四章~邂逅~
無尽蔵の水が足首まで満たしていた。
映る世界は水以外になく。その水は一向に引く気配もなく止まっていても停まっても無駄と知っているから起点を作って進んでみた。
でもだからといって解決できる状況ではなくて、打開策もなく無意味に進んでいた。
後悔は無かったかも知れないけど意識して初めて理解した。
視線が低く。少しずつ下がっていた。
ああ。それは個。としての存在が溶けていたという事なのか、それとも元の所に戻ろうとしているのか。判らないけれど心は、安らぎとは真逆の位置にて叫んでいた。
掃除を兼ねて脅しと確保が目的だったんだけどな。
「いや正直、全員が痕も残さずとは想定外。これは後々、面倒になるな。さてどうしたものかね。」
考え込む振りをして瓦礫と煤と煙立ち昇る落とした大地を踏みつけていた。
「はあ、どうしようかぁな。この後の処理とかなんとか色々と。仕込みやら準備はしたけど、殆どが無駄に。はあこれは時間が掛かるかよな。」
瓦礫を足蹴にしながら歩いていると端末が鳴り響く。
取り出して画面を見ると相手は。
「ん、そうですか。到着したのね。さて、もう少しで終わるかな。」
至る場所で残り火はあったが時間は掛からずいずれ鎮火するだろう。
この戦場という箱は監視台の暴落をもって崩壊させた。だが、まだ何かが在るのだろうと予想して再建不能までにした何かを後にした。
明るい部屋に監禁されて何時間経ったのだろうか。側には変わらず代わりもなく眠っている。
力は減衰し行使するにしても依り代がなければ取っ掛かりすらない。
だとしても何かをされることもなく、負傷も治療され、清潔な衣服に身を包み食事も質素ではないが中々に腹を満たせている。
拘束はされていないが外界との繋がりは切られている。
事象の改変。時空の捻切れ。次元の穴。他にも試したが小さな傷や粒程しか越えられない。
従い、遣ることがなく軽い運動をしながら連鎖で見る夢の事を考えていた。
身震いしかない。
この子に。何を刻んだのだ、あのものは。
その始まりはあの時。
遠方からの刻みを受けてからである。
放たれた刻みは互いの存在認識を薄弱にしていた。
直後の始まりは何も見えない無色。黒や青とか赤。緑とか黄色もない。何もない。永遠と続く無色。
足掻いているのか手足を動かしているのに動かしているという意識が感じられず。感覚を構築してからその空間は狭く息をするにも苦労していたが簡単には何か出来るということもなく。癒すために待っていた。
時折揺れるがそれだけであり、少しすると止まり長い時間その常態が続く。
無色の向こうには何もないはずだが感覚的には何かを感じてもいた。だからこそ心の芯を保つために動かず待ってもいた。
この時。何を期待していたのだろうか。
いや、期待ではなく、斬激に触れられて理解したのだ。我等と別の地点で生きて飽きていたと。だからこそ世界の数々に干渉してこの時空の上位存在を認識するに至ったのだろうか。
違う。飽きるのであれば怠惰に無気力に無感情に生きていくはずだ。たぶん。だが、あの力は容易く我々を仕留めた。なんの前兆も見せずに、まるでたまたまその場に居て余った力を放っただけのような。
そんな事を考えながら揺れは次第に収まっていく。
静か。元から静かであるのだが一層の静寂が浸透するかの如くに満ちていく。
身体がない。なら着けるまで。思い出して即席ではあるのだが着けてみた。見えないが。
納得せず何度も変えながらそこそこの身体を着け。ああ退屈だと感じていた。
そうか、暇だからその様な戯れのように身体を着ていたのか。 何か納得した。
軽く揺れはしているが相変わらずこの無色から出ることは出来ない。揺れは続いて止まり何故か痛覚を刺激した。
と大きな揺れと小さな揺れが交互に伝わり収まると圧するように押さえつけられる感覚がして意識を其処で途切れさせた。
次の思考は衝撃から始まった。
何もない無色である世界が力の現界を超えて叩かれていた。
この時、感情を支配していたのは無力から来る畏怖。
ない身体が震えていた。振るえていたのではなく、震えていたのだ。
外的要因は無色を滅ぼしていく。
思考は次項へと移り暇をもて余して造り出した身体を廃して精製される。
無色は失せ色が世界を侵していく。
色を携え世界は鮮やかに彩られていた。
