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Heart of 6 〜赤と譲渡〜  作者: 十ノ口八幸
三章~無怒の宗団~
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三章~邂逅~2

時間は幾度目か。僅か遡る。いや少しかも。ん。もしくは少々。とりあえず戻る。

この同時間帯は内に潜っている。


儀式は成功した。と誰もが疑わなかった。伝承の通りに器の肉体は一度分解され再構築の祭に自我は崩壊していると確信していたのだ。

そしてそこから形成される自我は自分達の都合よく甘美な物と醸成される。

その浮き足立つ全てが少しは引き締めていたならばまた違う路を辿っていたのだろう。

その場にいた全員が見た常態と伝えられていた事が合致したことで個々に秘める想いを確信して慢心していた。盲目になっていた。停滞していた。

故の満足だ。満腹だ。慢心だ。

儀式終了後各派閥に別れ其々の願いを叶える準備に至っていた。

一つだけ観ていこう。


その日。危惧する事態に陥る。

全身から外套の内で流れ出る全ての体液、実際、誰かそれか何者かが見てしまえば欲に走るかもしれない。

不快に感じながらも見るしかできないもどかしさ。そして儀式は成功し歓声の中で崇め奉る御方が降臨なされた。

自然。溢れ出る涙を拭うこともせずただただ見ていたのだ。

部屋へと向かわれた後。各派閥内での話し合いが持たれた。

各派閥の構成員は十数人などの少数から百や千という大規模な派閥まで存在しており個々の願いを成就しようと躍起になっていた。

もちろん複数居れば各々の願望を優先されて然りであり簡単には纏まらないのである。中には闘争での決議というものまであるのだ。時間を掛けてもなお早々易々淡々とは往かないものである。

中であってこの派閥は異を放つ。

全員が一致して一つの願いを叶えることに合意したのだ。その時間は一分にも満たない。

なのにその後も形だけは討論をしているかの様に装っていた。短時間での解を出してしまうと他派閥からの槍玉に挙げられかねないのだ。

以下はその内容を抜粋したものである。

・一つの願いに執着しても無意味。様々な角度から検証して残ったものを我々派閥の総意とするのはどうか。

・それこそ時間が掛かりすぎる。なら派閥筆頭の願いを優先するというのは。

・それでは我々の願いと差して変わらない。派閥に集った目的を君は忘れているようだね。

・でもだね。そもそも派閥に集まる硫の根元は似通った願いに他ならないとも思いますがね。

・それはそうだけんども。少しくらいは譲歩というものを。

と最後に提出された議事録にはこの様に書き込まれていたが終始中身のないものである。


なんとも不鮮明な内容である。

これが一つの根幹である。


派閥の提出内容も固まりつつあるその少し先で事態は急変する。

時間にして少し前。

各々の願いは確定し浮き足立つ。

見張りとして駆り出された者が暇を弄びながら一つの欠伸を噛み殺していると肩と額に衝撃を受けそのまま意識を消失していった。

直後建物の陰より空間を渡り歩いていたかのように現れる影。淀み無く迷い無く歩む足取りはある施設へと向かっていた。

その歩く側に立つ監視塔からは幾つもの次々に気配が消えていく。

静寂を守るような影の一歩ごとたるその気配は消えていき、ある建物の前で停止した。目的地であろうその建物は高く何処までも大きな建築物。巨大な物を納めるための様な箱であろうか。

それを瞬で理解は常人には不能であろうが。

と耳に手を当て何かを話している。最後に言葉を紡いでから建物の上部を見上げる。

「ふう。遠いな。」

前を向いて歩く目的のために。


時同じくして一部を除いた信者が大講堂に集まっていた。

祭壇の前にはルヴェソ・タークス。

仰々しく宣っているが信望者は気も(そぞ)ろである。

だが次の言葉により全ての視線が集まる。

「さて前置きはこれで終わりだぁ。この日この時この場所にて我らにとっての世界が流転する。始めよう。世界を我らの手をもって造り治すのだ。」

熱を帯びた空気は爆発寸前まで達していた。

虚しく悲しきかな。発散されず燻ってしまうのだ。

沸き挙げようとする直前に大きな揺れが三度続き動揺を共存させて持たらされた情報は。

「き、危急です。ぐ、」

「な、何が。」

枷を内より嵌められし扉が開き入ってきた者は人の壁を強引に掻き分け、タークスの面前へと躍り出ると膝を折り額を床に擦りつける。

「きょ、強襲でヴぅあ」

最後まで云えず弾け飛んでしまった。

衝撃は感染力の強い病の様に伝播し混乱が生じる。普通なら。

「ふっはははっ。嗅ぎ着けてきたかの。良い良いな。よく鼻が利くものだと感心する。しかしなれども想定範囲内だぁ。さあ皆は良く冷静にいてくれた感謝を。各派閥に通達されていたと思うがこれは計画の一つにすぎない。健闘を祈ろう。では散開。」

