表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】あの子は剣聖!! この子はエルフ!? そしてオレは操縦士-パイロット-!!!  作者: PRN
6章2節 あの子はちょろい この子の愛 そしてオレは吸いまくる 

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

108/656

107話 それから滅んだ都に祈りと花を

天使は

使命をまっとうする


つかの間の平穏を楽しみ


突如

戦況は新たな濁流へと流される

 エルエル先導のもと明人一行は、かつて健全に社会として機能していたモノの片鱗を縫うように歩く。

 どれほどの大きな闘いの末に現代を迎えたのだろう。ドワーフ首都ソイールの伽藍堂とさ比べてあまりにも神秘的で、淋しげ。それでいて聖都エーデレフェウスに似た情緒あふれる風情があった。


 過去には往来の動脈となったであろう大通り。草が生えそぼって砕かれた花壇には朽ちた矢が突き刺さり、背の高い三角屋根の家々は巨岩によってひしゃげている。焼け落ちた建物のなかには錆びた剣が散らばっていた。

 廃墟というよりは崩壊の跡。生が潰えてまた新たな自然という生が住み着く都。天より夏と同等の日差しが降り注いでも肌を撫でる風は少しだけ寒い。


「もにょもにょですのよ……ごにょごにょですのよ……」


 そう言って、天使は突き上げた尻を無作法にもふりふりしながら祈りを捧げる。首には鎖付きの首輪、手には天秤。

 その目の前には周囲の崩落と比べて清潔さが異彩を放つ、棘状に彩られた宗教的な建物。歯の欠けた(くし)ような柵に縁取られた庭には、乱雑に木端こっぱが散らばっている。


 教会と数え切れぬほどの墓。


 そして、列を成す半透明の人型物体たちエルエルへとつづいていた。回収されずに思い出の地を漂う思念体。戦争で大量に放出された彷徨うヒュームたちの魂。霊魂の廃都たる由縁。


 尻を振るもので少しづつめくれ上がっていくエルエルのスカートをきゅっと引っ張って戻す者がひとり。聖魔法によって浄化され塵芥ちりあくたの如く霧散する魂たちをユエラは、興味津々といった状態で食い入るように眺める。


「この子すごいわねっ! おっぱいが大きいうえにテル魔法が使えるなんて!」


 そう言って、希少種の証でもあるエメラルドのような瞳とはちみつを垂らしたかの如き瞳が瞬いた。

 隣ではジャハルが野太いフサフサの尾を揺らして佇む。


「本気で……わからなくて言っているのか?」


 その疑問は至極まっとうなもの。神より与えられし(テル)の才覚。それは大陸に住まう種すべてのなかからたったひとりだけが神の御使いとされるというもの。異世界人ですら本で学んだ常識である。つまり、ユエラはなにも考えずに喋っているということ。


「あっ! ハイハイっす! 世界の道理(ルール)が変わったッすね!?」


「ちびっ子。問題の定義を根本から捻じ曲げるな……」


 明人は自身の肩に引っ掛かったピチチを一瞥して、ため息をついた。小魚とはいえ釣れたとすればかなりの釣果。その身には2本足に戻った時のために黒いジャケットが着せられている。


 波乱の魚市場壊滅から一夜明けて、腑抜けた時間を楽しむ面々。しかし、明人たちにやることがないだけで未だ闘いは継続中であった。

 双腕を交えて狼と魚は今後の方針を練るために会議をおこなっている。近く、連合軍の総大将であるエルフ女王も廃城に足を運ぶらしい。

 ともなれば権力者ではない者は暇を持て余す。そのうえ、ピチチは厳正な会議の場には似つかわしくない。媚びを売るという面目で明人は子守を受け持ち、ペットのエルエルの願いも聞き届けていた。


