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Heart of 6 〜赤と譲渡〜  作者: 十ノ口八幸
四章~戦争~
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四章~幾つもの視点から見た戦の象(かたち)~混迷極める戦場3

二つの戦場が崩壊した。

その報告は一人の医者にもたらされ、小さく嗤う。

下卑た蔑みを含めた屈辱を伴って。

一つは始まってさえもない時にたった一人の存在による一方的な破壊と殺戮と蹂躙が完遂され、生き残りもたったの一人である。という報告。

もう一つは始まって間もない、いや始めようとして突如現れた敵軍により強襲され一個師団以上の命が潰されてしまった。


さて、残るは三つ。

そう三つか。


配下なき医者。

戸惑いの高等幻術使い。

空白地。


配下を自ら放棄した医者。黒という(あざな)を元たる上位存在に与えられたクロイツは悩んでいる。下に集わせていた諸々には開始以前に早々と解散、自由を保証し一人に成るつもりであった。

「思惑通りに事を運べるなどとは思考してませんが、何ゆえにこの状況でしょうか。」

目に見える範囲だけで解散させた八割が戻って膝を着いて頭を垂れていた。

幾つかの説得を考えたが無意味だろうと即座に判断し簡単な指示を与える。喚く部隊が踏み鳴らし手を打ち鳴らす。

「さあぁ。進みなさい。貴方達には私の力を一つを与えましょう。」

響く声は空に溶けて融けて消え散っていく。


「はあ、虚しいだけですね。一人芝居と謂うものは。」

目の前に見える範囲に誰も居ない。ただただ広がるは荒涼な景色のみ。

「ふあは。笑い飛ばし続けたいのですがね。まさかですよ。」

一人も残らず戦場へと向かっていたし何故か強風が吹いていた。

背後の殺意を感じながら。


一つの戦場を起点とする散発的な小競り合い。

小競り合いは次第に乱戦と成り狂乱を表出させ大乱へと進化していった。

無限と言える殺戮の戦場に尊さの欠片もない。

尊さなんてこの世にありはしない。

進むしかない戦場を生き残る術を持たなぬものに資格なし。

希望と絶望は反して溶け合うもの。さあはじめかっ。

いちいち口上みたいな言葉を述べなくていいとして途中で止めるかも。

止めかたが。

でだこの戦場。何を目指してると考える。

さあ、上は結果を望んでない。過程を重視しているからね。だからなんとも。

そうだな。でだ視点を変えたなら何が残るかな。

むん。視点を。そうだね。これによる副産物含め莫大な利益は湧いてくるだろうね。妨害も変異も変遷も限りある可能性を全て含めた今回の作業。もし、外側の因子があるなら、あれだろうけど調べたところ、もう間に合いそうもないよね。全滅してから漸く到着と見るね。