強制的に出されたためか造り出された器は貧弱であり思いの外、動けなかったために簡単に檻に入れられ暫くは動かないで
いたら器が現界を迎えてしまい歪に成り果て檻と一部が同化してしまった。
数日して檻に布を掛けられ何処かへと運ばれ布を払われた後には人が犇めきあって何かを喋っていた。
その後にはまた暗い場所に保管され長い時を待つものと思っていたが、それは突如として起き、世界が大きく揺れると檻を囲む存在が何処かへと運んでいった。
限界はとうに越えていた。器は崩落し細い糸をもって繭を形成しまた無色の世界へと回帰していった。
暫くは無色の世界で休んでいたが、数々の痛みをもって排出された。
落ちた世界に初めは捻れた思考が延びてくる。寒さが全身を走るとその延びは細かく砕けるように堕ちていった。視界は滲んでいたが暫くして見えるようになっていく。
驚いた。と同時に感心と小さな怯えが現れている。
しかしこれは知己の中でも今までこれほど大きな規模の力が集まっていた箇所は知らず、だがお互いが牽制しているのか暴走する気配さえない。
一つが近づくと小さな痛みと別の寒さが襲い極度の眠気により世界から分離された。
暴れている。止めようとする存在が複数居たのだが、手をこまねているのか暴走を抑えられないでいた。
この時は自身でも不理解の領地であり感情が制御出来ないでいた。
と直後に扉が開き呆れたように見渡しながら此方を見ると何の躊躇なく大きな針を刺してきた。
今度は眠気は無かったが代わりのように末端が動かせなくなり息も小さくなっていった。
意識はありだが力は入らず混乱していたが次第に意識は現実と幻の境が曖昧になり此方の存在を忘れたように談義している者達が歪んでいき意識を飛ばされた。
叫びと苦痛と快楽と憂鬱と少々の重さが共同していた。
投薬改造換装繰り返し元の姿が霞んでいく。
頭を割り中を調べられもした。
数日は痛みで眠れなかった。
この時の感情は最後に恐怖が勝った。
霞む見えないその顔に怒りと恨みと恐怖を覚えながら差し出された手に怯え鋤くむ身体に暖かさを理解してその目を見て何か安心直後に扉を開かれた。
おいおい。変な性癖を。
て違う。そうじゃない。なんなんだ。この身体を弄り簡単に内側を調べた手数は。この存在は何か我々に近いものを感じるが所詮は過去の映像。思い出を整理するために見ているだけだ。
何も出来ないからといって私の知らない事柄を知れる。それだけで僥倖といえるか。
映像は次第に霞み揺らぎ何度目かの意識を飛ばされた。
あの存在と相対したのはあの数度目の無色透明な世界から解放された時。
何もない広大な地での事だと記憶されている。
何度も繰り返し投薬されていたとは恐ろしい。下手に手をまして暴走を越えた崩壊と消滅を考えないのか。
いやあれはそれすら楽しんでいる節が。
認識されその直後に威嚇したが涼しい表情に消えて無表情で見てくる。
狂気としか考えられない。
そう狂気。嫌、あれは狂喜と表した方が正しい。
そうか、アレに連なる存在か。
その存在は視線を逸らすだけではなく振り返り背後を見せてきた。
簡単に襲ってと言っているようなものだ。
が襲わない。違う。恐怖が根差していたのか。動けない。
唸ることさえできず、殺意を吐き出すだけでしか表現できない。
してこの者とは離れ、はな、れ。おのれえぇぇぇ。
自分の声で起きるという空しさしか残らない夢は最悪な気分で目覚めたのだった。
それは。
幸とか負とか。偶然とか必然とか。運命だろか奇跡か。くっ、面白くもない。
謀かもしれない。
取り敢えず、一人と一つは邂逅した。
一つは窺えず。
一人はなんと表現したものか迷う感情と表情を見えないようにしながらその存在を遠くから見ていた。
何時、かは判らないがその情報は偶然だと信じられたら良いな。という感覚で手入していた。
あの惨劇と呼ばれる存在の一個体たるウェイトゥルースを全てから切り剥がした戦場から転戦する日々の中で、その情報。〈交渉〉は最初どうでも良かったのだが、出品物の一覧の中で一つに不思議と引かれた。
気がつくと莫大な金を渡して二人に向かわせ入札した。後悔はしていた。
後悔はしていたがあの大きな出品物は誰かが手にしても最悪の展開しか見えてこない。だからこそ二人に莫大な金を渡して落札させた。
後で知ったこと。その品は。
おわっ、違うか。
そのモノは最大の目玉の1つとして出されたモノ。