会場は瞬きの間で一人としても残さず消えていた。


ああ。これも我らに手元流れたあの書物の賜物なり。ふははっはぁ。さあ、これで確定要素は揃った。全てを嵌め込みそして完遂して私の願望を手に入れて。くはははっは。


監視塔から離れた桟橋には複数の機械が置かれていた。

『起動確認。正常。門解放。』

其々の機械が他方へと散らばり島の各地で周囲を巻き込みながら大きな門を形成確定していた。

巻き込んでいるのだ。周辺の物をだからこそ誰もが知らないし知りようもないのだ。この先での双方の範疇を越える不理解すぎる事象に対して。開かれた門からは重装備の所属不明である者達。器機を携え展開する。その速さは見張るものあり一区画を展開して短時間で制圧していた。

それは門を設置した場所全てに言えることである。


一つの施設へと通じる扉が解放された。原因は門形成による周囲への破壊。伴う振動に気づかない愚かはこの島には存在を許されていない。

「おっしゃあぁぁ。一番乗りっっ。」

出てくる第一声がこれとは嘆かわしいかもとは、誰もが思わず展開されていた部隊を認識すると彼ら彼女らは自身の遣るべき事を果たすべく行動を起こしていく。

全方位より注がれるような弾雨。対して流し流され止め溜まり。はてさて信者は全員が全てその身に流れる研鑽を体現していく。

一人は手にした獲物を握り軽く振ると爆風が周囲に吹き荒れる。一人は握りしめた瓦礫の一つを視線の高さへ持つと瞳に宿る力を解放し音の速さほどの力で穿つ。

一人は向かってくる物を受け、流し、力を倍増させ返す。一人は同じように向かってくる物を受けるが流さず別方向へと弾く。

遠方で着弾音が聴こえてくる。

一方で不明な者達は慌てず対処していた。

まるで反撃を想定していたように。

『これより押し上げる全軍前進。』

呼応するように各地点で押し上げられる戦線。

戦いに向いている信者は少なく、対する不明な者達は多い。

だが数を物ともしないその個々で圧倒たる力は戦線を押し上げていた者達の士気を下げることになる。

ものの短時間で戦線は島各地の淵まで下げられた。

門を前に膠着が続くかに思われたが、戦況は一気に片付いた。なぜなら信者の後方から大規模な爆発が多数発生したからである。

結果、戦線は瓦解し不明な者達は一気に制圧。島全土を管理下に置いたのである。


陥落した施設は不明な者達が目的をもって調査していた。信者達は一と所に集められ厳重な拘束処理を施され放置されていた。

放置されているといって自由に動かせることはなく、手足と首に枷を嵌められている状態である。

中でも施設最高権力を保持している者には厳重かつ慎重な施しがなされていた。

一つ。拘束服には多重の装置が取り付けられている。

一つ視線を隠すために片方ずつには眼帯をあてがいその上に特殊な布を巻く。

一つ耳には消し虫という音を完全遮断する虫を三つずつ入れその上で栓をする。

一つ鼻に管を差し込み反対に繋がれた機械から空気を送り込む。当然であるが口は完全に塞がれている。

ここまで遣る必要性を感じないのだが、最高責任者である。十全にして万全を期していても足りないほどである。

そう考えているのだ。


別動隊。と言ってしまえばそれまでなのだが目的は別である。

今回の目標は最低二つの物理的或いは物質的な、《何》かであろうとするだろう。

詳細は不明であるとされるがこの部隊は理解より早くに行動を起こすことを信条としていた。

言ってしまえば中身や工程より結果を重視する。

そして現在、複数に別れ行動を開始していた。

『こちらヴェルエート。目標未だ発見ならず。先へ進む。』

『了解。事前情報に差異がみられることを留意し目的を完遂されたし。』

『了解。先へと進む。』

『ではこれより定時報告を徹底されるよう。』

『了解。では次は一時間後に。』

通信を切り後方へと指示する。

そのままに全員が言葉少なく従い進んでいく。

その最後尾に大きな荷物を背負うものが気を入れ直すように姿勢を正し着いていく。


幾つかの別動隊は定位置での報告と定時連絡への徹底さらに最後尾に大きな荷物を運ぶ者。

似たような編成で担当施設箇所を進んでいた。

中で二つの異様を放つ部隊は連絡も短く済ませ、言葉もなく進んでいた。大きな荷物を運んでいる者は居る。がその更に離れた位置にて不理解なる様相の出で立ちたる圧倒力をもつ何かが着いていっていた。

全員が嫌な何かを衣服の下に垂れ流していた。

そう穴という穴からである。

一人は思った。


クソが。俺達がなんでこんなお荷物をもし。糞っ。


もう一人も考えていた。


雄油(おあ)っ。冷汗瓶瓶(ひやあせビンビン)っ。(たぎるねえ)