そこからは面白くなるな。拡がり落ちる絶望に呑まれていく様を見れるのか。はたまた想定を越えてくるのか。

まあ見物かも知れないし、見ても結局は呆れ果てたものに成るかもしれない。どう転んだところで上に実害は及ばないね。やはり安泰だ。

そうだな。さて次はあの戦場か。どのような結果を残すのか。残さないのか。見てみるか。

うん。そうしようか。見ても詰まらないかも知れないけど。


眼下に拡がろうと画策する戦場はまだ始まってもいなかった。

その眼には。

だけども感覚は眼下を全否定する完遂するがのように。

そう眼下には確かに始まってないが広げた感覚に引っ掛かる状態は異常を示し、過ぎていた。

さらに知覚を研ぎ澄まし他を調べるも同士の気配が足りない。

そしてわずかに残る香り。負に満ちたように偽装された感情は不味いと警告する。

他に指示を出してその場を脱するが遠くに感じる狂った感情が何かを根絶やしにした。

瞬間より速く身体に走る感覚を剥ぎ取るようにその場から離れた。

が遅かった。一人が中諸ともに消された。

これでは復活のしようがなく、諦め去るえない。

歯ぎしりしたかったがその時間もない。急いで離れ報告しなければならない。

この戦場の流れが確実に予定より変わっていた。

異質に異様に反逆していたのだ。

状況把握のため本殿へと通信しようとも雑音ばかりで繋がる気配はなく、次第に何か、得体の知れない、感情が冷たさを殴り落とすように沸点を越える。

そう制御できない感情は肉体表面に現れ覆い尽くし視界を暗に染めていった。

刹那にて関知した力は自身を掠め遠方の空へと消えて。はなくて一定の高度へ到達すると爆発と四散を展開し無限の数を形成し広域を言葉通りに焦土と変貌させていった。

《憤怒》《不明》。

かの二つが思考を塗り潰し次の行動を容易に移らせた。

して、背後にて同種の力が通過し別の戦場を同様と化していった。

逃げを選択し。何を持っても生きてこの不明なる情報を持ち帰るというある使命感が芽生え、完遂された。

そう生き延び主導者に有益な情報をもたらしたのだ。

直後に狂い赤より赤い炎に呑まれ器は残ることもなかったが。

そう器を破壊されたのだ。


同時刻。少し後。

彼は嗤っていた。いや頬を濡らす雫は悲歎の証明か。

だとしてもこれはいただけない。と自答して半壊したように見える建設途中の街並みの中を歩いていく。

クロイツは一定を歩いて止まると懐から小さな容器を出し地面へと叩き付けた。内容物は当然にして漏洩し空気に触れると瞬時に気化していく。

空気と混ざった内容物は反応を繰り返し消滅と撹拌を繰り返し地上から上空で複数の固まりとして堕ちてきた。

一つを持ち確認して後ろの存在に差し出す。

「ふがくかにひぃ。」

踏んだくるように貪り腹に溜め込む。

次々と堕ちていた固まりを全て平らげ小さく伸びをして欠伸を噛み飲み下す。

収まった殺意に安心できず、途方に暮れるよう死んだ目を遠くへ向ける。

「遠くへ来たようで近い場所ですねぇ。さて元主。この結末は何を産み出すのでしょうかね。ん。」

背後からとてつもない意識を感じて振り返らず屈んで破片を集める。

頭上にて力が放たれたが無視して拾いながら溜め息を吐こうとして呑んだ。


ふはっ、これはまた何かが消滅しましたかね。

それとも、くっく。


欠片を集め終わると適当に仕舞い、懐から一つの品を出しながら歩を進める。

「では行きますか、この世でとっても偉大ではなく矮小な極致戦争の一端へと。」

地平線から黒い糸が幾つも昇っていた。


得られた情報を更に調査し真実だと判ったまでは良かった。だがそれが何であろうと戦況に意味を、波紋を、そして外れることもないだろうと知っていた。そう結局はこれまでのように考えるべくもなく法外な利益が転がり込んでくる。そのはずだった。

なのに。何だこれは。と口から出てしまい。自嘲した。

決定未来を知っているのにこの、光景には嫌な感情が駆け上ってくる。


事を整理しよう。そうだ。昨晩確定速報が更新され端末に送られてきた。内容は多少の変更はあれど大筋に差違はなく終着地は変わらない。

そして直近では何処からか現れし敵に対して対応し配置を変え今日は何事もなく此方の優勢で終わる手筈であった。

だが、何だこれは。有り得ない。いや在ってはならない事象だ。幻想で在ってくれと懇願して現実は非情にして自身の無力をまざまざと理解させられた。

はは。


本来、この地での戦闘は事前の情報を元に編成された対敵群防衛と攻撃を同時進行で終わる。

途中まではその通りに運んでいた、だが迸る力が介入し戦場は瓦解した。そう瓦解という滅び。人的被害はないが代わりのように戦場が滅びた。目の前に在るのは《無》という認識を無理矢理に当てはめ、しかし認識を少しでもずらしてしまうと()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()確定してしまう。

そういった訳も判らない状態である。

あるにも関わらず、戦場が、内包する全てを呑み込んで、消滅と消失を繰り返しその地点を不理解の領域と化していた。

人にも触れた迸る力。だが対象は土地そのものであったのか、人には傷一つ、いや傷付いていた者達も無かったかのように負傷が消えていた。

不理解の領域という判らない状況が上と下を混乱させ全機能を破綻させていた。

現場では危険視した指揮官が撤退を指示、安堵と焦りと怠惰感を伴って引いていく。

残されたのは反行軍とされたある一軍。元クロイツ配下にして死を渇望する死進軍。

相手が逃げるが追いかけることなくその場に座りながら項垂れていた。

暫しして。

「かははは。そうか。そうですか。この様な状態ですか。いやしかし、くくっく。この程にある力。与戸(よも)や世界を根底から書き換えるとは。やはり面白い。おや、皆さんまだいたのですか。とっくに地の一部となっていたと思ってたのですが。ふむ。ではここで選択肢を提示しましょう。なに、簡単です。撤退か進軍か。撤退であるなら門を開きますよ、行き先は保証できませんが。進軍であるならこの薬を服用しなさい。感情が豊かになりますよ。」

