二章~終わりへの足音~
さて交渉はどうなったとか無粋か。
主題の通り。
捻れて。
曲がって。
捻って。
狂って。
ふむ、後は潰れに粉砕に圧縮に凍結に停止に破壊に掘削に漏洩に巻きに炎上等々。
実は無かったが。
結局は。
足掻くもせず。
いや一人は足掻こうとしたのか。
が最後は。
そう決裂した。
現在は双方が落とし処を探っているが。ん、探ってはないのか。まあどの路を選択したところで終局は争いでしか解決できないだろう。
さて。
これにて二章は終わりを迎え事象を完結させるために次々章へと続く。
とその前に一つの。
いやもう一つの事象を見せて終わらそうか。
さて何から何まで話したら良いのか。
とにかくも。
次章への布石だとは考えないように。
あくまで次々章への布石だと思ってほしい。
では。
始めよう。
完結に向かうための簡潔な話を。
全てを見通すようにその相貌は俯瞰する。
あの時より分かたれた半身を探すことを主目的として行動の許可を得ていたが要として知れず。確実な情報と断定し現場へと向かっても外れか輸送された後。
さらなる調査と時間費用が重ばる。
生の中でこれ程の期間長く別たれた事はなく。あっても容易に互いの所在を把握できていた。
しかしこの状況にして状態は異常であろう。
まるで世界から隔離されたように互いの所在が不明である。
そして幾つもの情報を元に向かうもいつも空振りか結局は偽り。先のような場合もある。そもその原因である情報を提供したのは敵対勢力の一党であった。息の掛かった処からの情報であるなら妨害撹乱偽証は確実である。
徒労に終わること数回で発覚し即座に処理し道は閉ざされた。
悲嘆に暮れるように眼下を見下ろす場所にて思考を停止させていた。
「はあ。疲れた。眠い。あぁ腹。減ったな。」
やる気を失くし1日をある場所で過ごすことが最早日課となっていた。やる事がないのだ。
空を仰ぎ見ながら幾つもの溜め息を重ねていく。その都度内包する感情は蓄積されムダと気づいていても吐き出さずにはいられない溜め息。
足は霞むようで危なげに浮遊している上に両目に生気は感じられない。
ああ、なんたることか。よもや半身たる存在が手の届くまでに至らず無駄に時間を浪費するしかないこの現状は悲観に悲嘆に悲壮に悲運を呪わずにはいられない。
「あぁ。どうして繋がりが感じられない。どう考えても原因はあの。そうだあの理解できない何かだ。あの距離で通常、ううん。異常であろうと知覚できる神経なんてあり得ない。じゃあなんなんだあの力は。クソッ。頭が働かない。どうしてだ。運命があの地点で流転してるのか。それとも確定要素とでも云うのか。」
歯を鳴らすより先に溜め息を吐き出す。
「もうやだ、はは。なんでこうなるのかなあの時もそうだったなぁ。」
「その様な愚痴は何時でも吐き捨てられますので先ずは此方の書類に目を通して印をしてくれますか。」
無言。
「それと追加の資料が明日にでも届く予定ですので絶対に目を通してください。完全時間指定になってますのでお忘れないように。後、向かってきていた団体には幾つかの手法を用いまして丁重にお帰り頂きました。では頼みましたよ本当に。」
離れていく。
「ぐ、ぐぬぬ。どう、して邪魔するかな。」
振り向いて背中を見る。その綺麗な普通であれば見惚れる姿勢を見て呆れ果てる。
「うん。この存在であるぼくへ簡単に近寄るなんて普通正気じゃないよね。さてさて誰の差し金かな。」
と他人事のように語っているが。
「あれは誰だ。むむむ。」
その記憶にない存在に軽く驚くも。
思考を耽溺し探ると。
「あ。そうか。」
この捜索開始前の顔合わせである。
その日は時間感覚の擦れを修正するために短くも重要な思考のやり直しである睡眠。
時間設定した目覚めの時間に起きるつもりが。
なんと。
それが。
予想外に。
爆音と粉塵と振動により予定より早く起こされた。
そう起こされたのだ。
「ぐえっ。な、ななな。んだぁ。こ攻撃か。」
「こんにちは。そして初めまして。さらにさようなら」
「え、くおっあぶっ。」
繰り出される数多の攻撃は常人なれば知覚どころか理解するより世界より放逐されていたろう。
がその全てを避けきった。
「お、おお。な、なんだよ一体。何かしたかな。あ、したのかな。でも最近で心当たりなんてないけど。」
「素晴らしい。全てを知覚するだけでなく掠りもしないとは聞きしに勝る速さですね。隊長。」