さらに一人。


ふヒっ。ふひょヒょ非ョ。分非非非非非非。


この様に内心恐れや怒りが交錯していた。

その心情を知らず進む各部隊は最終的に目的地に到着した。

元から地上での戦闘を囮とし内部機構への侵入は密にされていたため知るものは限られた上の数人だけである。

して。この部隊群を指揮する者達もまた機密にして極秘な別の指揮系統である。

混線を避けるために周波数も普段使用する波数の影に隠れるように使用されているため容易には露見することもない。

が、不足の事態は幾つものあるもので歴史を紐解いても数知れずである。


さて不思議なもので緊張すればそれは動きが緩慢になり得ることであり、その様な事態は必ず訪れるものである。

「ふふ。約束の日には非なる事が起こりる。最高者様の仰るとおりであるたな。」

『なに、』

「かの場に居合わせて部外者と考えるなら。愚かった。」

『お前こそ我々を相手に一人で挑むと。』

「あは。あははは。ああ。そうだよ。その方が気兼ねなく恙無く進行できるというもの。さあ、相対して相対して答えを示そうか。」

『ふざ』

「ふふんと。ふざける等愚の頂きなれば。だん。くききき。さあ儀式の開催だ。」

『なに、を。』

「おや、この場は一人でもり。他はどうかににゃ。」

『まさ、か。』

その表情は肯定していた。

「いあににゃ。いったなに。これは儀式。祭壇はこの。島ゃ。全てぃ。装置もに。発動して。るにゅにゅ。ふふふひひひひ。」

腕を拡げ、上半身を前傾させる。

「ぎ、ききききっキキッ。あぁ。はじじじじめめめまめめめ。くひひひひゅ。」

肩が抜ける。

言葉通りに肩が抜けていた。

「ぎ、ぎぎぎゃギャがががががヶかかか。があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ。」

『な、なんだ。』

「ぐがぁっ。」

予備動作なし襲いかかる。その表情。その態度。その変貌は驚きと共に不明な者達に反抗への動作を送らせるに十分でありその肉体へ深く癒えることなき傷を負わされる。

当然悲鳴は挙がるものだが、それすら赦さず喉を食い破り口を引き裂き穴を開けた箇所を起点として投げ飛ばす。

短い悲鳴は誰も聞けず無惨な姿を晒していた。

最後に残されたのは最後尾に位置していた者。ただ一人。

そう同時刻異なる場所にて全ての別動隊の最後尾を残して全滅したのだ。

「ひょヒょ非ョ。さああ。残りは貴方のみ。引くことを進めるが。」

終わると同時に地へ伏していた。

一部焦げた外套を拾い上げて装着すると荷物を背負い先へと進んだ。


地上では変わらず戦場が拡がっていった。

制圧したはずだが中より反乱され負傷者死者が増加している。

だが全員が場を死守することに専念し均衡は保たれていた。

「防衛は徹底しろと前衛に伝えろ。負傷者は早く下がらせろ。邪魔だ。」

「た、隊長。西側防衛が持ちません。」

「なんとか持たせろ。糞。貧乏くじじゃねえかよ。」

乱戦である。なにせ反乱した者達は全員が同じ衣服に同じ装備である。簡単に見分けが着かず混戦し味方を攻撃したならそれは疑心暗鬼となり瞬で全滅してしまうだろう。簡単にはいかないと懸念する。

一方で反乱した者は自身以外は全て敵対勢力として捉えており、同じ志を持っていたとしてもそれは別の話である。

そう反乱者同士であったとしてもまた、奪い合いなのである。

中には知り合いであろうとも別にして奪うのである。命。いや、生温い。存在そのもの。そう負ければ存在全てが勝者に置き換わるのだ。過去から続く世界の全てがすげ替えられるのだ。関わる記憶記録記事記述情報。そう。全てがだ。