全員が動いた。

選択は。

進軍。死を懇願する生きていながら死を渇望する死に体の者達。

「宜しい。では行きますよ。これより先は本当の生きるか死ぬか両方か。見物させていただきましようか。」

クロイツに再び配下が合流した。


業火に拡がる海面。笑わぬように抑えて景色の一部となりながら眺めていた。

根底には困惑が鎮座していたが、しかし隠すように笑いを出そうとして現状は抑えに徹していた。

なぜなら。

海面に燃える面と燃えていない面。二つの区域を遊戯のように取りあいをしている。

全くもって醜いな。

そう心にて吐き出してみたが、自身には響かない。

響かせようとも思いもしないのだが、幾人かは自身の存在を認識していると確証はある。

その必要性はないという判断なのだろう。だからこうして傍観している。

複数に分かれている下にいた部隊は迷いなく進んでいく。自身が与えた力という貰った薬を用いて。

他力本願。

とか関係ない。

望まれたから与えたまで。知らないし知りたくない。

と罪悪感を持てたならどれだけ楽だっただろうか。

確かに強力な力は有している。

そう喧伝も宣伝もしていた。

だが、それは昔の話。現在は有する力は皆無に等しく使えるのは無機有機とはない全てに対するこうした簡易の阻害能力。だからこそ周囲が勝手に勘違いして。なんてなく。一族の最底辺にいた一族で、それを許容した一族は他の一族に一人を残して根絶やしにした後で真実を知らされた後は家畜のように使い潰されると思っていたときにあの戦争が転換として自分を除いて本当に根絶やしにした。

その根元と根幹と遠因が一人の軍人。

会えないとか合えないだろう自身の歓喜は目の前にして叶えられた。だからといって表面にしない。

だから知らないし知れないようにした。

だけどこれはまるで過去の再現のように配下の部隊が敵を蹂躙していく。まるで遊びのように表情は恍惚とし死して更に残虐に欠片さえ残さぬ復讐鬼の所業であろうか。

だからこそこの光景たる風景のような望郷は中々に美味しいものがある。


で、どうしようと思うこともないな。うん正直、この道筋を他の方々はどう考えているのやら。まあ、だとして、僕に何かを期待されてるなんてないしね。餌さとしたような虚空を掴む感覚だね。

まあ、彼には負けるけど。危険な人。

僕は、望んでも望まなくてもふふ。手に入るだろうね。簡単にはいかないかもだけど、今回に限っては。

はあ。早く終わらないかな。この戦場。


という事を思考しながら見ているだけであるが誰も。いや気づいていたであろうがその余裕はない。

この戦場に限っては中々の手練れが揃っており簡単に崩滅させられないのだ。まるでこの地を護るような。


はっ、関係ないですね。僕は僕の仕事を全うするのみ。さてさて、駒を進めますかね。くきき。


内在する力を淡く薄く這うように拡げていく。

知覚されないように足下より深くから不覚と理解するまで狡猾に浸透させていく。

それは敵味方無関係に力の下に置くということである。


ふぅん。久々に大きな力を使えるね。アレ以来か。


脳裏に掠める過去の。というより去年の仕事。

振り払うように全身を小さく振るわせ払拭し拡散を続けていく。

結果として上々以上の異常な光景が拡がっていた。

笑い声と殺戮が狂演を彩っている。

一つを区切って見てみると中々にして愉しいものである。

人が人としての何かを一つでも欠けてしまうとこんな風景が見えるのかという。


それでも突飛まではならないな。うん。どうしようか。


考えるまでもなく当然だろう。この戦場に配置されたのは手練れ揃い。必然的に抵抗値は高いだろう。

だとして見続けているのにも飽きていた。

行動するにしても簡単には運べないというのも判っている。

だが行きすぎている。作戦が填まったという前提を鑑みてもだ。たしかに戦端を切ったのはあの者。だからというと切っ掛けをともかくとしても填まりすぎの感が否めないのもまた事実。

して、それは直後に変遷する。


な、なんだ、動きが統一、されていく。


そうそれも、両陣営全ての動作の狂いがなく。一定の速度と一定の間。一定の感覚を共有するように戦況が変異した。

これまでの経験と知識が其を認識し意識の外で動いていた。

迷うことなく離れ気が付くと遠くに奏でられる乱すもの。

拒絶の言葉を拒絶するように元居た場所には暫く後にて双方全滅という報せがもたらされた。

心に深くはない傷を残し。


さて空白地には乱雑する建物みたいな何かが屹立していた。

上から見ていたならそれも乱雑していて何を意図するかも判らない。

それでもその屹立するものは存在を示していた。

近く。

影が陰を移動し一つ一つに何かをしていたが片手で足りる数で存在が消え、また少しすると同じような行動をする影が同じ事を繰り返す。

最後に現れたのは陰から外れ一点を見つめてから何をするでもなく消えた。

風が建物の間を糸を縫うように吹き荒れていく。


投げやりだなおい。

うるせぇ。取り敢えずだ。


全ての戦場は開始前後してモノの見事に瓦解崩壊全滅破滅不明という想定の外側という結果を導きだした。最後は理解されないだろうけど。

だがこの戦争は終わらない。まだ用意された全ての駒が揃っていないのだから。

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