四章~冷められる感情~
脳内に組み込まれた情報集積装置の為に現状の把握はできていた。
で。
だから。
何があるのだ。
と表情する内容を後ながら知るという認識を拒絶して装置の中で絶望を絶して断って知る。
ふとして付した負とする今回の先端から現在までの資料を集めるその過程で知り、怒に通ずる消滅対象と確定させた繋がる過去との存在を。
拒否しようと組み込まれた力により無理矢理に流し込まれる情報を冷めた思考で標的を認識して怒りを内包した感覚を研ぎ澄ませ全身に力を貯めこんでいった。
迂闊に力を内に打ち放ち壊れる音。
鼻に突き刺さる嫌な胸を糞で塗りたくった臭いは表情を一つに固定してしまう。
一歩を退いてああこれは違うと確かにした。
思考と反逆するように憤怒は高らかに登り昇る上っていく。
だが急に冷めていく。
冷静さを戻してしかしてやはり上昇する感情は制御を離れていく。
離れるなら切り離す。
冷静を取り戻し、幾分か正常思考を維持できるまでには落ち着いた。
して現状を理解する。
何か体が痛いような。ん、そうか寝てたか。気づいてなかったな。
で何故にこの場所に居るのか思い出してみるか。
たしか情報を擦り合わせるためと傷を癒すために収容された先で、そこから後が曖昧。
気づいたらこの場だし。くふふ。で、あれは腹が立つのはどうしてか。それは放つ空気があの存在を想起させるからだろう。
だが違う。あ壊したい。
違う互いが壊れる。
眼前の糞存在はしかし懐かしさを伴っている。疑問は甚だ理解しがたいがそれでも一つの結論を導き出せる。
共に在るのだと。
沈んだ感情は鎖を引き千切るように浮上していく。鼻に突き刺さる猛臭。
昂る感情を抑えられず弾き出される。
憤怒はしかし、新たな鎖と楔によって引き落とされ奥へと囚われる。
いい加減に立ち上がらないと格好悪い。
だが、普通に立ち上がるというのも面白くない。
欠伸を噛み砕き、そのままで立ち上がった。
軽く塵を払いながら、さて。と口にして見てしまうと、沸点が振り切れ怒りは再上昇していく。
不思議と悪意は感じられない。が違和感に近い感情が放たれていたりいなかったら面白いか。それでも見た感じは。
あきれている。のだろうか。それとも驚いているのだろうか。それでもやはりと考えよう。
確実なる〈敵〉であると。
内部機関の機能は正常に動いている。
確たる証拠である背後にいるこれ等を敵に渡すは危ぶまれると判断しなくても理解する。確保は絶対である。
だとしてこの相手をどう対処するかである。下手な行動を選択したならそれは壊滅の道へと誘われる。慎重に動かなければ危険である。
破壊したそうな相手の向ける表情と感情は自身を躊躇させるには充分だろうが、関係ない、相手になろう。勝てないだろうことは承知している。
少しの後退を見逃さず立ち上がる。
軽く鳴らしながら薄く笑いを貼り付ける。
腕を軽く広げ小さく一歩を出す。後ろにだが。
この行動に相手は躊躇した。
前進ではなく後退であり、さらに張り付けた表情もある。意図を読みかねているのだろう。だからこその後退をして張り付けた笑いを瞬時に切り替える。
いや感情のままに表出させる。
怒りを憎しみを恨みを妬みを嫉妬を。
籠らせた感情のままにしかし、矢張と言うべきか沈んでいき冷静さを強制的に取り戻される。
悪意は蛮行か善意は、無い。有するは負の感情のみ離れた片割れを探し求めさ迷う死人のように。
自然、嗤っていた。
相手に対してではなく自身の不甲斐なさに。
感情は潰しても幾度も潰したとしても、再生され甦る、だが、それは元の感情と同じか。と聞かれてしまえば答えられない。なぜならそれは見えないものだから。自覚できたとして無意味に他ならない。