海上。陸地より遠方に位置した海域には空母が一隻停まっていた。

その周囲に展開されるは護衛艦十を越える布陣である。

「どうだ。」

「あ、はお。恙無く作戦は遂行されてます。」

「そうか。」

「ですが、此処にきて問題が。」

「なんだ。」

「はい。どうも内部に信者がいたらしく幾つかの部隊が瓦解して機能しておりません。」

「なら問題ない。それすらも折り込み済みの作戦だからな。」

表情がかわらず仕事を続ける。

移動し椅子に座ると手を組み合わせ俯くと小さな笑みを作る。

暗く空調は利いていても全てが全員の視線は担当する画面へ注力している。

今回の作戦立案者は匿名だが上層部のさらに一握りには正体が解っているのだろうと考えている。がこの作戦の詳細を知っていて戦慄する。

複数用意された作戦案はどの様な事態も想定されていた。仮に初動の作戦を零とすると今の情況は不測の事態の中の幾つ目であったのか複数ありすぎ検討できない。

「艦長。地下班が制圧完了とのことです。ですが。」

「なんだい。」

「その信号が途絶えてます。」

「む、少し待て。」

画面を操作して幾つかの画面へと表示を移動させる。暗号を打ち込んで幾つかの表示内容を読んでいく。

「おお。」

いきなり叩き立ち上がる。

全員が振り返る。

「くはっ。ははは。正に恐ろしく。美しい。あぁ。甘美だ。」

悦に入ってる。

「ん。何を見ている。余所見しているひまなどないぞ。」

手を叩くき促す。

「あの。」

「なんだ。違反だぞ。」

「いえ、途絶えた信号に関しての指示を。」

「お、そうだったな。」

画面を操作し情報を送る。

「この内容で遂行してくれ。」

送られた情報は誰もが驚くと同時に内心呆れていた。

その作戦自体は遂行可能だろう。が、現在の情況を照らし合わせ、誰が見ても明らかに無謀だと思っている。

「ああ。はは。いいから遣れ。」

足下より寒気が昇る。

作業は続行され作戦は続けられる。


島外縁部。直上には展開された門。送り込まれる者達は着地と同時に陣地を設置していく。

黙々着々粛々簡易な陣地は瞬きの数回で完成した。指示もなく次の行動に移る。

門から送られるのは何も人だけとは限らない。次々に送られる中には陣地作製と無関係な品々がある。

残ったそれらを各自が持ち全員が頷くと四方へと散っていった。

表情は見えないのだがその雰囲気と醸し出す空気は何かを思い詰めたものがある。

其々が向かうは島の数ヵ所にある高い建物。中でも上部が広場になっておりしかし外からも内からも入れるようなものはなく。不可解な構造をしていた。

数えるしかない人数である。戦闘に集中している者達には目端に捉えてあっても気にすることなどできないのだ。

して、艱難辛苦なくたどり着いた。

耳許の内臓器機を起動装着を点けると中空に映像が映し出される。

『では。これが。最後、だ。何か言いたいことは。』

複数の画面には一人一人の顔が映し出されていた。表情は硬く緊張していたことはだれでも理解していた。

決意もまた。

『そう、か。では結果で示そう。』

吐き出し吸う。

『これより我らの我らだけの最終作戦を開始する。来界の再会を願う。』

伏して。

『登れええぇぇぇ。』

眼前の塔へと掛け走る。


塔は外部からの侵入は不可能で、実質的にはただの飾りに等しいのだが島の者達はこの塔を一つ一つ大切に管理していた。

内部も一握りの者が特別な方法で入り管理していた。

一種の偶像崇拝に近いものがあろうか。

詳細な構造を把握していたもの。実は一人としていない。

何故ならこれは。


走りはじめて少しすると何もない壁が競り出して円筒形の何かが同時に上下へ向けられる。

下方を向くは銃器。放射される弾は容赦なく浴びせてくる。

なのだが怯まず違わず迷い無く走り突き進む。その身を赤に染めようと頂上を目指す。

下へ向けられた銃器の横を過ぎると今度は背後から重火器の弾丸が無秩序無軌道縦横無尽に放たれる。背後からの追随するような噴水の弾丸を手足に受けても思考を一点に集約さて尚も突き進む。

時間にして短く片手で足るが自身にしてみれば長く果てない終わりなき時間と錯覚しても不思議でないだろう。

頂上へ到達し起動させ確認する。

『ば、番号。』

次々に応える。

応えが終わると小さく膝を崩す。口に溜まるモノを飲み下し歯を軋ませる。

『さあ、これが、我々、最後の、任務だ。では来界で会おう。』

全員が小さく頷くと頂上中央に移動し見上げる。心なしか達成感があろうか。無意識に数人から頬を落ちる液体が流れていた。

全員が取り出したのは小さな生物的機械的装置。胸の中央に宛がい聴いていた言葉を紡ぐと。内部に備えられていた機構が解放され閃光と爆音を伴い塔を瓦礫と化していく。


瞬にして全戦場が停止した。混乱と困惑。

はてさて誰の何者の差し金か。

一気島は混迷極地。

海上でもその事態は把握していたが。

「き、聴いていた話と違うじゃないか。」

司令塔である艦長も驚くことは無理なかろう。極秘中の秘であり。島の重要拠点たる塔。その全てが同時に瓦礫の山となってしまったのだ。

この態度に部下達も困惑しかなく。右往左往するしかない。

指示を仰ごうにもその指示だしする艦長が混乱しているのだ。

突如全画面に詳細な指示が表示されると同時に警告音が響く。

動揺は隠せないが一人が画面の内容を読んでいく。

「た、大変です。艦長。よ、読んでください。」

自身の画面に映し出された内容を読んでいく。

その表情は疲労軽く次第に徐々に確実に重く苦しくなっていく。

膝を崩すもなんとか堪え、椅子に肘掛ける。

「これは、本当か。」

「は、はい。幾度も調べ挙げましたが信憑性は高く上にも確認を取りました。」

「ぐっ。そうか。くそ。なんなんだ。一体何が。」

内容は一つ。

現在の時刻をもって作戦を全て飛ばし最終作戦へと移行する。待機艦は門までの撤退を全部隊に指示されたい。

という簡素で驚愕の内容だった。

これは作戦の成功を意味しているのだろうか。しかし。と艦長は考えてしまう。何者がこの情報を。今回の作戦は1から最後までの工程を全て現場完了まで何物も提供しないことを前提としていたはずだ。それを崩してまでもたらす理由がみられない。

そう思考した。

が、思考したからといって現場全てを任されている自身たる一存で決められない。そう作戦前提の作業は考えていたより早くに終わりを告げる。

「で、では全部隊へ例の指令を発令。門へと撤退し現場を死守するよう言明せよ。」

小さな間があり全員が最終作戦へと動いた。


同時刻。

戦場には艦隊から戦線の後退というより離脱準備の指令が一斉発令された。固唾をのむ指揮官達は現状を鑑みて素直に従うもの。自身の功績を望むため無視し抵抗を続けるもの。迷い出せぬもの。等々と混迷がさらに混濁した。