 しかし、臆病者とは異なって優秀な魔法使いは引く手数多だろう。

 除霊見学ツアーに参加した自然魔法使いへ明人は、問いかける。


「ユエラはリリティアと合流しないのか?」


「敵もこないし、なんかリリティアの様子が変だからこっちでいいわ」


「そうか……敵がこない、か……」


 外套が熱いらしくユエラは白いうなじを見せつけるようにぱたぱたと襟元を扇ぐ。

 ひとりと1人の保護者代わりでもある剣聖リリティア・L・ドゥ・ティールは現在前線で奮闘中。そして、明人とはすれ違ってまごついている途中でもあった。


「我も是非剣聖様とお話してみたいものだ。正直……ふたりが羨ましい」


 もじもじと。背を丸めたジャハルは、《トランス》した人差し指をこすり合わせる。

 連合軍内部でもよく見られる、尊敬によって築かれた壁。L(レジェンド)と2つ名を持つ有名人に対しては誰もが腰が引けてしまうらしい。

 リリティア曰く、どこに行っても讃えられるのがちょっと煩わしいとの感想がある。有名税であろう。


「ん、なら私が間を取り持ってあげるわ。たぶん初対面だと話しかけづらいでしょ?」


 何気なく発されたユエラの中継ぎたる援護。

 教会であった静粛な場に花のような笑顔が1輪咲いた。


「おぉっ! す、すまない! よろしく頼むっ!」


 まるで今にでも飛び跳ねてしまいたいと言わんばかりにジャハルの尾っぽが振り乱れる。

 差し出された手を握り返し、ユエラも優しげに切れ長の目を細めた。ヒュームは嫌いだが、ヒューム以外ならば誰とでも仲良くしたいといった様子が伺える。

 丁度話がついたところで最後の燐光が空へと昇っていきエルエルは、天使としての仕事を終えた。もうひとりのLとはまた別の有名人。


「ふー、お待たせいたしましたですのよー」


「おつかれさまー。そうだっ、みんなクッキー食べる?」


 慰労をたたえるように。ユエラは腰蓑から布に包まれたチョコレートクッキーをひっぱり出す。

 リリティアによって試行錯誤が重ねられた結果地球産のクッキーを超えた味わいへと至った極上の焼き菓子。

 エルエルは不思議そうに首を傾げてからクッキーもどきを1枚だけ拾い上げて、食す。


「わーっ! なんですのよこれ!? あまあまでさくさくですのよぉっ!」


 天使がもちもちの頬に手を添えて驚きを孕んだ至福にまみれる。

 と、ピチチも尾びれを振って小さな手を伸ばした。


「ワタシも食べたいッすー!」


「わ、我も1枚いただこう……!」


 女性たちは甘いものに群がる。

 期待や欲望は様々に三者三様。クッキーを口にしていきつく先は皆同様に幸福の果て。ここが墓場ではなく小鳥さえずる高原の丘であれば楽しいピクニックにも見えよう。

 そんなかしましい女性の園にそぐわない影がもうひとつ。

 ふと気づいたのか。長耳をひくりと揺らしたユエラは、眉間にシワを寄せながら空を睨む者へ音を殺して近づく。そして、つま先立ちでずいっと顔を寄せた。


「まーた難しい顔してるー」


「――おうわっ!? びっくりしたぁ!?」


 心臓を跳ね上げるように飛び退く明人を見てユエラは、くるりと回って前かがみで愉快げに歯を見せる。外套が渦を巻くように遅れてたなびいた。


「にひっ! で、次はなんの悪巧みしてるわけ?」


 そんな屈託のない笑顔を前にして叱る気にもならず。

 頭を掻きながら明人は、むっつりと渋い顔をする。

 複合種にとって西の部隊の敗走と東の部隊の敗退。さらには支援の要であるマーメイド族も奪われたとなれば、戦況は膠着状態に陥って当然といえる結果。平たくいえば、連合軍の参戦によって複合種は攻めあぐねているということ。


 2つ名を持った2名の指揮のもと連合軍は、防衛と保護解呪によって数を増やす。拠点も構築し、兵器や兵站の類の補給も容易。盤石の態勢で臨む複合種との決戦。そして、これらすべてはエルフ女王の手腕によるもの。