などという自問自答をしたとて意味はない。相手は引いてはいるが戦意を失しているのではない。
崩壊を覚悟しての姿勢を見せてくる。
だが攻めあぐねていることは理解している。なら更なる奇行をなして狼狽えてもらおう。
手を握り指を突き立て自分の舌を抉り千切り出す。
確実に怯むと考えていたが。
なんだこれは。という疑問がわいて出てくると同時に顎から脳天へ痛みが走っていった。
認識した直後にまた別の箇所に痛みを通り越して激しい寒さが拡がっていく。
再びの認識で腕が乱雑にされ赤が止めどなく流れ出ていた。
悲鳴。は上げない。滑稽。と認識していたから。
最後に生命の中心を穿つ一撃を視界に捉え意識が転下していく。
思考加速を施して肉体と同調させ相手の僅かな隙間を貫くように接近し一撃をその顎に蹴り上げてから地面を完全に離れた状態を見逃さず更に四肢を不可能までに乱雑に切り裂き引き裂き捻り潰して数度の反動に合わせて追撃を放ち最後に止めを差し終わる。
それは正に思考通りに成った。
一息着くより早くに確保対象を戦地から逃がす為に背を向けた。
警戒はしていた。
だが気づくと鳩尾であろう部位に長く黄色に濡れた何かが貫いていた。
周囲は感知していた。
隙間はない。
其なのにだ。
理解していて破壊されていた。中心に近い部分を。
隠る音を発しながら器が地面から離れていく。
届くは声。
機械的というより機械の音で事務的に擬似的な感情を撫でていく。
『コレヨリ当該に対する損傷率が規定ヲ大幅に越えたタメ副次的内装意識を表出させ危険対象を処理シマス。関係者ハ直ちに退避願いマス。』
舌は無く、四肢を破壊され動けない。
そのはずで。
だが実際は知識していた何かと余りに掛け離れていたために失念していた。
そう。これは。この、存在は。
無理なものは無理だ。知覚できて尚も身体をいくら強化したとしても意識と器の間に齟齬が在るなら対処のしようがない。それを鑑みてくれよ。それで、な、何を。うがっ。
意識は強制的に手放したはずで、どうしてこの場所に居るのだろうか。
回りに何もなく。自分の価値観さえ揺らいでしまうこの空間。懐かしさと悲壮が同居する。
さて久方ぶりの『内神の檻』だ。ここ数百年動き詰めなので休みますかね。
休める時に休めと言うのが小言のように言われ続けていたなぁ。誰とは知らんけど。
はあ、それにしてもまさか、完成していたとは考えてもいなかった。
たしか蓄積された情報で計画は廃棄され関連資料も灰塵になったはず。それを誰かが復活させたか思考の同じ存在か欺瞞か。それで過去に吸収した知識を統合すると。回答出来る。出来るのだけども実効性に乏しく、滷獲しようにも簡単にはいかないだろう。
抵抗率が高く心を浸透させるには時間が掛かる。なら破壊しかない。徹底的に後腐れなく。
てそれはまあ、任せて。だ。
ふと思考が停止する。
なあっんで。あの匂いが付いてるかねえぇ俺の私の僕の己の朕の片割れにして片棒にして半身で半分ながら融合魂。
だからこそ鼻を突き刺す匂いは思考を氷結から噴火させるし私の中で完結するはずの答は先延ばしにされてるし泡沫なんてのはないよね全くもっと面白くないなあれは関係してるよね。少しの邂逅だけでも理解していたよだのにふふふ世界が許容しなかったのかな逃がす為に僕を絡め取って引き剥がしたよねぇあぁ腹立たしいし涙が蒸発するよぉ。
休考。
さあその無関係ではない存在であるこのものを解体すれば答えをみつけて理解できるだろう。
時間だ。
浮上しようか。
予想外だった。
地面に横たわるのは残骸と呼ぶには語弊があろう亡骸のような塊を側に置いた人。とは少し離れていた生物兵器が倒れていた。