各々の戦場は時間と共に負傷者が増えていく。

さらに命も消えていく。

結局。最高指令を戦艦経由で発令され思った以上に無駄な時間を浪費させ門近辺へと戦線を後退させていく。

これに歓喜するは当然にして信者達。

士気は空へ昇るように上がり攻勢が一気に高まって戦線を押し上げ次々に相手の動きを永久に止める。

がそれらを執行しているのは下の信者達。上の者は慌て困惑混濁発狂していた。

施設内にてそれら体現していた者が一人。そうあのタークスである。

その鬼気とした乱しようは全員がどん引くほどである。

「ききぎ、きあああぁ。ば、馬鹿な。ななな。ぜだっ。どうしで。だがああああああ。」

一人がどうにか駆け寄り止めようとするもある地点で霧散した。

動揺が走る。

が何とか抑え、拘束する。

一人がその相貌を見るが。

狂っていた。片眼には虚無が鎮座して一つの揺らぎもなく。片目には噴煙のような失望が上っては霧散しされど二つを合わせると一定の平坦な無が見えていた。

慌てる者達を他所に何故かどうしてか。タークスの肉体が崩れていく。

それは草臥れた人形のように散っていく。

残るものはなく。その存在が在ったという証明すらできなくなる。

事態はそれを許容しない。

壁が砂のように崩れていくとその向こうには一人の制服を着た存在が涼しげな表情で歩いてきていた。

身構える。そばから床に崩れる。

足が砂のようになっていた。

当然のように悲鳴があげられるが、一つの疑問をもって終息した。

痛みがない。以前に、赤が床を染めないのである。

理解が追い付くより先にその者は完全に砂のように全身を化して床へと溜まる。

着くなり深呼吸を一つ。

「ええ。始めました。ええ。始めましたとも。私。こう見えて落ち込んでいるのだろうと見受けられますけど。それでまあこうして御足労したのですけどね。いやいや。こんな事なら少しは道を逸れても良かったと報告したいなと思ってみても最後には誰かがわらうのですね。おわり。」