 仲間を危険に晒さず、確実に勝利を掴み取るというもの。見方を変えれば、どかっと腰を据えて敵を伺うだけの気の長い話ともとれる。安全かつ堅硬(けんこう)。女王が民を思う優しさに満ち溢れていた。


 しかし、明人には懸念がある。

 または予感や予知の類のもの。もしこれらを安易に切り捨てられるのであれば臆病者は臆病者足りえない。

 ここは、ほぼ大陸の中央にあるヒューム領である。南東にエルフ領、南西にドワーフ領。そして、北に複合種、東に上位種であるエーテル領がある。

 ならば西はどうだろう。なぜピクシー種はいつ攻めてくるだろう。連合軍本隊が出張ったところでエルフ領に進行するだろうか。なぜ動かないのか。


――こりゃあ……ちょっとまずいかもな。


 明人は考えに考える。今回ワーウルフが想像以上に強すぎたために敵の敗走を早めてしまった。

 いわば生きる貴重な情報源を逃した。情報とは鮮度が命といってもいい。マーメイドはファリーズの都に捕らえられていたため、本国の新鮮な情報を持ち合わせてはいない。


「胸騒ぎがする……」


 誰かに対して言った言葉ではない。

 明人は苦い顔をしてぼそりと不安を口にしただけ。

 それを聞いて小馬鹿にするわけでもなく、皆はクッキーを片手に首を傾げて各々の顔を見やった。


 しかし、ユエラはだけは違う。


 同様のことがヒュームの村でもあった。

 それは共に闘って勝利を共有した者たちが寄せる臆病者への信頼なのだろう。


「……急いで招集をかけましょ。アンタが言うならなにかあるわ」


 引き締まった目立ちは凛として、佇まいは根を張った樹木の如し。

 混血のエルフと人間は互いを認めあっている。

 その真剣さに後押しされるように明人は、腰の合成皮革ポーチに手を伸ばす。

 しかし、エルフ女王を呼び出ためにメリベルを鳴らす必要はなかった。

 なぜならもう、そこにあったから。

 空間に漆黒の梵鐘(ぼんしょう)たる大扉が音もなく現れ、猿叫(えんきょう)の如き軋みを上げて中央から開いていく。

 そして、転げるように飛び出してきたのは黒い蝶の如きドレスを身に纏った女性。

 世界最強の魔法使いであり、語らず2つ名を持ったエルフ女王。語らずの呪術師ヘルメリル・L・フレイ・オン・アンダーウッドだった。


「明人ッ! 今すぐにアザムラーナへ戻れッ! 非常事態だッ!」


 その雪のような白い肌に玉の汗をうかべて(まく)し立てるが如く。はちきれんばかりの胸は荒げた息で上下にたわむ。明人をNPCノンパワーキャラクターと呼ぶ余裕すらないらしい。

 普段の何事も笑い飛ばすような憮然とした雰囲気は露と消え、周囲の者たちは浮足立つように目を見張った。


「なにがあった……?」


 宥めるように華奢な肩に手を添え尋ねる。

 そんな明人の胸にしがみつくようにヘルメリルは、赤く滾った瞳でこう答えた。


「はぁっはぁっ……クッ! ピクシーの軍がワーウルフ領になだれ込んできた!!」



○○○○○

語られぬを語るべくSSコーナー

……………

「胸が大きいと苦労するわよねー」


「いえ、これは貴方様の作った性転換……げふんげふんですのよ」


「みゅ?」


「な、なんでもないですのよー。おっきいと重くて大変ですのよ。おほほほー」


「そうですね。……我ももっと小さければ動きやすかっただろうと思うところがあります」


「嫌味ッすか? コイツら全員ワタシへの嫌味を言ってるッすか?」


「うちの無乳家主がいなくてマジでよかったよなぁ……!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