いがけない事態である。

 しかし、ユエラにはそれができてしまった。やっている途中でその事実を突きつけられ、ひとり混乱の渦中かちゅうに放り込まれるも誰も気がづかず。

 必死に複合種の矢嵐を防いでいたユエラの耳に届いた阿呆ともとれる声。言葉の通りに、意識せず、なんとなくやったらできてしまっていた。

 そして、混血は偉業に名づける権利を得た。

 

「はああァッ! 《デ ュ ア ル ――」


 混血、デュアルソウル。エルフの女王が名づけてくれた。当人が気に入っているかは別として光栄なあだ名だとユエラは、一応信じた。

 地と天の狭間で、最強の剣と最強の盾を帯びた敵へ。混血は、初めて魔法を混合させる。

 混ぜるだけではなく、もう1歩上へ。


「《大自然の暴動グリーン・タイダル・ウェイブ》!!!」


 投げ、芽吹いた種。小さな命が爆発するかの如く成熟した。

 自然の津波は迫る敵の《グランドフレイム》をも呑み込み喰らい尽くす。

 魔法と自然調和。自然女王の大地の力に海洋の現象をつけ加えて発現させる。


「こ、これが……!? 混血とは……これほどのものなの!?」


 一面、無数の茨とともに波打つ緑の海。

 たゆたうが如き水球のなかでアルティーは、目前でおこなわれている奇跡にむかって目を剥いた。

 ミシリ。圧力によって幾数千もの線が聖壁へ駆け巡る。


「か、神の御業が!? 私の愛が……負けるとでもいうのですか!?」


 そして、その隙間から1本の若い細い蔦が狼狽するアルティーの眼前へと忍び込んだ。プシュッと胞子を水に溶かして彼は、役目を終えてしなびて枯れる。


「まだッ! 聖水は無限にあります! も、もう一度貼り直せれば――ウグッ!?」


 ユエラは自然魔法使いである。

 そして、さきほど散らしたのは自然魔法使い特製の魔種。

 その名の元は薬師を由来とした魔草の生成技術である。エルフたちの傷を癒やすために薬学を独自で学び、資源が豊富な誘いの森に住まう希少な魔法使い。

 魔草とは、薬草と薬草を調合して、マナで効能を増減させたものの総称。効能は、ひとつではない。傷も治す薬草もあれば病を治す薬草など様々。

 そして、薬草には毒を用いて毒を癒やすものもある。使用法を知らねば猛毒でも乾燥させたり水に溶かしたりすることで解毒薬にもなり得る。逆もまた然り。


「がっ、あ! ぎぃぃ――ごぼ……!」


 血のあぶくを吐いて喉をかきむしりアルティーは、尾をピンと伸ばしてもがき苦しむ。

 杖は手放し、美貌は歪み、穴という穴から血を滲ませ水球は徐々に血の赤へと変色していく。


 引いていく緑の波の中央。臓物を焼かれるあろう苦痛にあえぐ敵を前に自然女王(ネイチャークイーン)は、憮然と佇むだけ。

 小さな三つ編みは剣聖を真似てのおそろい。濡れた青竹のような深緑色の髪はヒュームとエルフのかけ合わせ。僅かに吊り上がった目立ちは、美を損なわず天を向いて必死に生きた証。

 大人びた豊かな胸をもちあげるように腕を組んだユエラは、ぴんとなめらかな指を反る。

 外套の裾は魔法の余韻ではためき、使用後に発生する鮮やかなマナのカスと寝そべった青々とした蔦よって周囲は森のように彩られた。まるで自然に溶け込む女性を描いた1枚の絵の如き光景。

 

「知ってるかしら? 水溶性の劇毒を含むその魔草は……使い方によっては痔の治療にも良いのよ?」


「そ、んな……! まだ、まだ……おわれ、なぁい……まだ、ころし……たりな……い……!」


「これが私からアンタに贈る最後で最大の愛よ。せめて安らかに眠りなさい。憎しみも差別もない清浄な輪廻へ送ってあげるから」


 弱っていく敵を背にユエラは、踵を返してその場をから離れる。汚いものはもう見飽きた、と。

 薬師は救うものであって奪うものではない。ずくずくと痛む胸に罪を感じながらも自然魔法使いは、待っている者の場所へと急ぐ。


「……ほっんと……バカ……」


 静かな呟きは何者にも該当せず、しかしすべてに対して投げられた侮辱の言葉だった。

 それは自分へのものか敵に対してのものか。あるいは世界への文句なのかも知れない。

 霞む視界にユエラは、ふらりと傾いた。

 マナの使いすぎによる精神的疲労が限界に近づいている。


「あーあ……もう……一生賭けても返せない借りばっかり。短命って嫌ね……」


 蔦と聖水の海に膝を浸して、彩色異なる瞳と閉じると瞼の裏には、ユエラの世界を変えたふたりの影。


「ごめん、ね……わ、たし……ちょっと、やす、む……。す、ぐ……おき、るか、ら……」


 そう言って、ユエラは蔦のベッドに沈み込み後味の酷い勝利を思う。



☆☆☆☆☆

語られぬであろうから語るSSのコーナー

……………

『ふんっ……ずいぶんと陰気臭いガキだな』


『こらっ! ダメですよメリー! ユエラもこっちにおいでー』


『ッ……!』ビクビク


『この黒い子はエルフの女王なんです。ですからユエラの女王様ですねっ』


『! ほ……ほんとに?』


『むっ? ふふふふっ、その通りだ!』


『ヒぇッ!?』スタタタ


『こら、なぜ逃げる?』


『メリーが怖いんですよ。そうでなくとも闇魔法を展開しているんですから』


『これは崇高たる私による立派なファッションというやつだ』


『……』ビクビク


『むぅ……仕方がない。解いておこう』シュウウ


『ほらほら。ユエラ、女王様にご挨拶ですよ』


『う、うん……』


『しかと聞き届けてやろう!』


『ひっ……!』


『メリー。アナタ学びませんね?』


『むぅぅぅ……』プクッ


『あ、あの、わ、わたしは……! はじめまして! ユエラです!』


『……むん? まさかそのマナ。貴様……混血の希少種か?』


『っ……は、はい……そう、です』


『ほお、初めて見たぞ。なるほどなるほど……なるほど……』


『あ、あのそのぅ……』


『しっ。ちょっと待ってると面白いことがありますよ』


『おもしろいこと?』


『むむむっ――ハッ! そうだ! 貴様はこれからデュアルソウルの名を授けてやろう!』


『えっ? あっ! ……えぇ?』


『混血に流れるふたつの種族! 魂! 神のいたずらによって世に呼ばれたたまっすぃの奇跡! ふふふふふ! なかなかによいではないか!』


『ねっ? 面白いですよねー。ちなみに私は白銀の舞踊ソードダンサーです』


『くくくっ、こうしてまたひとつ清浄潔白な幼子を我が支配のもとへ導いてやったぞ!』


『……う、うー……名乗らないとダメですか?』


『別にそんなことはないっ!』


『えっ? えぇ?!』


『ただ私がそう呼ぶ! それだけだ!』


『あ、はい』


挿絵(By みてみん)

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