意味が理解できない。そう全員が考えていた。

「ああ。そうだ。到着したらこれを言ったら面白くなる。とか言ってみたり言わなかったり。」

姿勢崩し。

「くだらない。」

侮蔑と汚物を見るような視線を向ける。

「知ってますぜ。君様達は願いの成就のため理解し難い何かを世界に落とそうとた。それは阻止させてもらう。」

絶望の空気から笑いがあがる。

「ん。面白いことを言った。事はないけんど。」

「くひひ。その情報は何時の情報だ。」

「あ、そうか。成功したのんですな。」

「驚く。とは程遠いな。」

「はああ。騒ぎが的中したか。本当に避けたかった。道筋ではあるのな。」

納得して。

「でだ。その落ちているものを見るに。この施設の指揮権を所有している何かの成れの果てと見受けるがね。合ってるんよな。」

「はっ。こたえ。」

「そうだ。我々の最高権力所有者である方だった。でそれが貴様に関係あるのか。」

「ん、ないよ。いやあただ聞きたかっただけ。さて。本題だ。」

「な、んだ。」

「命失いたくないならこのまま無抵抗で此方に投降してほしな。とか思ってみても。」

返答の態度を待たず。

「なぁんて。するわけないよに。んじゃ世界に別れを。」

と悲鳴を挙げる事も出来ずに赤を噴水の如くに吹き出し強制別離をさせられる。

「おとっ。済まないねえぇ。一突き一刺し一抉りと思うところなのね。それらわ埒外の聡明が邪魔したから苦しむ結果で終結するに。はう。黄昏だねえよ。」

静かに笑いを落とす。

「さて、報告は。そうだね。最高権力者の乱心。とでもしておこかな。強ち間違いではないし。だてだて。欲しいものは手に入った。急ごうか。争奪戦だしな。」

静に床を蹴るとその場から姿を消失させた。

残されしは苦悶と後悔と何かに対する懺悔。

物悲しくそれら降り注ぐものにより扉は固く閉じられた。


地下を通る足音が反響せずされど音は鳴る。

おまけのように口遊(くちずさ)む。直線距離を緩やかに走る。

散策するように楽観的な画。

長い直線で()()()()道の終わりに左右の扉。

悩まず両手を顎にあて、目線を軽く上に向け、願いを言葉にする。

揺らぐ両扉は同時に自壊し中間が左右に「めんどくさい。」始まる前に叩き吹き飛ばした。

軽く驚くような表情は瞬で剥がし、中へと入る。

見える範囲で何もなく。考える素振りであたりをつけて目的の物を手に入れる。

「さ、がふっぐあっぎがっ」

止めようとして最後まで言わせず爆る。

「んんんっ。そうなんだね。耐性持ちかな。加減のつもりないけどさ。まっ終わってるけど。」

来た道を戻る同じように歌を口遊み歩いていく。自身で造った出入口に。


視点を変えると面白いことを見れる。彼の者は普通に歩いている。そう意識しているだけだ。実際は。

「 な、なんだ。お前は。くげ。」

や。

「おい。何処からはおっぱっ。」

とか。

「ん。なんで。」

さらに。

「くぼっ。」

とまあ全てが全員応えるなどなく爆させた。

本人は直視しながら普通に歩いているだけ。

歩く速さは一定。急ぎ余裕でなく自分の底にこびりつく何かを元に向かっていた。

到着した場所には。

別の班員。

到着同時に爆ぜた。

言葉すら拒絶したのか。無意識か。本人しか知りよう。本人は知らないことになってるのか。

これが本来なら映る光景風景情景。が意識し無意識下で思考から排除されている。

なので彼の者には何もない平坦な世界にしか映ってないのだ。


焦点の定まらない世界の中で目的の品を入手するためである。なのか深層心理を覗いてしまうと別の目標が見えてくる。霧が流れ雑音が(思考を)乱す。

押さえる頭の中から響く声のようなものが次第に大きくなり小さくなりを繰り返す。

辺りには何もないと確認している。だが痛みは何なのかと自問するが必然と答えが出るものではない。

歩いているのに世界は歪んでいるのに、足は確実に前へとぶれることなく出している。

言葉は出ても言葉としての体裁はなく聞くものには雑音か何かとしか理解されないだろう。

道は続く永遠と言われて納得してしまうような道は先の終わりが見えず現状の体調を考えると心が乱される。

施設に入ってから。いや島自体に近づいてから少しずつ声が響くようになっていた気もする。という考えは次の事態により飛ばされる。

短い言葉は誰にも届かず、幾つも大小からなる瓦礫の下敷きになってしまう。

暗闇に浮遊しているのか足を着けているのかさえ不明瞭なのに確たる印が目の前に存在してる。

手を伸ばしても近づいているのか掴んでいるのかという感覚なく、動かす足すら見えていないゆえに失していた。

どうしてか困惑ということが皆無であり、その見えないはずの。感じないはずの中で確たる真実として目標へと近づいている。ということだけは理解できていた。

近い。その感覚を信頼し最後の一つで揺れた。同時に引き裂かれる感覚は感情と共に分けられ砕かれ混ぜられ意識が現実へと戻っていく。

耳障りな音が周囲から弾けるように届く。

時間にして短くも感覚としては長くもある。

当然に怒りが腹底から膨れ上がり、達する直前に全身の力を抜いた。

僅かにずれた瓦礫の隙間から腕を引き抜くとその勢いで周囲の瓦礫全てを薙ぎ払ってしまう。

下敷きになってしまっていたので衣服の隙間から赤が少し出ていたが、救急処置機能が働いたのか止まっていた。

間接の可動を確認し気づくと手に何かを持っていた。

目的の品を掴んでた。

「なんだこれ。いらねっ。」

棄てた。

ん。棄て、た。

て、ええぇ。棄てるんかいっ。

あ、んん。棄てられたそれは虚しく誰にも知られることなくその場から動くことはなく。

てのは世界が赦さない。ので後々に拾われ品は全て揃った。ふう。


品が揃い。一つの場所に集う。

が一人欠けていた。

「もう一人いますよね。どうして二人だけ。」

「んににゃ。しいらねぇ。俺達は今日初めて会ったんだろ。ならもう一人は遅れてんじない。」

「そんな。この作戦の目的とか理解してないのかな。」

「ああ。そうだねな。そうだ。これ拾ったんだけどな。」

「む、むむむむ。何処でですか。て聴きたいけれど、今は時間の余裕がないので仕方ありません。二人だけですけど、例の場所への鍵は揃っていますしね。仕方ありません。緊急用に用意していたこれを使わせてもらいます。」