視界を遮る粉塵が晴れていき目の前に立は凍る視線に不適な笑み。不動にして直立揺れなく視線は射ぬくよう。
「あ、誰だお前は。」
「おや、これは頂けない。はぁまさか送付された物に目を通していないとは困った方ですね。やはり微力ながら修正せねば。うん。」
近づくとどうしてか鞭を持っていた。
が視界から瞬間に消え、気づくと頬から痛みが全身を走る。
「むむつたむつ。」
「へえ。堪えるんですね。面白い。これは遣り甲斐ありますね。」
「遣り甲斐だと。」
「ほう。痛覚持続をものともせず何か含める物言い。良いですよ発言を許可します。」
「ほう、お前はなんだ。僕の先生ですか。それとも私の親ですか。はて捻って師匠などと宣うなよ。」
「その言い方は面白い。では私が派遣された理由を理解してますね。」
「んや、知らんよ。俺は(僕は)召集申請以外での縛りは完全免除となっている。」
「おや、それは却下されたと聞き及んでますが。情報に齟齬がありますね。確認します。」
「くく。」
「なにか。」
「どうしても動きを制限したいのだな。」
「貴方を制限できる者となれば、上層部でも僅かです。その何れかが握り潰したのでしょう。調べますか。」
「いや、面倒だしもし不服を買おうものなら此方の身が危険に晒される。なら今は黙って無視に限る。」
「そうですか。では改めて。んん。貴方を調教するに辺り、幾つかを用意しました。どの調教がよろしいかな。」
「面白い」
「面白い。ですか。」
「ああ。面白い。俺を(僕を)手懐けられると思っているのだろう。ぬかはふふふ。 その思考を覆せたなら。そうだな。その時に考えよう。」
向ける笑みは後に誰かが語るのだろうか。
語り部がいるのなら世界の歴史に刻まれるだろう。
その人外めいた笑みの事を。
場所は一般的な訓練所より別に造られた建物の最上階。 頑丈にして頑強に建設された特殊な場所で床を這うものとその頭部に足を乗せているもの。
決着が着いたのは開示して直後。関知するには速すぎ終わってみればこの状況。
「さて。約束は違えないように。願いたい。」
余程の自信が在ったのだろう。だが覆されこの不様を晒している。
幸いを述べるならば、此の場に二人だけという事実。
「では云うことを聞いて貰おうか。なあ。」
「ぐっ。判った。だから。」
「あ、その言い方は、何ですか。」
「ぐ、ですから足を退けて下さい。お願いします。」
「ええ。良いですよ。そうですねなら誓いとして足に口づけを。そして永遠の従属を。」
「な、それは」
「おや、受け入れないと。はは。まだご自分の立場が理解できないでいるようだ。ならこれから少し教育してやろう。か。な。」
乗せた足を退けると頭部へと一撃を落とす。
苦痛の声など無視して浮遊した状態から追撃を浴びせる。
「は、はは。さあ自分の力が如何に無力かを実感しなさい。そして理解しなさい。これから先は自由など無いということを。」
鈍く響く。
音。声。
悦楽に咽ぶ。
声。感情。
「んむむ。なんか色々と省いたけどこんな感じだったような気が。しなくもない。でも違うような気もしなくもない。あ、そうだ。まだ名前を聞いてない。ああ。その内聞いとこう。」
伸びをしながら立ち上がり去っていった方向と少しずれた方へと歩いていく。
何が流転の前兆になるのか誰にも判らない。判らないからこそ主。客。が存在する。欠けたらそれは成立しないし詰まらない。
かといって色々と肉付けしても重く美味しくないだろう。なのである程度の加減が必要。だがそう簡単に行かないのが世の常。なら確定してしまったのだから受け入れその事柄を内包しながら進むしかない。
ではどう進むのか。それはこの世界に生きる種々の、個々の意思により決定される。その一歩が世界に何かを作用させるのか。はたまた無意味に終わるのかは判断しようもない。それが無情にして非常なる世界という楽園であり地獄でもあるのだろうから。
あああ。どうしてこうなる。どうしてこんな事に陥る。何かを切っ掛けにして落とされてしまう。渇いた声しか出せない。出したくない。もういやだ。
あの時の事から数ヶ月経った。
年の瀬が迫る気配が聞こえてきそうな日。
二人は膨大な資料を調べていた。
数日後に開催される秘密交渉への準備に関する事柄の精査である。
しかし、余りに膨大すぎ、二人だけで裁くなど無謀の極み。