落札したという知らせと有り金の殆どをつぎ込んだと知って絶望した。だから情報を敵方に流してどさくさに紛れて略奪という形で運び出した。
勿論、金の支払いはない。あっても回収してたし。
それに時間もなかった事だし、横槍を入れられ盗られても困ったし。結果は良かったのだろう。
そう良かったのだろうが、思っていたより巨大で仕方なくはないか。
行き先を変更して先生にしておいた。
正確に言ったら押し付けた。まあ転戦してたからという理由付けもあるのだが。
しかし再度元に送られたこのモノはあの巨体から考えられない程に小さく儚く造られたものだと感心した、か。
してないな。
暫くは幾つかの戦地を回って収めて交渉させ、落とし処を探って協定を結ばせ、書類をまとめて送信してから荷物をまとめて次に向かう。という事を何度も繰り返したある時の、あの場所にて不意を突かれ引き込まれ離れたな。
目覚めて待遇も良く裏があるだろうと確信していたけど目的が不明なので数日を使って居座ることにした。でもな。
かの場所も結局は盲信と狂人の集まりでしかなかった。
本当の救いを見失って盲信と狂信をもって呵責と憐憫に悩みながらその地に眠る器に縋っていた。
まさか二つ目、に出会うとは想定外。
それも想定より長く滞在して最後は、あの時と殆ど同じ様な結果にはなった。
あの縋っていた器は処理したけど。
そういえばでないのだが、ははは。どうして。
俺の場所が判らずのはずで判ったのだろうかね。
俺という存在は消していた筈なんだけど、何処かで見逃していたのか。または何かがそうしていたのか。
それでもまあ、お陰で想定外の時間を食い尽くされたよ。予定より到着が遅れて四体が破壊され、更には断絶したウェイトゥルースも寸前まで追い込まれてたな。
というか寧ろ、目的を果たすために力を抜いていたな。
初期から掛け離れた進化をしていたからそれも理由だと信じたいかも。
ふう。本当に面倒だよ。アイツも戦場舞台で合流して急いで向かったは良いが、まさか暴走とは。まあ、どうにか抑えられ目的も果たせたし良しとするしかないよな。
後始末が面倒だけど、この際だ。出来るだけ片付けておこう。
作成には詳細に記すほうが理解しやすいだろうし。
進行もしやすいし。
ん。時間か。さあて。面会と行きますか。
一通りの物思いに耽ってから瓦礫の山で手に入れた品々。
「あったら良かったけどなぁ。どうして何もないのかねぇ。普通あるだろうが。あれだけ探して何も見つけられないて何の差し金だよ。くっ。証明材料がない。はあぁ。とうにかして集める気にも気さえも起きねえな。うん。めんどくさいしこのままでいいか。よしっ行くか。と、その前に此を持っていかないとな。」
机の上に放置した物を取って部屋を後にする。
この先は勝負。というものではないが話しすら大変だと思いもせず隔離部屋まで向かう。
そう唯一の捕虜であるその者へと。
向かう途中に行き交う人。人。人。戦後処理に追われ世話しなく行ったり来たり。
声を掛けられ歩きながら返答していく。
その中で。
<むふふふふ。やあやあ大変だねぇ君も世界も彼等も。さて一つの事柄か事象かな。終わったね。時間も掛かったしそして何よりも、思ったより速く決着したね。もっと時間を掛けるものだと思っていたのに、正直言って面白くもない。少しは捻切る感じで終わらせてよね。そうすれ(思考に挟んで何が楽しいのかね暇だとして一々突っ掛かってくるなよ。)ば、ふふ。まあ今回は暇潰しにも成らなかったけどさ。次は上手く行くかな。楽しみだよ。>
「もし。」
「うおっ。」
「うわっ。」
「な、何々。」
「いえ、立ち止まって不適な不遜な不気味な百面相位してましたので心配になってお声がけを。」
「そう。問題にしないでね。」
「・・判りました。私の内に仕舞っておきます。何か入り用あればお申し付けください。」
「気が向いたら。」
「はい。では。」
離れて姿が見えなくなる。
「ん。端から見たらそう、見えていたのか。気を付けよう。」
思いを新たに歩き出す。
までもなく到着していた。
一つの事象というか事が終わって再会する1人と1つ。
この戦場という箱は終結し、次の戦場へと続いていく。
それは世界を賭けた真の戦場。
終わりは近づく。
対話から続く存在を賭けた戦いを。
在ればいいな。うん。