長方形の三つの箱を床に置き順番に起動させると合わさり幾つかの機構が分解と連結を繰り返し人形(ヒトカタ)に完成した。

「んみみ。これはこれは。簡易型ですが。」

「え。そんな名前なんですね。説明は受けてますけど、たしか単純な動作だけならこれで。とか。」

「むにゃふふふ。まあ不測の事態は何時の世もありまふひね。では動作制御を入力して、同時に差し込み。でいいかにゃ。」

「うん。いいですね。ではこれを此方に固定して。位置に着いてください。」

着くと軽く頷き。

「せいの。」

鍵を差し込み回す。

何もない。

差し込んだ品である鍵は確かに本物であろう。だが悲しきことに、起動させるための装置自体が壊れていたのである。

その理由というのが。


何時かの何処かで見たような場所。

何の因果か運命か。一つとして迷うことなくひたすらに歩いた。そう心の底にこびりつく感情。それは何かは知らなかったのだが別の処で素直に受け入れてもいたのだ。

痛みは引いていたが、服は着れたものでなく、諦めて適当に見繕った。

到着した場所の既視感には辟易した。

「これはこれは。はは。本当に廻るのね。ふむ。」

到着した場所は目的の途中に位置する。それでもこの場を通過せず留まるには理由があった。

「たしか、あ、彼処に窓。それに来た場所が。そんでもって対面に頑丈な轍の扉。」

いやいやいや。あり得ないって。

ん。でも、確か、あ、そうか。なら納得。

「でこの感じだと。放棄されて長い時間が経過、してるように見えるけど。実際は。」

床を軽く蹴る。

乾いた音がするはずだが反して鳴らず。

「現状維持で稼働中。はぁ。まったくもってのくだらない。」

膝を折り項垂れるように深く不快な溜め息を吐いた。

と足下に感じるものがあり、次第に大きく振れていく。

「おいおい。まさか。」

見上げる一点が変色し起点にして亀裂が天井を走る。

「そう来るのね。」

言い終わると同時に数歩下がり天井が崩れ初めその中から見知った存在が瓦礫と共に堕ちてくる。

があの時に見た姿はしていたがその体表は赤く熱を発し、

「おいおい、これがあれの能力か。ん。」

違った。なぜなら落ちる途中であってもその巨体を振り捻り大きな口を開けては閉じ、表面を覆う皮膚も爛れていっていたのだ。

その上に幾度もの爆発が数回、いや、数十を数えるように地へと繰り返されて、床に堕ちてもなお苦しむように暴れその影響によって揺れる揺れる。

「ふぶっ。あっつ。痛いな。んだよ。」

見ている間に変化は進み次第に巨体を振るわせる力も尽きたのか横たわり、次いで融解していくと一気に燃え上がり黒煙が空間を満たしていくと届いた音は何かが崩れる音が聴こえていた。

噎せると共に視界が晴れていくと一人の影が目に入った。


痛みは限界を越えていた。超えて肥えてそして。

声が音として反響しないのに反響していた。

骨が変異し筋肉が換装する。手にあるものは確実に存在している。手掛かりを。

この様な場所に保管されていることに安堵と憤怒が掻きむしられる。

仮の姿を盗ってこの作戦に紛れたが支部にして愚かな事をしたものだ。と思ってみても何も感じない。目的は調べて理解している。だが腑に落ちない。どうしてそのような事をしたのか。甚だ疑問しか浮かばないのだ。

