四章~世代~
途中経過を報告。
我々の作戦は状況を見ながら道筋を換えている。
本筋の作成を基本に多岐に渡る案を用意。
途中で破棄されたものも含めこの戦争は最初から仕組んでいた。
仕組んでいて廃案の筆頭にあった案がこうも採択されるとは誰も予想していなかったのか。それはない。
あの方はこれを予見していた。
予見していて阻止も妨害もせず、自ら進んで関わろうとしていたようにも見える。
それであっても戦争は誰の意図を外れて何者の意図で進行していくのだろうか。
四ヶ所で相対していた。ソレ。と新世代型歪なる変容。
動きはない。
画面を見ていた者達は安堵と困惑を共生していた。
「なあ、誰がアレの投入を許可した。まだ各部に凝りを残していたろう。」
首を振る。
「ではっ、どうして最新個体があの場に四体投入されているのだ。沈めていたはずだ。」
「許可は、出せる方を知っているでしょう。」
喉奥に出かかって詰まる。
「ではこれも作戦の内容に則しているというのか。我々には知らされていないのだぞ。」
「全てが十全に知らされることはありません。あの方が目指す点が我々の目指す点と同じだと思われますか。」
否定したいが肯定もできない。それが全員の外たる解である。
戦場は続く。
各地にて相対的な立ち位置にいる八つ。
ソレと今世代である歪なる変容。
動いていない。
が、遠方で爆発が起こり契機とするかのように各地で火蓋が切られた。三試合目か。
初型が原子とするなら今世代は樹木。
その差は圧倒して歯牙に掛けるに値しない。
なればどう出るのか。
決まっている。
その圧倒的な差を実感させるために行使するのみ。
悲しいかな。実実にして無情なる。
世代間。
一世代の差は次世代破壊を要するに数百必要とされ初型と今世代の間は更に上乗せしても足りない空きが横たわっている。
ああ。本当に悲しきこと。
それは同型にして次代であればだ。
隠されていた機能を開け放ち共食いから統制までを集約したとしての話である。
各眼前に立つものは同型では勿論なく、ソレという上も理解しえない、僅かに、否定だ。絶対にしたくない領域の存在。
通常であればその一撃は初型たる個体の感知に触れず振れる事もなく形跡を残さすことなく世から消し飛ばされていたであろう。
ソレは言うなれば隠し機能発動状態を常時としているのだ。
全てを。と言うていても四つだが。
個体を食らいもしくは吸いまたは、融合し最後は分離統制したのだ。
これらに対する対処を今世代は当然にして積んでいない。
誰も。いや研究する者であっても考え付かないようになっている。
見せつけられた隠されし機能は先の大戦で発現する状況まで居たらなかったのだから当然であろう。
だが機能は進化する。
初型より数代先である今世代は進化するための機能が搭載されており時間と共に学習し行動を最適化させ対処する。
時間経過として形勢は転化する。
笑いが溢れていた。誰が予想できただろうか。
初型を容易く屠り、此方に視線を合わせてきた。
生きた心地は失せていた。
だが次に現れしは初型を凌ぐ個体。今世代は最高傑作と謳われるほどの脅威を持っている。
想定外だが今はこれ程の頼れる存在はない。
そう思う一端が学習機能である。
さて学習といっても学びには幾つかの系統がある。
知識による学習。経験による学習。想像による学習。
一つの可能性に触れたならば拡がるは大いなる絶対。
時間経過と共に動きは簡略化され避けていただけの行動に打撃が追加されていく。
動きの無駄が減っていく。攻撃は繰り出されているが現在では掠り程度であり完全回避も時間内だろう。
風が吹くが気にはしていられない。画面越しなど無駄な時間浪費。直接外苑で推移を見守っていた。
「ほ、ほははははは。これは想定内だ。」
「それにしてはあの方が外れるという論外はないはずです。」
「言ったろう。あれは我々の論じた想定の外だ。あの方はそれすら内包しているのだろう。だからこそ始まりさえ許容したのだ。」
「まて、それなら今回は原因さえ把握しているのだから阻止も可能であろう。何故しなかったのか。」
「もしかして。あ。」
先は言えなかった。
今世代が完全に回避しだして、後はソレを処理するのみ。その考えは正しいのだろう。
正しいから。その次が不理解の領域だと感じてしまった。
目の前のソレはこれまでのソレとは完全に違えていた。
見てくれ。いや内面的。いやもっと根本的な根元的ともいえるソレとしての存在する意味や意義が覆るように変容していた。
いや入れ換わっていたと言った方が正しいのかもしれない。
何と。と問われたなら誰にも答えられないだろう。それ程にソレと解離し過ぎていたのだ。
元々ソレの攻撃力たる主なる方法は全てが捕食収拾融合統一から発展した、または発展させた外れようのない手段だったからこそ今世代は記録し学習し積み重ねて対処し完全回避まで到達したのだ。
後は今世代の一手で決着という。そういった空気の流れを捻り切るように元ソレという存在達が見下すように地を這いながら見ていた。
即座に動いたのは今世代。
地面は揺れ陥没し、しかし原因たる足下にはソレであった存在が消えていた。
また即座に反応する。背後より少し下へ足を滑らせて弧を描きながら払い蹴るも空を穿っただけである。
残るは沈む穴と走り続ける亀裂。
知覚は示す。居する地点を。
反応し反応しすぎるが故の結果なのか。