だが長時間を要するその山を一日で終え提案書の草案を提出した。
一息つくためにと用意させた部屋で寛ぐ二人。
各々に用意した飲み物を前に手を触れず口をつけずに揃って天井を見ている。
「はあぁぁ。よ。良かったああぁ。間に合って。」
「もう渇いた笑いしか出ない。本当に上も更に下からも無茶振りでした。短期間での膨大な資料の整理と草案の提出。嫌がらせですね。」
「ああ。終わったし。もう文句を云う気も失せた。後はただただ。眠りたい。」
「ええ、まあ。そうですねぇ。」
「なんだ。その言い方は。これまでその言い方をして錄なことがないぞ。」
頭を下げる。
「大変っ。申し訳っないのですが。」
「なんだ改まって。云うだけはタダ云ってみな。」
「はい。先程提出した際に新たな指令が下りまして。」
「おい、まさか。」
「はい。此方になります。」
「おいおい。冗談だろ。寝不足でこれから惰眠を貪ろうとしてたのに。なんだよ休ませる気がないのか上は。」
「まさにその通りですね。アナタを働かせ動きを封じる事が目的でしょう。例の事に費やした諸々を含めた返済のため。そう判断したものと思われますが。」
「はっ。嫌味だ。んで、内容は。」
「おや、断ると。」
「一応は言ってみたかっただけ。それで確認はしとかないと後が煩いだろう。受け取ったんだろ此方に送ってくれ。」
「はい。」
床に落としていた端末を拾い表示させる。
「むむ。」
「どうしました。」
「いや、面倒な方向に向かわせようと目論んでるらしい。ほら。これが次の指令だよ。」
「ほほう。これはまた。無謀無茶な。で、承けるのですか。」
「ま、しょうがないだろ。断ったところで無意味になるかもしれない。なら承けようか。」
「期限は。」
「ん。さあ。何処にも記述無し。か。これは即答しとこうか。」
「では返答は私の」
「いや、もう出しといた。」
「速いですね。」
時間を掛けたところで無意味。そう判断したのだろう。
「それでどうしますか。」
「どうしますか。とか大雑把すぎないか。
「いえ、直ぐに出立なさるなら準備をと。時間を空けるのならまあご自由に。」
「そうだな手懸かりも途切れたし、別方向から探しても良いかな。なんでお願いできるか。」
「ええ、では準備します。」
「ん。もしかしなくても、着いてくる気か。」
「ええ。そうですが。何かご不満でも。」
「ああ。そうか。そうだよな。」
「なんですか。その歯切れの悪い言い方は。」
「なあ、もう随分と長い付き合いになるように感じてるが実際は、短い付き合いだよな。」
「ええ。そうですね。あの時からそれ程の時間は要してないだろうと思いますが。なにか。」
「ああ。この短期間でお前の功績が総ての無駄を排除してくれた。そのせいで持ってきた総てが九割虚偽だと判ったけど。」
「せい。ですか。まあ置いときましょう。それでその一割が真実だと。」
「その真実も古い情報だろ結局は。最後は無駄足に終る。何時ものように。」
「それなら次の一手のために行動を起こすものです。なのにこの指令をお受けするとはどうしてですか。」
「さあ、暇潰しになるかもしれない。し、気晴らしにもなるだろうかな。」
「気晴らして、旅行みたいな言い方を。」
「そんな事はないぞ。俺の勘が、な。」
「そうですか。では必要な物を準備します。」
「ああ。そうしてくれ。そんじゃ、此処寛いでるから何かあったら連絡を。」
「畏まりました。では。」
退出すると思考を停止するように眼が虚ろになる。
なあ。君は何処に居るんだ。姿が見えなくても、どんなに距離が離れていようと感じられた。君の存在が見えていたのに。どうして何も。
それでも諦めない。だって自分が生きていることが君が生きている何よりの証明。だから会えるまで絶対に諦めない。
賭けは絶対に詰むまで諦めないから。
君もそうなんだろ。
気持ちは絶対に折れない。
くくく。笑うけど心底笑ってるのでなく。ああ甘美だなと思うことに貴賤はない。それであっても嗤いたいものだろ。ああ。求める一人。しかしもう1つはどうなんだろうな。
何せあの様な状態でその身に刻まれるは理解しようもない恐怖の思考を呼び覚ます感情。
それ故に向けられる感情が慈しみ求められるものであろうとも一切を遮断する。それがもう1つに残された感情。
全てを否定し、拒み、絶っする。
さあ。終幕まで後少し、いやまだまだ続くのだろう。
ふふふ。