「て考えても意味ない。オレの目的は彼奴を見つけること一つ。さあて感覚は合ってる。ふふ、近づいている。」

自然に歩く速度も上がる。上がる。

不思議と痛みはなくなっていた。

「さあ。ここを曲がれば。」

出た場所は。

落下と切り裂くような風に最後破裂音。


そんなばぐふぁっ。確かに感じ取って、いた。の、に、どう、して。


その感覚に対して違いなく確実にその場には()()()が在ったのだ。

それも強烈な生の残り香である。これまでこの感覚に頼って間違うことはなかった。だからこそ。不理解の状況は肉体的な事より精神的な動揺に治癒を遅らせる。

「そん、な。」

この者は知らないだろうが、確かにこの場を漂うと形容した残り香は一番濃度が濃く高い。

他にも残り香は至る場所に漂うがその差に開きはあるもので誰でも一番に濃い場所を一番の確実な場所と考えるだろう。だからこそこの場を選んだ。仕方ないだろう。

では何故、この場所が一番濃いのか。答えは単純なものである。

実際、ここ数日は一日の大半を過ごしていた。風を感じ。海面を眺め。鼻腔を刺激する潮風。

そう彼の者は知ってか知らずか過ごしていた。あの主と言われるモノとの出会いまで。

波に拐われ海面を流されるも海中から感じる大きな存在が向かっていていたが負傷しているため抵抗などできるはずなく。諦めた。

その大きな存在が海面目掛け、浮上すると同時に大きく開口部を開け、一気に海水ごと体内へと喰らい飲み下した。


ひひ。どうも目的への道は遠い。はぁ。なあ、お前は今、何処に居るんだ。怖い。怖くて寂しい。なあ。お前は、いま。何を考え誰を思っている。


食道を通り落ちた先は胃液に満たされる場所。と思っていたのだが。

強打に意識が覚醒する。

と同時に何かの声が聞こえたが痛みにそれどころではない。悶えるように変な動きをしてしまう。

これまでの痛みと異なる痛みが手足を穿つように下部を貫く。

揺れる。

後に知ることなのだがこの時、放置されてればそのままに命は消えていたろう。なので無理にでも止める必要があったのだ。

と。

「そうか。で。アナタ、誰ですか。そして此処は何処ですか。」

「ほほ。レに名はない。そしてここは胃袋の中よ。君は喰われたのさ。生け贄(えさ)と間違えてな。」

「餌て。」

「ああ。生け(えさ)だ。」

「ん。」

「ん。」

二人の認識する齟齬の違いに。

「「まあいいか。」」

気づかないことにした。

良いのかそれで。

「で、どうしたら出られる。」

「ん。」

「いや、出方を。」

「ないな幾つもの考え付く限り試した。全部悉くに無駄に徒労に終わった。なので方法はない。」

嫌な汗が滴る。

「じゃあどうしても。」

頷く。

足から世界が崩れる音がする。

絶望が覆い被さる。

「ん。なに、この場所も慣れたら楽園よ。老いず朽ちず居られる。」

失意にのされる。

「まあ気に病むことはない。言っただろ。住めば楽園だ。空腹も感じないのだよ。」

頭を抱えて悶える。

「ははは。気の済むまでん。」

悶えを止め立ち上がる。

「ふざ、けるな。よなぁ。」

絶望だけでない、この者には世界に対する感情が湧いていた。

「これまでだって色々とさぁ。あったけど。なんだよ。これ。」

上を睨むと。

「どんな方法だってなぁ。関係ない。でる。出ると言ったら出てやる。」

理不尽がこの者の(こころ)に刻まれ蓄積されていた。

それは限界だった。

腕を上下に掲げる。

言葉を今現在に適した言葉を口にすると瞬間に二人を包む一色の赤。胃にある全てを焼き、蒸発し蒸しあげる。

必然器なる存在は反応し暴れ狂う。

内側から突如と焼かれるのだ。その痛みはいか程か計り知れない。

暴れ狂うその者は海を縦横無尽に泳ぎ回り、灼熱の塊と化した肉体に触れる海水は瞬時に発し、その余波に充てられた生物は瞬で茹で挙がるか、直接触れ、瞬で炭となるかである。

悲しいかなその巨体は長きに渡る幾重もの循環により負傷と再生を無限に繰り返す永久機関と化しており、死ぬことが赦されないのである。

海中を暴れに暴れ、浸透する海水による痛みから逃れるように一度深く潜水すると一挙に海上へと浮上する。なのだが今度は大気のチリや風に肉体がさらに傷められもがきながら上空を泳いでいく。

知らず知らず先はある地点へと向かっていた。

あの廃棄された施設へと。


体内では変わらず赤が蹂躙していた。それは内臓全てを焼き融かす程の熱量に関わらず傷められた端から治癒していくのだ。

これは更なる理不尽を上乗せするため勢いは増しに増す。

人としての意識が消失しているのか。

口に出るは獣のような吼えである。

近くにいたあの物は最初の勢いにその器を焼失させられていたが、その刹那に微笑していたことに彼の者は気づいていない。拡大する力の範囲は遂に胃の治癒力を上回って他の臓器にまで拡がっていく。

溜まりに溜まる。感情は燃え尽きず次々に注がれていく。終わりがない。

この状態を維持したならば、自壊崩壊分解と続き、さらには剥離融解気化して何も残らなくなるだろう。

段階はまだ初期であるのだが器たる肉体が耐えられない。

と全てを包む赤が引いて消えた。

残ったのは一人。そうそしてその理由は全身を刺激する完全なるあの残り香。いや本体といっても差し支えない匂いが沈みきる寸前の自我を浮上させたのだ。

戻った意識はしかして、肉体との僅かな齟齬に上手く動かせず不意に触れた胃壁が粘度の高い灼熱の固形物か液体の様に溶けだし自分の状況を理解した。居続けていれば命失墜とはいかないが何がしかの影響は出るだろう。

考えても始まらず、胃壁の向こう側、他の臓物の先にあるであろう外へと足を向け、ようとして何かに躓いてしまった。

転けることはなかったが、原因を見ると何もなく、不可解に考えながらも一応警戒していく。

のに何度も躓いては原因と思われる場所を見ても何もないのだ。はは。

混乱しているのだと普通に思うのだが、

「はっ。」

一笑に伏して以降何度転んでもその勢いに任せて先を進む。

もうね。それは蔑みとか色々なものが簡潔に含まれていた。

数回数えていたが数える事にも呆れ、最後に大きな躓きに対して感情が負に堕ちる。

真に満ちたさながら異常なる根幹とでも言うべき想いが蒸留される。

残されたのは怒。

カスといえどもそれは紛れなく怒。濁り偽りない純粋な憤怒が鎮座していた。

結果とし、内部全てに範囲を拡大させ表面を残して巨駆なる器を完全消去したのだ。

結果的に器たる者の治癒力を上回ったのだ。

視界全てを覆う更なる鼻腔を突き刺す異臭。噎せながらもどうにか外へと出ることが出来たと同時、薄い覆いと同時に崩れ四散していった。

瞬で理解した。背後にて崩れさった残り香による放たれし異臭に覆われてなおも、そう尚も鼻腔の奥を刺激する懐かしきかな感覚に歓喜した。感動した。無意識に頬を伝う水を流していた。

何かが反響していた知らずか知ってかその元が自身が放つ笑いだと理解した。


双方の視界を遮っていた煙は燻りながらも次第に晴れていき噎せてなおも双方の視界に相手の姿がとらえられた。


そして。

あぁ。

遂に。

対に出会った。

終に会ってしまったよ。

合ってしまったのだ。

そう一人と一人は邂逅の時を迎えてしまった。

これより咲きにいや咲き誇るなどない先に二つと一つの何かを。いや存在の確実性と何かリカイデキナイ不条理だと喚くようにして嘆くように迸る感情が相対した。

世界は動き出したのだ。


「いや、動いてないから。勝手に決めるなよ。」

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