今世代は一部が欠損していた。
内部に流れる警告。逃走を選択することを強要されているが、答は。《否定》。
千切れ飛ばされる内なる人工物。
知覚は出来ていて尚も速く器が反応しきれていない。
流れる人工脂肪より続き人工筋肉に繊維と臓物と最後に内部で最も硬い強化されたる強化骨核。
危険信号は途切れ思考が黒に灰に白へと覆われる。
直後に解を導き。
過去を省みながら《ならばと進化》する。
速度に特化させた器へと。
特化した形態になる。
それは成り果てるともとれる。
なので速度に対して圧倒的な力をもって殴り壊した。
速度を越える力の圧倒は点にして面を縁取り面をもって点を成す。
粉という状況にあって今世代に一つの感情が発露した。
<恐怖>と>歓喜<。
上位など温く緩く甘くて軽い。なれば次元を越えるのみである。
進化ではない。進むだけでは変わらないのだ。ならば深く底へと至る深化である。
自身の内部へと至りて力の解放とする。
如何ともしがたく答えられる者達は否。
呆れではない困惑でもない拒否。
理解したくはない。
今世代にまで知らされていない機能が備わっていた。
全員が首を振る。
今世代の計画発案は誰であったかを議論したところで無意味と理解していても感情の矛先を定めなければ気が乱れに狂ってしまいそうであるから。
今はソレという元が先に付く存在は今世代を相手にしているが、全員が考えていること。
「勝てるのか。もしくは、最低でも動けなくすることができるのか。」
もし今世代が全て倒されてしまったなら目標は間違いなく、この場所。
介入しようとするなら相等の対価を支払わなければならないだろう。
この者達に答は「なにもしない。」だ。
だからこそ世界に護られている。
手を出さなくとも不足にして不測な事態が襲いくるのだ今さらであろう。
理解して見続けると今世代全てが深化を終えた。
その姿は。
全員が歓喜したのだ。
やはり世界に護られているのだと。
その姿は一言で表すなら人を丁寧に少し外れた存在である。
人形でありながら歪を共生している。何とも面白い姿である。
現に元ソレ達は振るえていた。
嗤うように。
一つの深化を果たした今世代が切っ掛けを造り他も同様の行動を起こした。
その動きに対応出来るものは戦場たる各舞台には居なかった。
気づくと元ソレは全てが一つの地点へと吹き飛ばされ、あるいは投げ飛ばされ、さらには空間を捻りきり把握するより位置を掠め取られて気づくと一ヶ所にて相対していた。
相対。は双方の駆け引きなく一方に傾き世界に祝福されたかのように。
てことはなく。力は僅かな綻びで瓦解するように拮抗していた。
して、瓦解の要因は礫により傾いた。
今世代の一撃が元ソレに接触し一部を弾き飛ばした。
その弾き飛ばした一部はソレの元ソレを形作る根元であり、内を解き放つ装置であったのだが、元ソレの全てが弾き剥がされ破壊され溶かされて外殻が地へと落ちていった。
露見するは。
皺が走る骨だけの老体。
みみず腫れが張り付く少年。
水のような柔らかな青年。
そして「知的なメガネ」を掛けた命を断ったとされる若き時代を彷彿とさせる元総主。
驚きと戸惑いと失望と悲鳴である。
老体は彼らにとっての恩師のような存在であり。みみず腫れを張り付けたは手を尽くしてどうにかしようとした物であり。水のようなのは元々手中に納めようとした物であり。そしてメガネは表向き命を断ったとした手札の一枚である。
それら全てがどのような繋がりか、不明なるソレの正体となるとは彼女彼らにしてみると感情が暴走するしかないだろう。
動く。
弾き剥がされ破壊され溶かされて正体を表した四人は疲弊しているのか動こうとせずただ、その目に何も写さず地面へと腰を落としていた。
今世代は記録し一歩を進めると土を操り簡単には物理的に破壊できない鎖を生成し四人に巻き付けた。
抵抗らしい抵抗もなく巻き付かれた鎖を肉体に受け入れている。
深化を果たした今世代は一個体を残しある地点を目指していた。
その地点には何も無かったのだが残骸は残っていた。
残骸には一つに一つか二つの塊が溶け込んでいた。
其々が塊を回収し収納する。
と内部に接敵表示がされていた。
接触まで一瞬。
間に合わないだろうが不思議と危機的な時でないと思考していた。
故に、その速度は通常より遅いが常人が見たなら速いだろう。
そして到着し見えたのは。
知っているはずなのに知らない個体と呼ぶにはかなり無理のある初型に似た何かであった|。
『再起動確認。個体名「」の内部最適化を完了。現在地点で最後の<取り込み>に対する浸透化まで約一時間以内にて完了します。このまま駆動しますか。内部での了承を確認、これより個体名「」が目覚めます。』
思考が黒から白へと移り極才色の景色が視界へ入ってくる。
起き上がり各箇所を確認。
手を腰に宛ながら伸ばすと一部が軋む。
どうやらこれ迄の無理がこの場にて表れたようだと認識しながら瞳孔を調節してとある遠方を確認する。
数は八つ。後に反応が半分消滅し残りの内三つが別の方角へと移動した。
その先に何があるのかを確認したが瓦礫しかない。だが三個体は中から何かを取り出し回収した。
無意識に表情が柔いていた。
吠え、速度を上げ、地点へと。
消滅と同時に現れた四人と目される影へと向かう。
到着と同時に残存個体を無用な長物のように屠る。
今世代一個体の崩壊と着地と残り三個体到着が同時であった。