胸には大きな穴を空けて僅かに動いているという点を除けばもう動くことは叶わないだろう。
何が起きたのかは考えない。無駄だと知っているから。
しかし不用意に近づくこともせず暫く眺めていることにした。
何かの仕掛けが施されている可能性もあるからだ。
頃合いとみて近づき驚いた。
生物的な部分は現在進行で腐敗しているが意識を保った状態で呼吸し視線を合わせていた。
掠れた言葉を発しているが無視する。
それすら罠かもしれず近づいて一撃を貰ってしまう可能性もあるから。
一定の距離を保ちながら見物する。
外殻だろう部分は全て一塊にされ屑となり露になってる部分は大部分が人の領域なく、機械が占めていた。
知識と整合しても異なる部分が見受けられる。
一つは人工心臓とされる動力機関が見えない。
型としては初系なのだろうが大部分を機械に置き換えているので動力は見えているはず、だが剥き出しの部分は見える範囲でソレが一切見当たらない。
では頭部を解体しようと嵌め込まれた仮面を取り外して調べてみてもソレの取っ掛かりすら見当たらなかった。
最後の手段として内部探索のため再度手を伸ばし内部を探索する。近しい処に存在していた。
そうこの器を駆動させるための魂というべき精神回路を。
そして精神回路を掴み力を込めて破壊した。
次には残りの四人。眠っていたためか力は回復している。命を奪う余力は余裕で残っている。
動くことはない。破壊したのだから。力の根元と考える仮面を。
力を両の腕に纏わせ四人に放つ。
と背筋のみならず汗が伝って地面へと落ちていく。
増える汗は滴り落ちて地面に溜まりを造り、耳に届く異質な何かが思考を掻き乱し剥ぎ落とし世界を歪めていく。
反して意識は失うこともなく保ち続け、まるで眠りを否定しているかのようである。
揺れる世界と自身の価値観と存在たる器。
酔いのように少しずつ回って捩れて切れようとして。
意識が覚醒する。
鼻に芳しく纏わりつく匂いは懐かしく郷愁を覚える。
動かない身体であるが、視線は背後を見ようとして意識に反論するように地面へ倒れ転がり目標である方向へ視線を合わせた
その遥かな先には。
懐かしき踊り狂いたくなる存在が駆けている。
どうしてか自身に向けるあり得ない感情を伴って。
四人に対して放った崩壊の力は気づくと届く前に霧散されていた。
到着して目に飛び込んできた光景は。
崩壊した歪なる変容と呼ばれていたはずの初型を根元とした最高点に成った不可解なる暁の怒りを崩壊させた初期にして逸脱せしウェイトゥルース。
向けられしは頂き無し憤怒と狂った喜びか。
本来なら全身の力を抜いて眠りに入りたいのだが、それは全てを終わらせてからしか許されていない。
なればもう一息として全身に力を行き渡らせる。
向けられる不理解な視線を無視したい。という視線合わせをせずという行動をとっていたが。
掠れた声が轟きと共に届く。ということを拒絶した。だから声は届いていない。
だが感情は容易に届いていた。
憎まれる覚えも思いも考えも無いというのに何なんだと辟易か疲労かを考えながら近づく。
半分だけを動いている四体に。
こほっ。と咳をして、見える相棒にして片割れであり半身を通り越した混合魂。笑える笑ってしまえば全てが楽に運んでいたろうか。だがそれは自身の存在を拒絶して全てを否定する行いである。なら立ち上がれ。そしてあのコを取り返すのだ。でなければ運命の鎖に絡め取られて身動き取れなくなる。
隔離されていた憤怒が爆発し動かないはずの肉体たる器を動かす。
相手は驚きと呆れのような表情をして何故か脱力する。
どうやら思い出したようだ。




